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ジョン・ベラミ・フォスター『マンスリー・レビュー』編集者/翻訳:脇浜義明 |
帝国主義は国家よりは支配階級の必要に役立つシステムである。それは民主主義と何の関係もない。帝国主義が寄生的現象としばしば言われてきたのは、おそらくそのためであろう
― ジョン・ホブソンのような鋭敏な批評家も、1902年の彼の古典的著作『帝国主義論考』(“Imperialism: A Study”)でそういう特徴づけをしている。このことから、帝国主義的膨張は、国の対外政策をハイジャックした有力者集団が狭い自己利益を追及するために起こす行動、というふうな素朴で幼稚な考え方が生まれやすい。 ◆戦争を個人の政策に還元する誤り 帝国主義的膨張に狂奔する米国は、政治の舵取りをする人物たちの気まぐれでそうなったのだという説明は、決してこれが初めてではない。ハリー・マグドフは1969年に書いた本(『帝国主義の時代:米対外政策の経済学』)の冒頭でこの問題を論じている。同書は米国における帝国主義の体系的研究を再導入した書ということができよう。彼は、「(ベトナム)戦争は包括的で一貫した米の対外政策計画の一部なのか、それとも権力の座にいるあるグループが引き起こした逸脱行為なのか」という問いをたてた。もちろん答えは、たしかに戦争を煽る人物が権力の座にいたけれど、戦争は米対外政策の基底に流れる傾向を反映したものであり、その傾向のルーツは資本主義にある、という内容である。同書は1960年代の米帝国主義を説明した最も重要な書となった。その中でマグドフは、米対外政策を支配する基底的な経済的、政治的、軍事的な力を明らかにした。 ◆古典的帝国主義段階の対外拡張政策 19世紀末・20世紀初期の帝国主義は、(1)大英帝国の覇権の崩壊、(2)独占資本の成長、すなわち、生産の集中と中央集権から生じる大企業中心資本主義の成長、という二大特性によって特徴付けることができる。これはレーニンが帝国主義の段階とした特徴である(彼は、帝国主義の段階を「可能な限り簡単に定義すれば、独占段階」と呼べる、と述べている)。これ以外にも考慮しなければならない要素がいくつかある。言うまでもないが、資本主義は限界を知らない蓄積欲によって動かされる独特なシステムである。それは、一方では、現在グローバリゼーションという用語で表されているプロセスを特徴とする世界経済の膨張であり、他方では、数々の競い合う国民国家という政治単位に分かれた経済体をなし、さらに、すべての局面で中心部と周辺部に分極化する傾向をもつ。 資本主義の黎明期16・17世紀から、そして独占段階ではなおさらのこと、中心部国民国家内の資本は、周辺部の原材料と労働力へのアクセスと支配を求めて動いてきた。独占段階では、国民国家とその企業は、世界経済のできるだけ多くの部分を自国家資本の投資先として確保しようと懸命だった。競争相手国の市場もその対象となったが、その面での食い合いよりは、主要には、富の蓄積の場をめぐる競争は、周辺部への支配力拡張競争として出現した。最も有名な例は19世紀末のアフリカ分捕り合戦で、当時の西ヨーロッパ諸国のほとんどがそれに参加した。 |