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市民環境研究所から
「ホアンインゼンインアホ」

 舞鶴の友人から電話があり、表玄関と勝手ロと通用口の3ケ所の入り口がある家だが、2ケ所は大雪で開かなくなり、辛うじて1ケ所だけを出入りできるようにしているという。1947年以来の記録的な大雪だという。日本海側から東北地方は、豪雪・豪雪の毎日である。東北大震災で家を失い仮設住宅に辛うじて難を逃れて1年目に、今度は大雪の被害を受けている万も多いようだ。
 国の施策の乏しさが、豪雪よりも重く、冷たく被災者にのしかかっている。そんな寒さの中で、ぬくぬくと暖房が効いた東京の会場で原発再稼働に向けたストレステストに関する専門家の会議が開催され、傍聴者を会議場から締め出して無事終了したようである。
 傍聴者の締め出しに反対した委員の中に、40年近くの昔、一緒に公害現場を歩いた仲間の姿を見つけた。風貌はすっかり変わったが、市民の目線でしっかりと主張している様子に感激した。彼らのまっとうな主張は大勢の「原子力村」の輩に追いやられて、この専門家会議は保安院のシナリオどおりの結論になった。
 すなわち、「経済産業省原子力安全・保安院が大飯原子力発電所3、4号機のストレステスト(耐性調査)の結果を「妥当」とする審査書の最終案を専門家の意見聴取会に提示」したという。一体ストレステストとは何なのか、国民に知らせることなく、「耐性評価」と意訳される外来用語の中味を解説することもなく、結論ありきの進め方である。
 報道で知る限り、ストレステストとは想定を超える災害を仮定し、原発の機器や設備にどこまで余裕があって、どこで壊れるかをコンピューターではじきだす作業を言うようだ。それならば、今回のストレステストを実施する際、福島第一原発が大津波に直撃されて崩壊した時に保安院も使った「想定外」という条件は、加味したのだろうか。それとも、「想定外」ほそのままに、想定できる範囲の条件を使ってストレステストをやっただけ
なのだううか。
 コンピューターが計算する条件を入力するのは、コンピューターではなく人間である。その人間が「原子力村」に属する者かどうかこよって、いくらでも結論は操作できる。この手の確率論的解析に手慣れた電力会社や原子力関係者を排除しない限り、結論は初め分ら再稼働に決まっている。実際、最終的には高度な政治判断で決まると宣っているのだから、案の定の結論である。
 保安院が福島第一原発の崩壊について、自分たちの責任も入れて社会に説明する場が、この一年の間にあったのだううか。自分たちの所属する組織は原子力安全・保安院だということを自覚しているのだううか。こういう会議は、ぬくぬくと東京でやらずに、放射能汚染他の凍えるような寒さの中で、放射能に故郷を追い出された人たちを傍聴人として開くべきだろう。テストをする前にテスト会場を選定し直すべきである。
 こんなふうに怒っていたある日、知らない方から原発崩壊への怒りの手紙をもらった。その中に、「保安院全員阿呆」というフレーズがあった。ホアンインゼツインアホ。回文だ。こんな輩の意のままにさせないために、「さようなら原発1000万人署名」を達成せねば。
(石田紀郎)


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