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[市民環境研究所から]
御用学者への批判を強めよう!

 現実の厳しさと暗澹定る気持ちに、月も日も時間も、どの単位も短くもあり、長くもあり、動いているようでもあるが、止まったようでもある2011年が終わり、2012年はどうなるのかと思う。
 この3月で大学勤務を終えるつもりなので、4月以降はやっと市民環境研究所の専任になれそうである。収入はなくなるが、持て余すほどの時間ができるのではと楽しみにして、2003年に設立したこのNPO活動を充実させたい。
 昨年の秋に、「さようなら原発1000万人署名・京都の会」を結成し、著名活動の連格先をここで引き受けて以来、いろんな人や運動との出会いが増えてきた。高齢者といえども、さらに世界を広げたいと思う。なんとしても、脱原発をこの国の政策にするまでは、多くの方々と同じように、闘いを放棄するわけには行かない。
 「原子力村」といわれるこの巨大な利権社会との闘いは、多面的にならざるを得ない。隣人から市民社会全般、実業界や学界などなど、監視・批判・追及すべき対象はいくらでもある。同じく、仲間になり、一緒に闘ってくれる人もいるだろう。年の初めとは、そんな気分にしてくれる瞬間である。
 そんな気分で今年最初の朝刊を手に取ってみると、一面のトップ記事の見出しは「原子力安全委員会側に8500万円」とある。原子力安全委員会の安全委員と非常勤の審査委員だった89人のうち、3割近くの24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界回体から計約8500万円の寄付を受けていたとのことだ。
 原子力安全委員会は、もちろん内閣府に属する政府組織であり、原子炉や原発を持つ電力会社などを審査対象にして、安全性などを調へて指導・勧告する権限を持った組織である。
 そのトップは班目委員長(市民は誰もマダラメとは読まずデタラメで通っている輩)で、彼も400万円をいただいていたそうな。「便宜は一切図っていない」とコメントを発表したが、東電福島原発崩壊後の彼の行動と発言のデタラメさは十分に東電に便宜を送っていたことは周知である。
 寄付金を受け取っていた審査委員のうち、朝日新聞が実名を報じた中に、京大原子炉実験所の前所長・山名元と現所長・森山裕丈がいる。両名とも日立GEから180万円と120万円を受け取っていたとのことだ。そして、両名ともが「審査には影響ないが、中立性のあり方は検討されるべきとか、世間に向けて公開すべきだ」と他人事のようなコメントを発表しているようである。
 まったく不埒な連中である。「原子力村」は、抱える利権は大きいが、村そのものほそれほど大きくない。となれば、ほとんど全員がこの手の懐柔策に乗せられていると考えてもおかしくない。今回の報道は、あくまで表面化したものだけの話であり、実態はこんなものではなかろう。
 件の記事の最後には、「原子力コミュニティーは小さい。寄付があれば委員になれないなら、なり手がいなくなる」と委員が話し、「我々が先生を食わせてやっている感覚」と電力会社の元幹部が言う。語るに落ちたとは、まさにこのことだ。彼らがフクシマの悲劇を造り出したのである。
 大学の研究者が中立であるなどと、いまどき誰も信じていないだうう。しかし、そんな戯言を利用して私腹を肥やす輩がいまだにいる。市民環境研究所としては会後も、こうした連中を批判する活動を重要なテーマにしていかざるを得ない。改めてそう思った元旦であった。(石田紀郎)


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