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事務局から:ホモ・サピ工ンスから10万年

ようやく朝夕は過ごし易くなってきたとはいえ、まだまだウンザリする残暑が続いています。しかし、そのほかにもウンザリのタネは尽きません。中でも酷いのが、日本経団連なり経済同友会なりといった、いわゆる財界首脳の戯れ言です。
 未だに収束の見通しも立たない福島原発事故の惨状を前に、「原発がなければ経済成長は不可能」だの「電力不足で企業の海外移転が進む」だの、恥も外聞もなく恫喝を繰り返しています。驚くべき頽廃です。
 そもそも、原発が必然的に生み出す使用済み核燃料廃棄物は、最終的に放射能による人体への害がなくなるまで、10万年もの時間が必要だとされています。10万年と言えば、ちょうど我々の祖先であるホモ・サピエンス(新人)がアフリカに現れたころ。それから今日まで何が起きたか、当時の人々には「想定」しようにもできない、途方もない時間です。いや、これは対象が1万年でも1000年でも、また科学技術が発達した現在の人間にとっても、基本的には変わりません。近代科学が形成されてから、現在までは高々数百年に過ぎません。いわば人類史にとって赤子に過ぎない近代科学が扱える時間幅でないのです(ただし、こんな単純な道理は赤子でも分かるはずです)。
 財界首脳と言えば、一般的には功成り名を遂げ、本来なら児孫のことまで考えるべき年齢と言えるでしょう。にもかかわらず、この有り様です。
 人間は時に自らの有限性を忘れ、現在に執着しがちですが、過去からの歴史を引き継ぎ、時代に橋渡しするのが生き物として本来の生き方です。
 ここまで書いて、かつてどこかで目にした言葉を、ふと想い出しました。
 「お前はただの現在にすぎない」。(山口)



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