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市民環境研究所から:ウソが大手を振るった夏

虚偽の情報がこれほど大手を振って日本中を、連日まかり通ったことは歴史上なかっただろう。そして、さすがに酷暑を過ぎ、ギラつく太陽の光も斜めになり出した今日、「このウソをつく環境条件が消えつつありますので、ウソは今週一杯にで終わります」と言い出した。
 「電力使用量を15%削減してください、でも、エアコン使用を止めて熱中症にならないでください」と御為ごかしを言い続けた電力業界ほど、ウソで固めた業界も少ないだろう。独占業界ほなんでもできると思っているのである。初手から、原発を全部止めても何の問題もないことは分かった上で、天気予報ではなく、電力予報などを創案して、テレビ・ラジオで流し続けていた。ウソばかりではあまりにもバツが悪いと思ったのだろうか、どこかの火力発電所の設備が故障したので、本当に電力が足らなくなるかもしれないなどとウソで騒ぐ。まったく幼稚な手法である。
 14年前に新築したわが家には当初からエアコンが付けられていたが、冷房嫌いの家族だから、この13年間でほんの10日ほど稼働させただけだった。しかし、会夏だけは、猛暑対策として午後の5時間ほど連日使用した。その理由は、8月30日に14才の誕生日を迎える老犬のためである。関電の言うことを守っていた方々には少々申しわけないが、端からウソと思っていたので悪いなどとは思っていない。
 その老犬の誕生日に菅直人が退陣し、野田佳彦が総理になった。市民運動出身の菅直人は最後まで市民に向かって政策を訴えることなく消え、彼のコトバはなにも記憶に残らない。わが家の老犬は狭い庭をゆっくりと歩き、庭の周囲に設えた板の塀の隙間から外界を覗くのが大好きである。この塀の外側は格好のポスター掲示版で、野田とともに総裁戦に出馬した前原誠司が代表の民主党京都二区のポスターが貼られている。時として彼の顔写真入りもあれば、府会議員だけの時もある。
 民主党総裁戦が始まった日に、前原事務所にファックスを送り、この掲示板の使用を拒否する旨を告げた。理由は、彼の原発政策に反対だからである。日本の電力から原発を順次減じていくと「減原発」を表明しているようだが、決して卒原発でもなく、まして脱原発でもない。原発を温存したいが、継続するなどと言えない雰囲気だから、「順次減じて」と言っているだけである。この点に関しては野田も大差なく、民主党総裁選ではまったく論議されなかった。
 それ以上に、前原の政策で許し難いのは、「原発の輸出」で日本経済を潤すという主張である。フクシマを経験し、なんの科もない人々から、家屋敷・田畑山林・墓までを一夜にして奪った現実の解決策も提示しない段階で、「原発の安全性を高めて」海外に売るという。安全性を高める技術とは、いったいどんなことを想定しているのだろうか。そんなものがないことや、原発は核兵器と同じであることを、フクシマを見つめて来た市民はとっくに知っている。こんなウソつき政治家に貸す塀はない。(石田紀郎)


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