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連載:ネパール・タライ平原の村から(14)
野菜や果樹の載増に見る多様性

ネパールの農村で暮らす、元よつぱ農産職員の藤井君の定期報告。今回は、その14回目である。

作物がひしめき合う我が家の家庭菜園

我が家の庭先にある約2アールの家庭菜園には現在、インゲン豆、サツマイモ、かぼちゃが植えられています。さらに、一度植えると数年そのままのなすび、定期市でもらって来る野菜残さの中にあった過熟の種を植えたゴーヤ。昨年、日本から種を持って来て種採りをしたモロへイヤなどなど。最近までは玉ねぎもありました。
 畝のない畑に、作物同士が互いにひしめき合うかのように植えられています。植物同士の相性が良いから近くに植えているとか、何らかの論理の基づく混植やデザインされた畑というより、昔から野菜は多品目が混ざりあうかのように植えるのが当然、という感じです。今回は、野菜・果樹栽培に見る多様性について述べたいと思います。

その辺にあるパパイアの木

家庭菜園の周辺には、バナナ、パパイヤ、レモンやライムなどの柑橘類、グァバの低木、そして髪の染色や薬草として利用する「ヘナ」が並んでいます。さらにその周囲を、マンゴー、ジャックフルーツ、そして家畜が好む飼い葉となる木々が囲みます。季節に応じて実のなる果樹がいくつも植えられており、果樹の種類はともかく、どこか日本の農家と似ている風景を見ることができます。これからの季節、様々な熱帯果樹の実がなりますが、自分の家にない果樹もたくさんあり、それらはご近所からおすそわけしていただいたり、交換したりもします。これも、どこか日本の農村と似た光景かもしれません。  畑の奥にある林には、家畜の飼い葉となる樹木が育ち、その中にヤマイモやキャッサバも植えられています。また薪や製材として利用する樹木、カゴを編んだり支柱や農業資材として利用する竹が育っています。日本の雑木林に相当する場所です。  果樹などの苗の一部は、誰かが平地へ移住する前に住んでいた山岳部の村や隣国のインドから持ち帰り、定植して育ったものです。また、この地域にない種や苗を、ご近所同士で交換したりすることも多々あります。ただし、気候に馴染まないのか、定植はしても実がつかないという失敗もよくあるようです。  我が家の場合も、山間部のある村でいただいたアボガドの木があるのですが、毎年花が咲くだけです。調べてみると、雄花と雌花が咲く時期が微妙にずれているので、受粉するためには2品種が必要とのことです。こんな失敗もありますが、自分たちであれこれ実験しながら、限られた農地の中で多様性を作り出しています。

高地民族グルン族の菜園畑

長い乾季が終わり、雨季へと移行するこれからの季節、野菜や果樹といった栽培植物以外にも、もう一つ毎日嬉しい“収穫”があります。それは収穫の近いトウモロコシ畑の“雑草”です。トウモロコシが草に負けない大きさに生長したため、これからは、雑草も生長具合を確認しながら、鎌で何度も刈取り、家畜の牧草として利用できます。この季節の雑草は、もはや雑草ではなく、立派な牧草飼料です。(藤井牧人)


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