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市民環境研究所から

熱帯夜の寝苦しさを倍加させるサミット

梅雨らしい梅雨が終わりにさしかかったと思った途端に、猛暑である。昨夜は熱帯夜ときたものだから、まだまだ暑さに慣れていない身にはこたえた7月7日の朝である。今日から始まる洞爺湖サミットのニュースばかりであるが、しばらくは福田やブッシュの顔を日に何度も見させられる。その上に、「日本一の無責任男」である安倍晋三などが、環境問題は自分の方が福田よりもよく知っているとばかりに登場してくる。熱帯夜をよりおぞましくしてくれる。

昨夜は京都市内で、一旦はリタイアしたが、まだまだ現役の人たちの集まりでの講演に出かけた。環境問題では上流で発生した原因がその影響をもっとも甚大に受けるのは下流である。下流で起こっている事象を正確に把握し、分析して、上流の発生源を修復する営為を、まだまだ現役である方々が続けることが大事であると、琵琶湖の汚染や農薬問題を事例にして話させてもらった。京都市内の各地域で社会活動に取り組んでいる人たちの集まりであるから、熱心に聞いてもらえ、少々気分よく帰宅した。ところが、帰ってテレビを見ると、安倍や福田が大写しで出てきたため、大いに気分を害してくれる。

地球環境問題、とくに温暖化の話になると、上流で発生させた原因で下流が被害を被るという図式では説明し難く、被害を受けるのは地球上の生物全体であるから、問題解決もみんなでやらないとという論調が横行している。先進国も、発展途上国も、金持ちも、貧乏人も、この問題では皆んな平等に被害者ですよ、となる。東京電力の関係者と思しき出演者は、「エネルギーを消費しているのは企業と消費者ですから」と。この理不尽さ。そして結論は、温暖化を防止しながらも現在の生活レベルを下げたくないなら、温暖化ガスを出さない原発設置に協力しなさい、と迫ってくる。ガソリン代が180円を突破し、諸物価が高騰の日常生活の中で、庶民は原発容認から積極的拡大へと惑わされ、協力させられて行く。

今日から始まった洞爺湖サミットでは、経済不況に悩むアメリカは、地球温暖化とCO2削減を逆手に取って原発拡張政策実現の場と位置づけているようである。自国ではスリーマイル島事故以来、原発の新設が凍結されているから、発展途上国に原発技術を売りつけようとしているのであろう。任期切れ間近のブッシュの最後の利権あさりが、温暖化防止という格好の口実を利用した原発販売推進なのだろう。

そう言えば、小泉がカザフスタンを訪問したのは任期切れの1ヵ月前であった。日本の現職総理の初めてのカザフ訪問ではあったが、格調高い外交ではなく、単なるウランの買い付けでしかなかった。日米の親密外交を演出してきたブッシュと小泉の最後の仕事が、揃って原発利権であるとは情けないの一語に尽きる。(石田紀郎)


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