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再び流動化しつつある世界と研究所の任務

地域・アソシエーション研究所 第5回総会を開催

当研究所は11月10日(金)、よつ葉ビル5F会議室で、第5回総会を開催した。今回もまた、平日夜にもかかわらず50名近くのご参加をいただき、熱のこもった検討の場を持つことができた。

振り返れば、当研究所の活動も5年目を迎える。この4年と言えば、まさに2001年の「9.11」を契機とした「力による平和」と「新自由主義的グローバル化」による利潤至上主義の進行、その結果として、国家間のみならず国家内においても「持てる者」と「持たざる者」との分岐が鮮明になった時期と特徴づけられるだろう。

しかし現在、イラクやアフガン情勢を受けたブッシュ政権の凋落、WTO新ラウンド交渉の頓挫、南米での相次ぐ左派政権の誕生などが象徴するように、世界は確実に流動化しつつある。その根底には、一極的な世界覇権や市場経済一辺倒による自然や人間、生活や社会の破壊に抗して、「もう一つの世界(オルタナティブ)」を目指す人々の意思、いわば、「持てる者」のグローバル化を阻むべき、「持たざる者」の対抗的グローバル化へ向けた胎動を見ることができる。

当研究所もまた、こうした状況を自覚的に受け止めつつ、われわれなりの「もう一つの世界」の実現に向け、様々な議論や実践に積極的に参加していきたいと考える

◆  ◆

今総会では、こうした情勢認識を踏まえ、また5年目を迎えるにあたって設立当初の問題意識に立ち返る意味も含め、当研究所の基本任務を次のように整理した。

@当研究所の母胎となった関係諸団体の諸実践を与件として、それらの歴史的意義を明らかにし、普遍的な内容を確認する。

A世界各地、日本各地における現状変革・オルタナティブを目指す諸動向に注目し、その内容や意義を伝えると同時に、共同実践の可能性について検討する。

B以上の作業を通じて、関連諸団体の今後の諸実践に加えるべき諸観点とともに、現状変革・オルタナティブを目指すための諸観点を検討し、普遍的な内容として提起する。

◆  ◆

@について言えば、前期の総会に基づき、今期は研究会活動を強化すべく、4つの研究会に取り組んだ。その内、研究会「『よつばらしさ』の根源を探る」は、具体的な素材に基づく検討作業、問題意識の世代間継承、比較的広い範囲での論議の組織―などの点で、一つのモデル事例とすることができた。こうした経験をどう継続させ、内容的な深化につなげていけるかが、課題である。

Aについては、従来の活動が基本的に「内向き」だったことの反省を踏まえ、経済グローバリズムへの対抗運動に焦点を据え、対外的な交流・共同行動を追求をした。その結果、実体的な連携や対外的認知など、一定の成果を獲得できたが、反面、地域や自治体、経済活動などに関するアソシエーション実践をめぐる検討が手薄になったことは否めない。社会的企業や協同組合に関する先端的な論議・実践について、積極的な視察・交流を行い、それをまとめて伝える作業が必要である。

Bについては、この4年間で、研究所の基本的な作業については確立されたと考えるが、それに伴い、関連諸団体が持つ力をいかに有機的に結合し、「アソシエィテッドな知性」の創出を果たすかという巨大な課題が浮上している。こうした「諸アソシエーション間のアソシエート」は、当研究所の存在意義でもあり、究極目標でもある。

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今総会では、これまで事業報告的だった議案書について、研究会活動の論点などを付加し、問題提起も含め、内容的に突っ込んだ形に再編して提起した。通常は直接の接点を持つことが困難な会員の皆さんに、当研究所の視点を直にお伝えするとともに、日常的な論議の一端なりとも紹介したいと考えたためである。ただし、その反面では、やや問題意識先行型のきらいがあり、内容の膨張から議論の時間を充分確保できなかったとの憾みも残った。次回の反省材料に生かしていきたい。

いずれにしても、限られた条件の中ではあれ、当研究所の活動が一定の進展を見せ、対象とすべき課題がより具体的に認識されつつある点は、自負できるところである。と同時に、それに伴って、克服すべき問題の広さ深さが明らかとなり、乗り越えるべき難問の大きさが、ますます切実なものとして迫っていることもたしかだ。

世界が流動化の様相を見せているとはいえ、それが必ずしも明るい将来展望につながるとは言えない。しかし、そんなときだからこそ、じっくりと腰を据え、新たな前途を模索するための共同作業が必要である。

来期も引き続き、会員、関係諸団体、協力者の皆さんをはじめ、課題を共有する内外の人々とともに、着実に取り組みを続けていく所存である。(山口 協:研究所事務局)


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