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市民環境研究所から:地球温暖化、後代にツケを残さないために

エネルギーを過剰に使い続ける現代

昨年の秋はことのほか長く、いつまで待っても冬がやってこなかった。と言うよりも、年が明けても冬が来ず、梅の開花の時期に至ってしまった。2月中旬に北海道に所用で出かけたが、雪原は見られたが、その深さは例年のものではない。地球規模の気象変動の範囲内に発生する暖冬なのか、それともいわゆる地球温暖化の所業なのだろうか。

京都在住50年近くになるが、雪化粧した東山や如意ヶ岳の大文字が見られなかったのは記憶にない。当研究所で開催している「環境塾」の第10回シリーズのテーマとして「地球温暖化とエネルギー問題」を考え、準備しつつあったが、諸般の理由によりまだ実現していない。なぜ、このテーマなのかと言えば、関西にいれば関西電力のテレビコマーシャルで、「地球温暖化を防止する切り札は原子力発電ですよ」と日々聞かされ、“ほんとうにそうなんでしょうか”と思っているからである。

そんな暖冬まっただ中の2月2日、国連「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第1作業部会が、地球温暖化の分析・予測をまとめた第4次評価報告書「気候変動2007―自然科学の論拠」を発表した。地球上に頻発するようになった洪水や雪氷融解などの現象は、人間活動による二酸化炭素などの温室効果を引き起こすガス増加に起因する温暖化によるもの、と位置づけた報告である。マスコミ各紙の報道の見出しも、「温暖化『人間が原因』、国連4次報告を正式発表」、「温暖化で日本の砂浜9割が消失、農漁業も影響…環境省」、「IPCC報告書 地球、危険水域に」となっていた。自然科学者の討議の中から作成されたものであり、一応は政治的でないところから、多くの人々に衝撃を与えたようだ。

地球温暖化と地球の長期的気候変動の中で生じる現象を峻別する科学的手法が確立されているかどうかについては、筆者も少々の疑問を持っているが、予防原則から言えば、人為が地域環境のみならず地球環境までも異常にしていることは事実であり、温暖化も人為のなせる結果と考えて行動しなければならない。京都議定書を各国が批准し、温室効果を引き起こすガスの排出削減を義務化し、実践しつつある中で、アメリカが議定書も批准せず、反対姿勢を続けていることは非難されるべきであろう。

それとともに、二酸化炭素ガスを排出しない原子力発電こそが地球を救う、と喧伝する電力会社をはじめ、原発推進勢力も非難されるべきであろう。エネルギーを過剰なまでに使い続けている現代技術文明からの脱却こそが問題であること、化石燃料エネルギー使用が悪いから原発がよいと考えてはならないこと、今は小規模だが各種の自然エネルギー源の開発を怠ってはならないことなどを、大衆的に議論すべきである。原発は二酸化炭素ガスを放出しないが、そこから排出される大量の放射性物質の処理のために天文学的年数と膨大なエネルギーが必要であることは、言うまでもない。

地球温暖化をめぐって我々が問題にすべき視点は、後代にツケを残さないということである。温暖化が少し軽減できたとしても、別の負担を後代に残したなら、「温暖化」という現象を回避解決したことにはならない。4月には、このテーマで環境塾を開催しなければ、と思った暖冬である。(石田紀郎)


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