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富も情報も一極集中の日本社会

地方よりも東京?

6月からの連日の曇天と低温は東北地方の稲の出来具合を心配させるほどだったが、やっと真夏がやってきた。曇天低温の影響は我が家の小さな畑でも如実に表れ、ナスビとシシトウの花が少なく、実の成長も鈍足である。店頭の果菜類の価格は高く、長年にわたってナスビ栽培を続けている百姓さんが「こんなに高値で出荷したことは記憶にない」というほどである。

そこにやって来たのが台風4号である。7月では異例なほどに発達し、九州大隅半島上陸時でも940ヘクトパスカルと勢力は絶大。それが四国南岸を通過して東進したのは、夜の8時過ぎである。四国の南岸からまっすぐ東に進むのか、それとも第二室戸台風のように北上するのか、京都に住む者としては大いに気になる時間帯である。まして四国の住民にとっては、気になってしょうがなかっただろう。

ところが、そんな時間帯にもかかわらず、天下のNHKテレビは延々と巨人/広島戦を放送してくれる親切さである。台風は時速30キロほどで東進していたはずで、我が近畿地方に接近するのは夜半。紀伊半島に上陸するのかどうか気になるが、明日の勤めを思えば就寝時間である。その前に台風の行く先を確かめてからと思っていたら、NHKテレビは親切にも韓国ドラマを延々と放送している。もともと、生活実感のない韓国ドラマが嫌いな者にとっては、もはや怒り心頭である。

翌朝、さっそくNHKに電話を入れると、担当者の男性が、「四国の方々からもいっぱい抗議の電話がかかりました」、「近畿の方々からも」と言う。なぜあの時間帯に両番組を放送しなければならなかったのかと尋ねると、「東京から送られてくるからしょうがない」という。そんなことはないだろう、大阪でも番組編成権はあるはずだと反論すると、「なかなかそうはいかないので」と言う。

ただし、「大阪総局の最高責任者である局長に抗議文を出してください」と言って、菊池という局長の名前を教えてくれた(その後の忙しさにかまけて未だに抗議文を出せてない)。ついでに、「台風情報のテロップを画面上部に出すよりも、縦方向に流してもらった方が見やすいのだが」と切り出したところ、「ハイビジョンでは横方向の方が適っている」と言う。ハイビジョンの普及率は数パーセント以下だろう、と反論したところ、あっさりと認めた。

台風が通過したと思ったら、今度は中越沖地震である。柏崎には直接の知り合いはいないが、娘が新潟市にいるので情報収集に努める。関西テレビにチャンネルを合わせると、水着姿の女性が馬鹿騒ぎを繰り返している。早速関西テレビに抗議の電話を入れると、女性の担当者が応対し、この大事な時間にもっと地震情報を流すべきだと思うが、東京の親会社から送ってくるので、大阪ではなんともできない、との返事である。

NHKにしても、民放にしても、すべてが東京の指令管理下に置かれているのだろうが、なんとも情けない話である。京都に居ても怒りたくなるのだから、地方にいたら毎日毎日怒り続けているだろう。富も情報も一極集中の我が国である。参議院選挙の一人区で自民党が大敗していなければ、怒りが収まらない暑い夏となっただろう。(石田紀郎)


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