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中越沖地震、柏崎刈羽原発の被災に思う

連日の猛暑

記録的な高温の毎日である。1933年以来の国内最高気温が更新されたという。岐阜県の多治見や埼玉県の熊谷では、40.9度になった。この一日だけが異常なのではない。連日どこかで40度を超え、我が家のある京都市内でも38度、39度には驚きもしない。30度になれば、涼しくなったと感激さえする。その上、雨が降らない。8月初めに台風の雨があって以来、20日以上も降水がない。畑の土は乾ききり、野菜類は大ピンチである。

そんな中、盆休み明けで世の中が動き出した途端にピーク電力が心配され、ラジオもテレビも朝から節電を呼びかけている。とくに厳しいのは東京だ。通常の電力大消費に加え、8月に発生した中越沖地震で東京電力の柏崎刈羽原発が停止し、東京に送る電力を賄いきれないからである。水力発電に頼らざるを得ない、との話も聞かれる。

地震による柏崎市民の被害は甚大であり、安倍総理が「いの一番」に乗り込んだわりには、被害者への救援はそれほど迅速でもない。全壊、半壊の家を抱えた我が友人は、膨大な取り壊し経費の捻出に暗い表情の毎日である。さらに、地震による柏崎原発の被害の総体がいまだ見えないため、一種の風評被害が拡大している。盆休みを日本海の潮風で楽しもうと思っていた人たちが、旅館の予約をずいぶんキャンセルしたという。夏場の稼ぎを奪われ、不幸の追い打ちである。

何らかの国家的支援が不可欠だ。安倍内閣が発案した「ふるさと税」に賛成する義理はないが、東京にのみ富の集中が進む中で、地震を契機に柏崎が地域として沈没する危険も懸念される。

そう言えば、東京都知事の石原が大阪府知事などを従えて官邸に乗り込み、「ふるさと税」への反対行動を展開したのは、ついこの間のこと。しかし、そんな東京の経済活動を可能にしているのは、柏崎の原発である。そのために、柏崎市民は直接的な地震の被災だけでなく、東京のために稼働している柏崎原発の被災という恐怖を強いられている。

東京都が「ふるさと税」に反対するのは勝手だが、ならば、自らの繁栄のために困難を強いている柏崎市民に向け、せめてもの償いを果たすべきだろう。政治資金の不正流用で松岡農水大臣が自殺した日、石原は「彼は武士だね」などと不埒なコメントを発していたが、石原こそ柏崎に対して武士になるべきだ。ところが、そんな気配もない。

東京は今日も40度近くの暑さだろう。ピーク電力を抑えるため、猛暑の中でクーラーなしに働いている人もいるだろう。この際、原発によるエネルギー供給の是非や都市と地方の問題について、全市民的に考えて行くべきだろう。そうでなければ、柏崎の被災者と被害者に申し訳ない。(石田紀郎)


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