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コラム 南から北から
凍霜、酷暑、豪雨、そして獣害


 8月に入って、いつもノラの会の注文販売で果物を販売させてもらっている片平農園(南陽市)に電話をかけた。大人気のデラウェア(ぶどう)の作柄は? 携帯の向こうで片平文男さんが言う。

 「いやあ、まいった。クマにかっち(喰っち)よお。毎日来っから、猟友会に頼んで檻を設置してもらったけど、まだ入ってねえなあ」

 片平さんは、さくらんぼ、ぶどう、りんごなど果物作りの名人で、ノラでは産直野菜の「ノラパック」や、ノラ製品の隔月の「注文販売」でその季節の果物を販売している。

 6月のさくらんぼの佐藤錦やナポレオン、8月のデラウェア、9月~10月のぶどうの高尾、シャインマスカット、安芸クィーン等々、10~12月のりんごの王林、千秋、ふじ。多彩で旨い果物を心待ちしているファンもたくさんいる。

 だが今年、さくらんぼは4月に霜にやられてほぼ収穫ゼロ。りんごも同じく実のつきが悪い、という。

 「ぶどうは大丈夫と思っていたら、クマにやられた。今年は散々だ」

 果物栽培の盛んな南陽市では、クマ以外にも、イノシシにりんごの実が喰われる被害も多発している。

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 今年の4月の遅霜は広範囲にわたっていて、白鷹町でも柿の実がほとんど生っていない。ノラの会の12月注文販売の干し柿はリストから除かざるを得ないと思っている。

 さらに、7月以降の全国各地での豪雨被害。テレビでは九州各地の農作物の甚大な被害を伝えている。被害に遭った農業者の一人が水に浸かったハウスの脇で「被害は今年で連続4回」と話しているのを聞いて、ため息が出た。

 今年はまだ豪雨被害の少ない白鷹町だが、8月下旬の今も、時折、強い雨が集中的に数時間続くことがあって、秋冬野菜の種まきができずにいる。水に強い稲も、このあと、無事に収穫できるだろうか……。

 獣害に対して、片平さんは「南陽市の果樹園一体に、広域の電柵を設置していくしかない」と言っていた。その費用を賄えるだけの売り上げを、その後の収穫で上げていくことができるだろうか?

 小規模で多品目の製品の原材料栽培から加工までやっているノラの会としては、1品目がだめなら、別の品目でカバーするしかない。

■今年は豊作だった梅をハウスで干しているところ。4~5日間、毎朝コロコロころがして、上下交換して乾燥させます。
 今年、柿はだめだが、豊作だった梅でいつもの1.5倍の梅干を作ることができた。7月の梅作業には、正規メンバー以外の助っ人(年金者)が大いに助けてくれた。

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 凍霜、酷暑、豪雨、そして獣害。今後5年、10年と農業を続けていけるだろうか? 業は無理でも農(自給)はできるだろう。それにしても、一緒にやっていく仲間たちは欲しいと思う。

        (疋田美津子:山形県白鷹町在住)


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