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市民環境研究所から:温暖化問題をブームに終わらせないように

地球温暖化問題を自分のこととして考える

あったかい晩秋である。アラスカから帰国した新聞記者が、アラスカには氷がない、と伝えてくる。バングラデシュの研究者からは、例年にない洪水多発との報せが届く。秋に開催した京都学園大学バイオ環境学部のエコフェスタ2007に招待したツバル国の行政官の口からは、日々、海に崩落していく国土の惨状が語られた。地球温暖化の影響は待ったなしで迫っている。

たしかに、例年なら小雪が舞ってもよい年末なのに、その気配はない。アメリカの元副大統領ゴアがノーベル平和賞を受賞した。受賞の理由は、彼の「不都合な真実」が地球温暖化の危機を伝えたことだという。筆者はこの映画をまだ見ていない。しかし、彼が受賞したことや、IPCCの地球温暖化への数値警告が発表されたことから、年が明ければ、日本の各メディアは温暖化危機、地球環境危機をテーマに特集や特番を組むだろう。

長年取り組んできた「アラル海」もテレ朝の新春特番の一部として放映される予定。この数日は、担当ディレクターからの質問電話がひっきりなしにかかってくる。環境問題を終生のテーマにしている身にはありがたい現象だが、まさに「不都合な真実」を伝え切ってほしいと願う。「温暖化を防止するには、化石エネルギーではなく原子力発電で」なんて風潮を助長しないでほしい。すべての悪が地球温暖化に帰結されることのないように、運動を続けなければと思う。

筆者にとって、秋はミカンの季節である。30余年つき合ってきた「省農薬ミカン園」の生産量が平年作の5割増し、大豊作となった。収穫物の全量を委託され、販売している農薬ゼミとしては、完売できるかどうか大いに心配していた。そこで、関心を示してくれた新聞記者の取材を受け、記事にしてもらった。すると、記事掲載から10日以上も経っても、電話が鳴り止まない状況である。ミカンは4日目で売り切れ、その後はお断りの連続。マスコミの力の大きさと脅威を実感させられる。これがテレビなら、なおさらだろう。

「省農薬・減農薬」農業が社会的に認知されていると喜んでよいのかどうか、一時のブームに過ぎないのでは、と思える節も多々ある。今回注文してくれた人々が来年も注文してくれるかどうか、ここが問題だ。10年以上前、テレビでこのミカン園をとりあげてもらったが、番組を見て注文してくれた人々の再注文率は激減した。別の機会に新聞を見て注文してくれた人の再注文率は、そこまで低下しなかった。最も長続きするのは、人伝てや口コミで理解してくれた人々である。

テレビ報道の軽さは報道する側だけでなく、見る側の責任でもある。地球環境問題や地球温暖化問題を表現するにはテレビという媒体は優れているが、見る側が自分のこととして考える素地を持っていなければ軽いものになってしまうだろう。そのつけは、本人には及ばなくても、子供や孫には大きな影響を与えるだろう。そう自戒しながら、年末年始を過ごそうと思う。(石田紀郎)


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