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市民環境研究所から

気象も異常なら政治も異常


 季節の移り変わりの様相がかくも従来の様と異なってくると、いま自分が生きているのがどの季節か分からなくなり、物事の判断を間違えそうになる。自分で「暑い、寒い」と言葉に出せるようになってから80年近く生きているが、今が何月かが分からなくなりそうになる。

 それを老人ボケだと言われれば反論できないが、月日の経過が早すぎると思っている。冬が急速に終わり、春は短く、梅雨入りは例年よりも3週間も早かった。とんでもない異常気象の連続である。

 植物や動物はその異常を人間よりも先に感じている。先月の本欄で書いたように、我が家の犬の毛の生え替わりの異常さには驚かされた。続いて桜の開花の異常な早さ。京都では例年よりも2週間も早かった。何十年も毎日のように通っている蹴上の桜並木も、4月以前に花は散ってしまっていた。

 5月中頃になり、40年以上も調査に通っている大事なミカンの花がどうなったか気になり、和歌山は下津町の省農薬ミカン園に電話を入れた。ミカンの白い花風景がメールで送られてきて、低地園では例年より10日も早く花が咲いたが、標高250mにある我が省農薬園はそれほど早くはなかったとのこと。海岸沿いのミカン農家では、あと10年もすれば和歌山はミカン栽培地でなくなるのでは、と心配しているという。

 加えて、5月下旬には例年よりも3週間も早い梅雨入りとなり、この原稿を書いている今日は梅雨入り3週間目である。この先、どうなっていくのだろうか。地球温暖化が進行し続けているのは確かである。その上に、1年半前から始まった新型コロナ禍は衰えることはなく、日々の変動はあるが終焉は全く見通せない。

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 たった一人、見通せていると公言しだしたのは菅総理大臣である。先進国首脳会議に出て、東京オリンピック・パラリンピックについて「世界が新型コロナという大きな困難に直面する今だからこそ、世界が団結し、人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけることを日本から世界に発信したい」と強調し、オリンピックは予定通り開催できると言った。大きな困難をさらに拡大するオリンピックを開催することが人類の努力と英知なのか。

 菅のあらゆる国内での演説は、この手の意味のない言葉で終わっている。何を言っているか分からないコロナ禍政策の最後には、「国民の皆さんの安心安全を……」と付け加えるだけである。前の文脈の意味がなければ最後も意味がない。コロナ禍が終息に向かうような発言をしながら、その判断の根拠を全く示さないままである。

 いつかは終息して欲しいと思っているなら、それは当たり前のことであり、1ヶ月半の先にオリンピックを開催することとは全く関係ない話である。

 先代の安倍が「フクシマの放射能はアンダーコン トロール」と言った大ウソと同じで、コロナもアンダーコントロールだからオリンピックは順当に開催できるとの大ウソを言い続けている。こんな人物二人を国のトップにしたことを恥じるばかりではだめだろう。

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 この文章が掲載される前に終わっているだろうが、6月23日(木)に全国・全世界のオリンピックに反対する個人・団体が「オリンピック終息宣言」を出し、デモをするとの呼びかけがネットで送られてきた。何かをやらなければと思いつつ本文を書いている。

 いずれにしても、「フクシマ、地球温暖化、コロナ禍」をキーワードにした人間社会の変革を日本も世界も進めなければ、今後この地球上に住み続けることはできないだろう。

 高齢の筆者は、友人が紹介してくれた医院で6月8日に新型コロナワクチンを接種してもらい、6月29日に2回目を接種する。オリンピック開催を諦めさせるための運動も含め、もうしばらくはコロナに負けることなく、多くの課題に向き合っていきたいと思っている。

                        (石田紀郎:市民環境研究所)



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