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市民環境研究所から

コロナ禍でも声をあげ続ける


 例年ならば桜も人も車も多いはずの京都名所、蹴上のインクラインには花の終わりを惜しむ人々がいない。新型コロナウィルス感染症の蔓延を阻止すると言って政府と自治体が進める「緊急事態宣言」はそれなりの効果が出たのだろうか、街には人影は少なく、観光都市京都も死んだようである。

 2ヶ月前の2月12日、東京での仕事のため、今までほとんど着用したことのないマスクをつけて上京した。京都よりも感染の危険が高いからと緊張していたが、東京に着いて驚いた。身動きもできないほどに混み合った山手線で、マスクを着用している人は2割もいなかった。東京人はなにを考えているのだろうと、乗客に向って怒鳴りたくなったが、この時期は安倍首相も小池知事もオリンピック開催に未練を持ち、聖火を福島で試走させていた頃である。ほとんどの人が年内のオリンピック開催など出来ないと思っていたのに。

 その安倍と小池が4月に入ると、私たちの言うことを聞かないからこんな大感染が起こって「緊急事態宣言」を出さねばならなくなった、と大声を上げている。お前らの言うことを聞いて外出を控えているのではない。お前らが言えば言うほど、緊急事態とはお前らが引き起こした事態だろうと言いたい。対策を遅らせたことをまず謝罪してからだろう。感染病対策の基本物資である消毒用のアルコールとマスクが決定的に不足しているのに、何の対策も打てないでいる。これが行政府のトップなのだろうかと思う。あの聖火を掲げて走らされた女性は人前に顔を出すこともできないだろう。一生の恥をかいたと思い悩んでいることだろう。

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 かくして花は散ったが、コロナウィルスの感染は拡大し続けている。予定表に書き込んでいた4月、5月の予定の上には赤色の×が記入され、大事な予定はすべて開催不可能となり、これほどヒマな春はこの何十年なかったことである。

 知人に電話で近況を尋ねてみたら、どの人も同じような毎日のようである。そのうちの何人かは一人で畑に出かけ、桜や新緑を遠望しながら畑仕事に精を出し、開放感を味わいながらコロナ感染のない時間を過ごしているという。夏野菜に向けての準備と植え付けだろう。自宅の近くに畑がある人は幸せ者である。

 筆者も毎日出かける市民環境研究所から車で10分弱のところで田んぼ1枚を借用しているグループに3年前から加えてもらい、わずかな面積ではあるが季節ごとの野菜を作っている。そよ風に吹かれながら、危険範囲以上の間隔を保ちつつ別のメンバーに挨拶し、野良仕事をしている。農地が身近にある都市の幸せなひと時であり、コロナ対策にもなり、老人にとっては世間に迷惑をかけないもっともよい時間の過ごし方である。

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 ただ一つ街中に出かけるのは、金曜日の夕方5時半から7時まで、京都駅前にある関西電力京都支店を取り囲んで展開される反原発行動である。これが始まったのは2012年6月29日(金)で、2020年2月21日に400回目を迎えたという。ある女性は400回のうちの390回ちかくも参加しているという。金曜日に関電ビルを取り囲んでの原発廃止要求であるから「キンカン行動」と呼ばれている。定例ゼミと重なるから、筆者はなかなか参加できないが、3月、4月はコロナの影響でゼミがないので出かけている。

 昨夜は408回目であり、コロナ状況下で人数は少なかったが、元気な老人仲間ががんばっていた。ところが、一人の中年男性がその列に入り込み、「コロナ問題の最中に集まるとは何事か」と文句を付けて来た。原発問題にどのような態度を取っているかは語らずに、コロナ媒介を進める行為はけしからんと言っているようであるが、コロナを利用して「反原発」運動をつぶしに来たとしか思えない発言だけを繰り返す。

 コロナを利用した安倍内閣の国民支配を支持し、運動つぶしに来た輩だと思い、キンカン行動の人々から離れよと要求して帰らせた。これからも、特措法を悪用し、コロナを利用して人権侵害行為がこんな形で始まるのだろうか。コロナ以上に悪質な安倍内閣を倒さねば。

                       (石田紀郎:市民環境研究所)



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