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アソシ研リレーエッセイ

高江の生き物たちから考える沖縄



 6月10日に大阪で「アキノ隊員に聞く やんばる高江の生きものたち」という集まりがあるとのこと。なんともソフトな題名の集会なので、ちょっとびっくり。高江といえば映画「標的の村」に出てくる、ベトナム戦争の時代に擬似ゲリラに見立てた訓練のための標的にされたところ。沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが抗議行動の最中に不当逮捕されたり、ヘリパッド建設に反対する住民に対して大阪府警の機動隊員が「土人」呼ばわりした話など、ハードなイメージしかありませんでした。そんな高江の集会のチラシで目にした「アキノ隊員」という今風な単語に異質なものを感じつつ、思い切って参加してきました(ちょっとおおげさ?)。

 「アキノ隊員」とはミヤギアキノさんという方で、沖縄県浜比嘉島出身、日本鱗翅学会・日本蝶類学会の会員だそうです。沖縄で森林性のチョウの生態を調査。主に沖縄県天然記念物のフタオチョウとアサヒナキマダラセセリ、準絶滅危惧種リュウキュウウラボシシジミ、そしてミヤコホソコバネオオハナノミを研究。2011年秋より東村高江・国頭村安波の米軍ヘリパッド建設地周辺の生物分布調査、ノグチゲラの調査をしているそうです。

 アキノさんのお話はとても面白くて、前半は調査している生きもの(虫、蛙、トカゲ、ヘビ、鳥など)の生態について。特に交尾の話で会場は大盛り上がり。後半は、ヘリパッド建設のために樹木が切られ、多くの天然記念物や絶滅危惧種の生きものたちが住処を失ったこと、オスプレイの下降気流が270℃もあるため、生き残った生きものたちが居場所を奪われていっていることなどの報告がありました。

 樹木を生命活動の拠り所にしている多くの生きものたち。実は私たち人類の祖先も樹木が生命活動の拠り所だったという話を聞いたばかりでした。高江の集まりの2日前におこなわれた「よつばの学校」の河合左千夫さんの講座です。私たちは、もともとゴリラやチンパンジーと同じ種なのです。今では、天然の樹木の種子(実)や葉っぱや虫をあまり食べなくなりましたが、多様な種が失われていくことは、人類という種を弱体化させていくことにもなるそうです。農研究会で「食の500年史」という本の勉強会をしていますが、そこで取り上げられる「食」は現代の食べものに通じる歴史であり、その範疇の話でしかありません。農研究会としては、「食」の捉え方をもっと広げて考えていく必要があるのかもしれません。

 さて、話は再度、沖縄について。7月の研修部会では、太平洋戦争末期の沖縄の現実をアメリカ軍が撮影したフィルムを基に編集したDVD「ドキュメント沖縄戦」を見ることになっています。膨大な量の沖縄戦関係のフィルムが保管されているアメリカ国立公文書館から、県内外のカンパ(1フィート運動)により、取り寄せたフィルムに刻まれた沖縄戦。ヤマト(日本人)が沖縄を侵略した上に、米軍との戦闘では、徴兵した沖縄の住民を最前線に立たせ、現地の住民を戦闘の楯にした上に自決まで強要しました。あの米軍基地は、実は沖縄戦の前に日本軍が沖縄に建設した基地がもとになっているそうです。

 今秋、よつ葉の研修部会でその沖縄へ現地研修にいきます。昨年は福島県の原発被災地へ現地研修に行きました。原発反対の集会やデモに参加しているような人たちではなく、普通に公募で入ってきた職員たちです。放射能で汚染された地域の光景は、それなりにインパクトがあったようです。参加した職員からは「やっぱり自分の目で見て、現地の人と直接話をすることで実感できたこともあり、行く前とは見方が変わった」という声が出ていました。今年の沖縄研修では、参加した職員が何を学んでくるか、今から楽しみです(9月22日~23日に台風は絶対に来ません!)。

                     (田中昭彦:関西よつ葉連絡会事務局)



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