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地域から政治を考える

THAADミサイルに反対する韓国の人々

地域からアジアの平和に向かう流れを



 この間、韓国のTHAAD(終末高高度防衛)ミサイル配備反対闘争の話を聞く機会があった。THAADミサイル配備反対金泉(キムチョン)対策委員会の人たちが、「米軍Xバンドレーダー基地撤去、東アジアに平和を!6・3京丹後総決起集会」および前日に行われた交流会に参加されていた。集会では、沖縄から山城博治さん、「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」の永井友昭さんの報告があった。

 THAADミサイルとは米陸軍が開発した弾道弾迎撃ミサイル・システムで、「敵」の弾道ミサイルが、航程の終末で大気圏に再突入する段階で、ミサイル防衛によって迎撃・撃破するものだ。その際、「敵」の弾道ミサイルを追跡するのがXバンドレーダーの役割である。Xバンドレーダーは京丹後市の経ヶ岬に建設されており、ほかに青森県津軽市にある航空自衛隊車力分屯基地にも配備されている。

 Xバンドレーダーは強力な電磁波を発し、人体、航空機、環境などへ大きな影響を与える。京丹後でも、この6月1日に明らかになったように、ドクターヘリが経ヶ岬に着陸するためにXバンドレーダーを止めるよう要請したが、米軍は止めなかったため、ドクターヘリは別のところに着陸せざるを得ず、救急搬送が17分も遅れた。これに対して、地元の自治体、京都府を含めて防衛局に抗議を行っている。これは、米軍基地の存在がいかに住民の生活を脅かしているかという一例に過ぎない。

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 韓国の星州(ソンジュ)に配備されたTHAADミサイルは、ミサイル発射台と同時にこのXバンドレーダーを配備している。レーダーが海に向かっている京丹後とは違い、西方の金泉に向かっている。そして、その先には中国がある。もともと保守的だった金泉の人たちも、星州の配備計画を知り、配備反対に立ち上がった。直接的な影響を受ける地域の人々だけでなく、全市的な取り組みになり、ロウソクを持った抗議行動が連日続けられ、いまも続けられている。

 Xバンドレーダーの配備について、韓国の歴代大統領は、米軍の要求にも拘わらず拒否を貫いてきた。それは、中国に対する挑発になるからだと思われる。しかし、朴槿恵(パククネ)大統領の時に、北朝鮮の脅威への対応という理由で2基の導入を決めた。

 ロウソク革命の中から生まれた文在寅(ムンジェイン)大統領になって、THAADが撤去されると思っていたが、反対に、就任後に北朝鮮がミサイルを発射したため、THAADの配備を増やす決定をした。

 反対派の人たちは、衝撃を受けたが、これは、米国の意志であるということで、反対をつづけていくことになった。文在寅政権は、中国に向けたものではないと説明するが、中国との関係が悪化した。文在寅大統領自身は東アジアの平和をもとめるという立場に立っていた。

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 翻って、日本の安倍政権は、南西諸島に自衛隊、ミサイルなどを配置し、中国に対する明確な敵対的意思を示してきた。

 ところが、この間、文在寅大統領が主導したといってもいい南北首脳会議、米朝首脳会談に至る流れが生まれた。その後も、安倍首相の「盟友」であったはずの米国トランプ大統領自らが米韓合同軍事演習の中止を宣言するなど、事態は大きく変わり、安倍政権は孤立する結果となった。

 日本が米国の支配下にあるとはいえ、東アジアの平和をつくりだすことは、日本の役割として問われていたが、米国に追随する安倍政権は、中国に対する軍事的な挑発の最前線を進んで担い、この平和への流れから取り残されることになった。

 こうした安倍政権の挑発的な政策の犠牲になるのは、沖縄、南西諸島の人々である。和平の流れに逆行する安倍政権に対して、韓国、沖縄、南西諸島の人々と連帯する、私たち自身のたたかいが問われているのだと思った。

                                       (戸平和夫:北摂反戦民主政治連盟)
         


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