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アソシ研リレーエッセイ

日本一のポピュリズム野郎!


 バーニー・サンダースはポピュリストではないし、彼の政治手法はポピュリズムではない。一昨年の民主党大統領候補予備選で本命のヒラリー・クリントンを負かしそうになった時、共和党予備選で台頭してきたポピュリストのトランプになぞらえて、ヒラリーや民主党主流派が追い落としのためにした批判である。「あいつの主張は大衆迎合的で実現不可能だ」と。

 本当にそうなのか。①公立大学の授業料無料化、②国民全員加入の医療保険制度、③TPP(環太平洋連携協定)反対などで、とくに授業料無料化が若者たちの支持を獲得し、カンパも運動員も集まり、大きなうねりを作りだした。

 かつてはほとんどの公立大学の授業料はゼロだったのが、レーガン以来の新自由主義経済の導入で有料化され、今では卒業時に何百万ものローンを抱えさせられ、就職先も思うようにはないという苦境にある。彼らもまた、トランプが依拠したラストベルトの労働者と同じようにグローバリズムと新自由主義経済の犠牲者なのだ。

 サンダースはバーモント州の無所属の上院議員で2期目。その前は同州の下院議員、さらに前は同州最大の都市バーリントン市の市長。もっと前は州知事選や上院議員選に挑むものの落選が続いた。生活も厳しく料金滞納で電気を止められたり、アパートを追い出されたこともあった。シカゴ大学の学生時代からアメリカ社会党の社会主義青年同盟に所属して社会主義者として活動してきた。筋金入りのポピュリストなどは存在しない。

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 テレビで一躍人気者になり、大阪府知事になり、「府知事の仕事なんてドーナツのようなもの」と知って、ドーナツの真ん中の部分の大阪市長へと転身した橋下徹は人気絶頂の頃から「自分の賞味期限」を言っていて、賞味期限がきたとは思わないがさっさと引退してしまった。政治の世界では「賞味期限」などという言葉は無縁のものだと思うのだが、ポピュリストにとっては「賞味期限」があるし、彼はそれをよく知っていた。経済格差が広がり、比較的恵まれている公務員に対する妬みが充満しているのをすくい上げ、公務員バッシングで知事選と市長選に勝った。やったことは新自由主義路線で民営化と人員削減。地下鉄と市バスの民営化も達成した。これは国鉄の民営化が国労つぶしであったのと同じで、大交労組つぶしでもある。

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 わが国でいちばんのポピュリスト政治家はアベだろう。拉致問題で自民党総裁へ駆け上がり、産経新聞がふりまく嫌韓・嫌中気分を追い風にし、政府広報紙になりさがった読売新聞の世論操作に支えられてここまできた。朝鮮半島で雪解けが進み、アメリカは米軍を撤退して休戦協定から一気に平和条約まで行くかもしれない。北朝鮮のミサイルがアメリカを標的にしたものであることを百も承知しながら、まるで日本を狙っているかのように危機を煽り立てて軍備増強と憲法改悪を目指してきたが、いまや日本だけが蚊帳の外に置かれてしまった。これこそアベの失政である。国民を騙し、国民を脅し、それで政権を維持する。サイテーの男である。

                       (河合左千夫:㈱やさい村)



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