連載 ネパール・タライ平原の村から(79)
大地震から3年、復興途上の村で考える
ネパールの農村で暮らす、元よつば農産職員の藤井牧人君の定期報告。その79回目。
4月25日でネパール大地震から3年が経過しました。4月9日付の地元紙によると、ラスワ郡の被災者1万2000戸の内、耐震性基準を満たすことを条件に、3段階に分けて支給される住宅再建資金30万ルピー(約33万円)を受けて復興住宅を建てたのは、およそ4分の1にあたる3300戸のみ。土砂災害で土地そのものが流れ、危険性が高く居住地移転を余儀なくされた村も、移転先が見つからず。
被災者の大半は3年前と同じく、廃材と緊急物資で支給されたトタン張りの仮小屋で今も暮らし、再建が遅れているとのことです。そのラスワ郡で地震以降、僕が毎年訪問するガッタラン村に関する記事もありました。そして先日、電動切断機の回転音が響き、住宅再建にようやく動き始めたガッタラン村の、被災3年後の現状を見て来ました。
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ランタン国立公園内にあり、タマン人の豊かな文化を継承するタマン文化遺産として、トレッキングで外国人観光客も訪ねるガッタラン村(250戸)は、99%が全半壊しました。重い割石を積んだ民家の瓦礫は放置され、被災者の多くが集落外の段々畑に仮住まいを構えるようになりました。以前は、カマドの煙で煤けて引き締まった、松の板葺屋根の民家集落が風景に溶け込み、非常に美しかったのですが、「今はトタン屋根が輝いている」と語られています。
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■ガッタラン村の集落 |
また新聞には、被災前のように、継承されて来た技術を重視し、崩れた割石を再利用した2階が住居で1階が家畜小屋と穀物庫の民家を、NGO(非政府組織)の支援で建てることを選択したチリンさんという方のコメントが載っていました。
もともとセメントはなく、土が粘土質でないため、「割石だけで建てた家は崩れた」けれど、「レンガで家を建てると、割石が無駄になるので再利用したが、レンガの家よりもセメントがずいぶん必要で、古い伝統的な家の方が高額になる」そうです。
また、レンガと異なり、割石は積み上げるのに多くの時間を要すること。みな住宅再建で忙しいため人手が不足し、技術者が以前より少なくなったこと。木材の高騰で板葺きの屋根を造るのが厳しく、「3年前のトタン屋根の仮小屋から新しく建てる家も、変わらずトタン屋根の家になる」といった記事も載っていました。
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地域の生活に合った、地域で手に入る資材と継承された技術で建てる民家の再建は、時間も金もかかるという認識です。遠方から運ばれる資材で、国の復興住宅モデルに沿った、画一的な民家が集まる村へと、ガッタランは変わりつつあります。
過去から未来へと、継承されて来た文化遺産が崩れたままの状況と再建を急ぐ想いとの間で、ガッタラン村はまだ揺れていると思うのです。
(藤井牧人)