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地域から政治を考える

豊中トリプル選挙の結果から
国政と地方の違いを改めて痛感



 4月22日、大阪府豊中市で市長選挙、大阪府議補選、豊中市議補選の投開票が行われた。市長選挙では、元副市長の長内繁樹氏が大阪維新の会の元府議、中川隆弘氏を破って勝利した。長内氏については、「反維新」の一点で自民党から社民党、豊中市民連合まで支持を行い。共産党も自主投票で対応した。その結果、長内氏が49,863票、中川氏が43,152票となった。圧勝とはならなかった。

 大阪府議補選では、大阪維新の会の植田氏が43,800票、自民党の中井氏が43,018票でほぼ拮抗し、市民と野党が共闘して押し出した共産党の山本いっとく氏は27,253票にとどまった。市議補選では、自民の中岡氏、大阪維新の会の太田氏、佐村氏が当選した。

 以上の結果を顧みると、市長選で維新の中川氏を当選させなかったのはともかく、改めて維新の強さを見せつけられた気がする。ご存じのように、維新の中川氏は森友学園の籠池氏から協力を求められるような間柄だ。森友学園が豊中市で開設を予定していた小学校は、通常なら設置認可が下りない内容なのに、維新の代表でもある松井知事の下で設置認可を獲得した。そんな経緯があるにもかかわらず、選挙はなんの影響も受けていないようだ。

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 地元で森友問題を追及し続けてきた「森友問題を考える会」の中心メンバーでもある共産党の山本氏は、前回の衆議院選挙での共産党候補者の得票15,197を上回り、倍近い票を獲得した。しかし、野党全部の票を合わせたよりは少ない。いくつかの野党、森友問題を考える会などが支援を行い、森友問題を前面に掲げたが、市民の多数の票を獲得することにならなかった。

 森友問題は国政の問題になり、地元豊中の問題ではなくなっているのかもしれない。自民党は国政で支持率を低下させており、維新も一時の勢いがなくなっているにも関わらず、多くの票を集めている。

 前回の市議会選挙の結果を見ると、共産党は15,512票で、衆議院選挙での豊中選挙区でもほぼ変わらない。旧民主党系が9,262票、社民党が2,017票、革新系無所属が4,418票で、それらを合計すると31,209票になる。自公、維新、保守無所属の合計は、90,615票になる。それを2分すると45,307票になる。

 今回の府議補選で、山本氏の得票が27,253票。となると、旧民主党系の票が動いていない可能性が疑われる。一方、保守の側で自民と維新の候補が拮抗しているのは、公明、保守無所属が票を割った可能性が考えられる。前回の市議選挙では、公明は25,331票だった。維新の29,890票に次ぐものである。さまざまな思惑から自民、維新を支えたと思われる。

 いずれにせよ、「モリカケ」の風は吹かなかった。そして、野党共闘も全面的なものになってはいなかった。今後は、こうした問題を克服していくことが必要である。

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 地方選挙と国政の政治課題は一緒ではない。国政の焦点になっており、マスコミ報道などでおかしいと思っても、生活と結びついた問題ではなければ、現在の与党勢力への足元からの怒りにはつながらない場合がある。国政で与党の支持率が低下しても、また、維新の目玉である都構想も実現が困難になっても、彼らに投票する人々がいることを考える必要がある。地方選挙で何を主張し、誰に訴えていくのか、考えていかなければならない。

 とはいえ、今回の選挙でも、市民と野党の共闘の有効性は改めて確認されたと言える。これまで共産党との共闘に積極的でなかった社民党や旧民主系も共産党を支援した。ただ残念ながら、もともと社民は勢力に乏しく、旧民主党系は支持基盤の連合が積極的に動かなかったと言われている。

 いずれにせよ、今後とも市民と野党の共同を強めていく必要がある。

                                               (戸平和夫:北摂反戦民主政治連盟)



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