HOME過去号>158号  


地域から政治を考える

改憲への歩みが進められる中で

主張の押しつけではなく
一人一人が考え、行動できるように



 日本の政治状況はますます悪くなっている。デタラメなデータで「働き方改革」を正当化しようとした安倍は、責任逃れをし、記録はないと嘘をつき通した国税長官は姿をみせない。そして、そのような人々が子どもたちに道徳を教えようとしている。

 しかし、この呆れた政権を47%の国民が支持している。国民と呼ばれる人々にとって本当に信頼に値する政府なのか。政権にすり寄れば、安泰であり、政権と対立すれば、籠池氏らのように投獄され、口を封じられる。

            ▲      ▲      ▲

 このような状況の中で、改憲への歩みが進められている。自民党は、9条に自衛隊を明記する加憲、緊急事態条項、合区解消、教育の無償化など四つの項目について一括して、国民投票にかけようとしている。

 改憲へのハードルとして、改憲の発議には衆参議員の3分の2以上の賛成が必要なこと。また、国民投票で有効投票数の過半数が必要なこと。この二つのハードルを超えなければ、改憲は成立しない。

 現状は、3月の自民党大会までに自民党の改憲案がまとめられることになっている段階。その上で憲法審査会において審議され、国会に提出されることになる。ただ、与党においても、自民党が前のめりなのに対して、公明党は慎重な姿勢を崩していない。そのため、自民党は維新の取り込みに躍起になっている。

 しかし、維新の主張であった教育の無償化は、自民党内の議論で努力目標に変わっている。さらに、野党は希望の党を含めて9条改憲に反対している状態であり、とくに野党第一党である立憲民主党は強く反対している。自民党は年内の発議を目指しているが、発議に至るまでも容易ではない。

 さらに国民投票である。発議後60日から180日間の時間があり、その間に国民投票へ向けた運動が行われる。広告規制がないために、与党はカネにモノを言わせてマスメディアを総動員した体制を作るだろう。国民投票法では、有効投票の過半数があればよく、すなわち投票数はいくらでもよく、その過半数の賛成があれば改憲が可能になる。棄権や白紙投票は、賛成と同じになる。

 オール沖縄が敗北した2月の名護市長選挙を見ても明らかなように、与党は徹底した組織戦の態勢を作っていくだろう。

 9条改憲に反対し、憲法を活かす3000万人署名は、私たちの武器であるが、「空中戦ではなく地上戦を」ということが、様々なところで言われている。住民の一人一人に向き合い、伝えていく努力が語られている。しかし、改憲、反改憲を問わず、人々の意識が高まっているようには見えない。

 昨年の衆議院選挙の結果にも表れているように、多くの住民が関心があるのは自分たちの生活であり、それ以外のことについては無関心のようである。とくに、若い人の間にその傾向が強く、そこにどう切り込むかが問われている。

 「反改憲」の主張の押し付けではなく、住民の一人一人が考え行動できるような、伝え方の工夫をしていかなければならない。

             ▲      ▲      ▲

 この点で、2月20日に「リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会」主催で行われた「憲法改正『国民投票法』の問題点と対抗策」という勉強会は参考になった。とくに、パネルディスカッションに参加していた広告代理店の人の発言が印象的だった。

 「朝の通勤電車で、寝不足で二日酔いで、スマホだらだら見ていても、それでも頭に入ってくるような柔らかい情報しか生活者は呑み込んでくれない」「特定の立場の人だと引かれてしまう」「生活者は意外に情報への警戒心が強い」などの指摘には、確かにそうだと頷かされた。

 要は、まずきっかけをつくり、接点をつくり、その関係を深める中でしか伝えることはできないということだ。当たり前のことなのだが、改めてとらえ返すことになった。

                    (戸平和夫:北摂反戦民主政治連盟)




©2002-2020 地域・アソシエーション研究所 All rights reserved.