HOME過去号>150号  

地域から政治を考える

住民運動と行政の関係とは?

行政は都合の悪いことは隠す
それを監視するのは住民だ!



 6月24日に豊能町で「住民自治とダイオキシン問題」と題して憲法カフェが開催された。話し手は「ダイオキシンから環境問題に取り組む豊能郡住民の会」の八木修さん(元能勢町町議)。ダイオキシン問題の初期段階における、住民運動と行政との関係が中心となった。

 八木さんの話を聞き、行政の側が失敗や都合の悪いことを隠したため問題が大きくなったこと、住民による行政に対する監視が重要であることを改めて実感した。

 しかし、行政にはその反省がない。そのため20数年たっても同じことが繰り返され、いまだに汚染土が豊能町に置かれている。八木さんたちは現在3つの監査請求を行い、責任究明と賠償を求めて運動を続けている。

 ダイオキシン問題の発端は1981年、豊能町と能勢町が共同でゴミ処理施設と火葬場の建設運営の協議会を設置したことに始まる。86年、能勢町内の山内地区が候補地となり、説明会や施設見学を経て同年9月に合意した。住民のダイオキシンへの不安に対して、高温での運転、排ガスは洗煙装置で対処、排水は無放流方式で水源汚染の心配はないと説明していた。

 処理施設の豊能郡美化センターには三井造船の焼却炉を導入し、子会社の三造環境エンジニアリングに運転管理を任せた。国がダイオキシン対策の最初のガイドラインをつくり、それに基づいて大阪府が年に一回の立ち入り調査をすることになった。CO(一酸化炭素)計を設置し、ダイオキシン対策をするよう指示した。

 ところが、同センターのCO濃度は基準値の倍の値だった。対策として、三井造船は1億円の改修費を見積もってきたが、予算がないということで見送られた。そこで、三井造船と施設組合は排ガスのダイオキシン測定で偽装運転を行い、値を低く見せようした。また、排ガスの測定前にダイオキシン対策の改修費の補助金を国に申請。97年の施設組合の議会に大規模改修費15億を予算化。ただし、説明には「ダイオキシン対策」の文言は一切なく、老朽化を理由とた。5月には改修工事の入札を実施し、三井造船が落札した。

 全国調査が6月に公表された。排ガス濃度のワースト1は、豊能郡美化センターと同じ焼却炉を使っていた兵庫の宍粟郡環境美化センターだった。その後、豊能郡美化センターの測定値がマスコミに漏れ、排ガス濃度が高いことが明らかになり、地元住民は公害協定に基づいて焼却停止を申し入れ、翌日から休炉となった。

 ところが問題はそれで終わらなかった。8月には環境調査が行われ、豊能郡美化センターに近い能勢高校の栗園の土壌で非常に高い値が検出され、しかも、通常では遠いところで検出されるものが、近いところで高い値がでたため再調査したところ、処理施設の法面でも高濃度ダイオキシンが検出された。炉の構造の問題で、内部でダイオキシンが濃縮され漏れ出ていたためだった。

 住民運動は、この炉が欠陥炉であると追及したが、行政は受け付けなかった。それを通信で暴露するなかで内部告発が現れ、ダイオキシン濃度を減らすために偽装運転していたことも判明した。それに対しても行政はとりあわなかった。しかし、国が原因究明の調査にはいり、排ガス濃度の偽装工作が明らかになる。

 「公害調停を進める会」がつくられ、2000年7月に公害調停成立。27回の調停を重ね、協定事項がまとまる。今回の話は、ここまで終わった。

 行政は都合の悪いことは隠す。それは自らの保身を第一とするからだ。「森友学園」問題でも、保身のために隠し、問題を曖昧にしようとしている。それに対して、自らの権利を行使して真実を暴き、改善を促すのが住民運動の役割だ。

 会場に来ていた行政側の元当事者が、「隠したらあかん」と繰り返し言っていたのが印象に残った。

                                             (戸平和夫:北摂反戦民主政治連盟)



©2002-2017 地域・アソシエーション研究所 All rights reserved.