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活動紹介:NPO関西仕事づくりセンター

「正念場」を迎える仕事づくり活動

雇われて働くだけでなく、自ら仕事を創り出し、協同の場を形成していこう―。そんな展望の下、労働組合や野宿者支援運動などを中心に仕事づくりのプロジェクトが始まってから、ほぼ1年となる6月21日、大阪府立労働会館において約40名の参加の下、NPO関西仕事づくりセンターの第一回定期総会が行われた。思いの外時間のかかったNPO法人格の取得も無事に済み、仕事の募集や受注に関する一定の蓄積を踏まえ、2年目以降をどう展望するのか。同センターの理事である津林邦夫氏に記していただいた。

「五里霧中」の1年

昨年度は、ある意味「五里霧中」でスタートし、何はともあれ経験と実績を蓄積すべく、仕事を募集すること、仕事をやってみることに集中した。幸い多くの皆さんの協力をいただき、「何とかやっていけそうだ」という最低限の基盤はできたように思う。反面、無理を承知で取り組んだ面も多く、せっかく出してもらった仕事をちゃんとこなせない、相手先やあるいは仕事をする者同士の「協同」の内実、それらを支えフォローしきれない事務局の体制・力量不足などなど、現実にさまざまな問題・課題も露呈した。

そうした反省点も踏まえ、今年度は仕事をする側の主体的力量・体制の整備と強化に取り組んでいきたいと思っている。活動方針で言えば「地域・生活圏からの仕事づくり」となるが、具体的には以下のようなことを考えている。

釜ヶ崎パトロールの会 高齢者特別就労組合準備会

昨年度、野宿労働者を中心にポスティングなどに取り組む中で「体力的にきつい」という声もあり、「近くで仲間同士、自分たちのペースでやれる仕事があれば…」との要望が出ていた。試験的にニュースの発送業務をやってみたりしたが、小沢福子・大阪府議の紹介により、高槻市で内職斡旋業を営むMさんの協力を得ることができ、「手内職」に取り組み始めた。当面は週1回、作業日を決め、野宿労働者や釜ヶ崎の労働者に参加を呼びかけていくことにしている。文字通り一つ何十銭の昔ながらの「手内職」の仕事で、経費・採算などを考えるとかなりしんどいところもあるが、まずは「皆で仕事をする時間・場」を確保し定着させることを最優先に、継続していく予定だ。

合わせて、仕事づくりに関わる活動家の経済・生活基盤の確立に向け、弁護士事務所などを対象とした「書類廃棄業」の準備を進めている。厳しい雇用情勢は、アルバイトで生活費を稼ぎながら活動を維持してきた各メンバーも直撃し、活動の制約要因にもなっている。まず自らのしっかりした基盤を創ろうということで、京都で実際に仕事をした経験を持つ管理職ユニオン関西のNさんの助言を得ながら、何とか軌道に乗せていきたいと思っている。

NPO関西仕事づくりセンター・豊中

当初から構想していた「地域からの仕事づくり」の具体化として、今年6月から本格的な宣伝と仕事の募集を開始した。メインは我がNPOの理事でもあるSさんを中心とした植木の剪定・造園で、今のところ反応は「ボチボチ」というところ。それ以外の問い合わせとしては、引っ越しの手伝いや大型ゴミの処分、高齢者家庭のクリーニングなどで、「地域の便利屋さん」的なものが多い。様子を見ながら、いっそのこと「地域の便利屋さん」を前面に打ち出していこうかとも考えている。

いずれにせよ、今のところ散発的に動いている個人やグループを、具体的な仕事の実行を通じて、一つの「集団・固まり」にしていくことを当面の課題としていきたい。

「起業」あるいは「専門チーム」

昨年度は、冒頭に述べたように「やってみること」を優先し、また仕事をする側が野宿労働者や一般の労組組合員が中心だったこともあって、どちらかと言えば技術や専門性を必要としない「単純作業」をメインにしてきた。それはそれで今後も継続するが、今年度は各々の専門性や得手不得手に応じたNPOとしての「起業」あるいは「専門チーム」の形成に取り組みたいと思っている。

上述の「書類廃棄業」や植木剪定・造園もその一環だが、もう一つ計画中なのが、ホームページの作製管理部門。これまではコンピュータ技術者でもある理事長のTさんが、専ら一人で引き受けてきたが、コンピュータ関係の仕事についてはいくつか問い合わせもあり、同じくTさんが個人的にこなしてきたニュースの編集などの仕事と合わせ、会社の立ち上げも視野に入れつつ、「専門チーム」を形成していきたいと思う。

労働者供給事業も視野に

以上は、言わば会員同士の助け合いの範疇だが、今年度はもう一つ、有料職業紹介・労働者供給事業の認可申請を出す予定で、準備段階からいよいよ具体化の段階を迎える。これらは、それぞれの組合・団体の組合員やメンバー以外の労働者をも対象とする事業であり、NPOとしては新たな領域に踏み出すことになる。

その分、検討しなければならない問題も多い。求人先の労働条件・環境、あるいは「仕事を通じた協同」という私たちの基本姿勢との関連、等々。これまで寄せられた一般の求人は極端に言えば「安く使える労働者はいないか」というものが多く、そのため、われわれの事業そのものがある意味「手配師」的な性格を持たざるを得ない以上、下手をすればせいぜい「良心的な手配師」になってしまう可能性もあるのだ。

さらに、格段に増えるであろう事務作業を支える体制の問題も出てくる。

具体的な構想や計画については検討・論議を始めたばかりで、全ては「これから」というのが現状だが、連帯労組・関生支部からは、労働者供給事業の認可を受けている労組が設立した派遣会社「スタッフフォーラム」との提携の可能性を検討してみては、との提起も受けており、それも含めて検討・論議を重ね、具体化に向けて着実に進んでいきたいと思っている。

初年度は無我夢中で走ってきたが、今年度は将来的な可能性、事業展開の基盤を具体的に固める「正念場」と言える。引き続き皆さんの協力をお願いしたい。(津林邦夫:北大阪合同労働組合)


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