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市民環境研究所から:京大が関経連に入会!?

今日、7月21日は麻生総理が衆議院を解散する日である。予告解散とは国民をなめた話だ。衆議院議員の任期いっぱいまで努めての任期切れが間近に迫っているのに、なぜ解散しなければならないのか。重要案件の審議が難航して、国民の信を問わなければならない解散なら、予告などあり得ない。自己保身のためなら、世のルールなどはどうでもよい、どうにでもできると思っているとしか見えない。少なくとも、これだけは守りたい、守らねばというものがない国になってしまったのだろうか。矜持の問題だと啖呵を切ったのは麻生本人だったのだが。矜持の意味を知らないのだろう。矜持の意味が「自信と誇り」であるなら、プライドを支える信念と行動があるはずである。 

国のトップがこうだから、あちこちから見習う輩が登場する。それも、知性や理性が高いと自任する輩に多い。5月12日付の朝日新聞を見て驚いた。「京大が関西経済連合会に入会」したと、関経連が発表したらしい。連休ぼけで読み違えたかと眺め直しても、国立大学が初めて関経連会員になるのは間違いない。大阪大と神戸大も一緒に入会したという。曰く「研究成果を京阪神の中小企業などに広く情報発信し、産学連携を進めて、社会貢献を図りたい」と。京大は関経連や日本経団連などに産学連携状況を説明し、産官学連携本部を設置し、めでたく入会となったようだ。

京大新聞によれば、「学内からは今のところは反対意見はない」とのことである。何人かの現役教授に訊ねてみたが、ほとんどが経過も結果も知らないようだ。独立行政法人になる前なら、こんな組織の根幹に関わることは、部局長会議での討議を経て、評議会で決定するのが筋だった。しかし独法化の後は、ものごとは総長とその取り巻きで決められ、末端の教授連中はなにも知らない、知らされないという。多くの教員は新聞で知ったのだろう。大学とは何なのかを、もはや誰一人として考えていないのが京大であるらしい。

大学が造り出すべき製品は、良質な学生だろう。その製造のために教育するのではなかったか。研究活動を通じて製品の質を高めようと、大学に多額の税金を投入しているのではないか。仕上がった製品=学生も、研究成果も商品ではないはずである。商いの品をつくるのが大学の使命ではないだろうに、経済団体に入るのは、自らを商品生産組織と認めたからか。まさに、矜持を捨てた京大は、もはや大学ではない。それに対して、何も発言しないでいる教員たちもまた、矜持を捨てた知識のみの輩でしかない。

「大学の研究成果公表を通じた学生の獲得、企業の求める人材と大学教育が目指すところの人材との間の齟齬の是正なども期待される」との研究推進部産官学連携課長の談話(京大新聞)は、今の京大を如実に表している。朝日新聞の記事では、「経団連に加入しないのか」との記者の問い合わせに、東大の担当者が、「東大は教育と研究の組織ですから」と答えていたのは、すでに実質加入している東大ならではの発言なのか、皮肉の極みなのか。(石田紀郎)


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