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市民環境研究所から

政治的極寒の中で

─原発賠償訴訟の裁判傍聴を!─

暖冬が一変して厳寒となり、京都にも何年ぶりかで15センチもの積雪があった。我が故郷の滋賀県湖西の実家に電話を入れると、1983年の豪雪以来の積雪で、老夫婦が住む家は雪に3日間も埋もれ、やっと村人に家を掘り出してもらったという。こちらも老体であるから支援できなくて申しわけないと電話で話した。

福島の仮設住宅ではどのような冬だろうと思うが、テレビ報道もない。この頃のマスメディアの報道姿勢はなんともお粗末そのもので、大雪も報じなければ、安倍内閣の戦争法から共謀罪制定など、報じなければならない課題だらけであるのに、三文役者の淫行や大麻事件などに時間を費やすばかりである。もはや福島原発崩壊とそれに伴う十数万人以上の避難者のことなどはこの日本には無いかのようである。このようなマスメディアの堕落した世界で働いている職員はさぞかし空しく、恥ずかしい毎日を送っているのだろうと同情する。

丸6年が過ぎ去った福島の避難者の苦境を切り開く術もなく傍観している自分自身もまた空しく、恥ずかしい毎日である。それを見かねたのか、突然に原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会の共同世話人代表になるように言われ、なにが出来るのかの展望もないが、3人の内に入れてもらった。今も京都を避難先にと住み続けておられる方が400人前後と聞いている。住宅問題や就労就学などの多くの困難の中で、この訴訟を始められた。この裁判の意義と目標を原告団は次のように述べておられる。

第1は、国に法定被爆限度(年間1ミリシーベルト)を遵守させ、少なくともその法定被曝限度を超える放射能汚染地域の住民について「避難の権利」を認めさせること。

第2は、原発事故を引き起こした東京電力と国の加害責任を明らかにすること。

第3は、原発事故によって元の生活を奪われたことに伴う損害を東京電力と国に賠償させること。

第4に、子どもはもちろん、原発事故被災者全員に対する放射能検診、医療保障、住宅提供、雇用対策などの恒久対策を国と東京電力に実施させること。

この内のどれも国と東電は認めず、手当もしない状態で6年間も過ごさせた。この事実をマスメディアはなぜ報道しないのかと怒っている。避難者とか被災者と云えば、国が十分な手当をし、救援しているかのように聞こえるが、対策はないと言った方が実態を表していると思う。筆者には、これらの方々のことを避難者ではなく、国家が切り捨てた難民としか思えないのである。ヨーロッパに流れ込む難民が、諸国でどのように対応してもらっているのかを十分知らないが、同じ国民を国内難民にしているこの日本という国と現政府の方が残忍であり、無責任である。

裁判は証人尋問に入り,重要な局面に差し掛かった。どうか注目してください。そして、裁判傍聴に来てください。自分も何ができるか分からないが、政治的極寒の中で、せめて傍聴席の一席だけでも占め続け、暖め続けようと思っている。

(石田紀郎:市民環境研究所代表)

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