ネパール・タライ平原の村から(57)
タライ平原の酪農 その2 -集乳所を訪問-
毎朝6時~8時と夕方3時~7時まで、バイクや自転車で大人・子どもが牛乳缶を提げて、牛乳の集荷場にやって来る、地元の町にある“集乳所”を訪問しました。集乳所の正式名称は、エクリクードゥ酪農協同組合。今回は、この組合の代表パダム・プラサードさんに集乳所の運営についてうかがいました。* * *
集乳量は1日平均2000リットル。半量が各地を巡回して来るタンクローリーで輸送され、残り半量が非発酵チーズ・ギュー(精製バター)・暑季のみヨーグルトに加工され、地元で販売されます。また、集乳所で生乳のまま、1リットル58ルピー(62円)で販売もされるとのことです。1人当たりの出荷乳量は、最大80リットル(30頭ほど飼養)が1人。50~60リットルが2人、30~45リットルが25~30人、5~10リットルが40~50人、2~5リットルが100人、2リットル未満が100人近く。ネパールの牛1頭当たりの乳量から考えて、生産者の2/3が1頭の乳牛から搾り、自家消費分を差引いて、生乳を出荷されていると考えられます。買取りに関しては、組合員以外でも極少量でも可能とのことです(試験的に持って来る人もいる)。また、遠方5か所からまとめて、自転車の後部が荷台のリキシャーで道中売りながら、運ばれて来るとのことです。
※3月初旬に国境封鎖は解除され、燃料不足の問題は現在解消されています。
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ここ2~3年、補助金で多頭飼育を始めた“農業経営者”、と規模拡大化する畜産経営を地元地域で見かけるようになりました。対して「読書きを知らない年配者や普通の小規模農家は、何の支援も補助金も得られない」と代表のパダムさんは語っていました。
日本で見た地場野菜の小さな集荷場のように、生乳が集荷される集乳所を見ていると、ネパールの酪農は、小規模農家によって支えられ、そうあり続けることで農業と農村が支え続けられると思うのです。
(藤井牧人)
