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市民環境研究所から

対面なき商システムにもの申す

 市民環境研究所は5階建てのビルの3階にあり、東側全面が窓で、外気に接しているため冷え込みはきつく、夜はブラインドを降ろして寒さを防ぐ。今冬は不規則な気象で真冬があったようでもあり、なかったようでもある。京都に雪がちらついたのは数日で、屋根が白くなったのはわずか2日だけだった。こんな気象ではあったが、筆者はある問題を抱えて熱く怒って冬が過ぎた。

 ことの始まりは、昨年の夏頃に我が家を訪ねて来た電信関係会社の宣伝マンの勧誘に応じたことである。インターネットやメールを日常的に使っているため、少しでも安く便利なものをと思っていたところに、気に入る料金体系の勧誘だったので乗り換えることにした。利用を始めて2ヶ月あとに最初の請求書が送られてきた。金額は納得できる範囲内だったので支払った。請求書発行はNTT西日本京都支店である。これには少し違和感を感じたが深く考えもしなかった。それから2ヶ月後に送られてきた請求書を見てびっくりした。前回の請求の2.5倍である。驚いて請求書を発行したNTTに電話したが、京都支店の担当者ではなく、公表されている0120から始まる電話番号にかけたところ、そこはコールセンターと呼ぶ組織らしい。その回答は「NTTは取り立て業務ですから、請求書の内訳など中身は承知していません」と云うだけだった。これでは埒があかないとネット業務担当のH社に電話したが、ここでも契約や請求のことは分からないとかわされたので、契約業務を担当のW社に電話すると、2.5倍になったのは工事費と契約内容に入っているサービス項目が2ヶ月後から有料になるので増えたのだと云う。そんなことは請求書に書いてないと言うと、ネットで見てくれたら分かると云う。ネットで見ないから紙ベースの請求書を送れと要求するとそれはしないと云う。工事費は無料という約束であったのに4000円もの請求である。その後の電話で「一旦工事費を支払ってもらってから返金することになっている」と告げて来たが、請求書を発行し、取り立て業務のNTTはそんなことなど知らないと突っぱねてきた。契約業と実務と取り立て業が実にきっちりと分かれた体系で、消費者にはだれと交渉したらよいのかが分からないシステムになっている。そこで、NTTあての質問書を提出した。内容は「貴社を訪問したが、ショールームの窓口しか対応する部署はないと面談を拒否された。貴社が発行した料金請求書に関する疑義について詳細な説明を要求するものである。明細を明らかにしない請求書を発行し、料金請求を行い、回収代行だから明細は知らないとまで言うのは商道徳に反する行為であり、よく世間にある暴力的取り立てと変わらないのではないか」と書いた。その後の経過は省略するが、最終的にはNTTとH社が筆者を訪ねて来て、納得できない料金と解約金は支払うことなく解約が成立した。

 3ヶ月近くかかったこのもめ事から学んだことは多く、その内で一番大事なことは、現在の商業から対面対応がなくなっていることである。質問や苦情に対する回答はすべて電話かメールに依り、人と人が対面して問題点を整理し、回答する場面がまったくない。0120-や0570-の電話は市内なのか地方なのかも分からない相手と会話しているのである。簡単なものはそれでもよいが、難しい問題やこじれた状況での問題解決にはコールセンターなどは役に立たない。あくまでも対面を拒否されるなら解決場面はなくなる。まして、NTTとH社とW社が任務分担し、責任の所在を明確にしない商システムが横行していることに気が付いた。まさに何万人が被害に合っている“振り込め詐欺”のシステムとまったく同じである。対面を拒否し、誰も顔を見せないで稼ぐのが最先端の商業なのだろう。私の例も組み込まれているのかもしれないが、京都消費者総合センターの「京(みやこ)・くらしの安心安全情報」第83号に「IP電話や光回線の契約は慎重に!」という記事があり、この冊子は町内会の回覧板でも回ってきたから、筆者のようなもめごとが多発し、多くの人がダマされているということだろう。
(市民環境研究所代表 石田紀郎)


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