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市民環境研究所から:「サギ」が表す今日の世相

このコラムの名前にある「市民環境研究所」を開設し、半年後にNPO法人資格を取得した。もう6年の歳月が流れた。その間、このコラムを提供して頂き、ほとんど休まずに書き続け、掲載してもらってきた。拙文に付き合わされている方々には、ひたすら申し訳ないと6年をまとめてお詫びし、これからもお付き合いをお願いしたい。せっかく書かせていただくのだから、時代を読み切り、時代を先取りする論を展開したいが、そんな才はない。せめて何年かあとに、あの頃はそんなことが問題になっていたのだと思い出す切つ掛けにでもなればと思っている。

今の時代を一語で表すなら、たぶん「サギ」だろう。漢字検定協会とやらの親子サギもあれば、麻生内閣の定額給付金という見せ金によるサギもある。これほど大事件でなくとも、身近にサギが次々とやって来る。3ヶ月前の本欄に、カザフスタン共和国にいる共同研究者を名乗る者から、緊急振り込み依頼のサギメールが届いたと書いた。この件は騙されることなく落着したが、今回は国内からのサギ電話で、現在進行中の事件である。

まもなく、夏の甲子園に向けた高校野球の地方予選が始まる。それに伴い、各紙に関連記事が掲載される。そんな中に、母校を応援する卒業生の名刺広告を載せるものがある。筆者も以前、この種の名刺広告を載せたので、それを見た広告業者から誘いがあった。載せる内容は、氏名、肩書き、卒業年次と高校名、そして「がんばれ後輩球児」である。筆者は野球部員ではなかったが、現在の勤務大学の新学部宣伝として名刺広告を出すことがある。今回もその目的で掲載を了承した。掲載期日は通知があるが、掲載紙が自宅に送られるまでには1週間ほどかかる。この時差を利用してサギ集団が暗躍する。手口はこうだ。

@自宅に電話して、大学に出勤していることを確認する。A大学に電話を入れ、「新聞広告のことで」という。Bこちらは「もう掲載されましたか」と尋ねる。Cサギ師は「今回は別の広告のことですよ。原稿ができたのでファックスで送るから、ファックス番号を」と応える。Dこちらが「別の広告などしていない」と応えると、「以前電話したときに、野球関連広告と勘違いして、私どもに別の広告掲載を発注されましたよ」とくる。Eここからは押し問答で、「電話を勘違いして、福祉関係の記事への名刺広告を発注されたのだから、料金26500円の支払いを」と執拗に迫る。こちらは「そんな約束などしてない」と電話を切る。F自宅に同様の電話が後日かかる。大学への電話担当は加藤と名乗り、自宅への電話担当は井上だが、別人かどうか不明である。

サギ師の主張は、筆者が依頼した名刺広告に関する電話と勘違いし、別の名刺広告依頼を了承したのに、ど忘れしている、というものだ。人間誰しもど忘れすることはあるから、ひょっとして、と引っかかる人もあるだろう。1週間後に野球関連の名刺広告掲載紙が送られてきた。この記事を見て、サギ師は筆者の名前や所属を知って電話していたのである。だから、「勘違いをして」というのだが、この記事を知らなかったなら、彼らはサギ電話をかけることはないから、自ら墓穴をほっているのだが。それにつけても、「石川や浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」である。ここのところ電話がかかってこない。どうも、サギ集団も土日はお休みらしい。(石田紀郎)


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