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市民環境研究所から


フクシマを、なかったことにしないために


京 都の正月は61年ぶりという大雪で始まった。元日の朝は晴れていたので、琵琶湖疎水をいつものように犬と小一時間散歩し、雑煮をゆっくりといただ いた。昼頃に、にわかに曇天となったと思うや気温が下がり、雪が舞い始めた。かくして三ヶ日はどこにも行かない雪の寝正月で、積雪は30センチに もなった。
 テレビはどうしょうもない、くだらない番組を続けているが、筆者の三ヶ日は実業団駅伝と箱根駅伝で毎年充実している。あれは1954年ころだっ ただろうか、雪の鎌倉で日本はじめての国際マラソン大会があり、アルゼンチンのゴルノが優勝したラジオ放送をかじりつくように聞いた。それ以来、 マラソンと駅伝の放送を8割くらいは観ている。駅伝の放送がなければ我が家の正月ではテレビは点けないだろう。
 それにしても、昨年12月の総選挙で自民党を圧勝させて以来、マスコミのテイタラクは呆れるばかりである。今日は1月の16日であるが、福島原 発関連のニュースも番組も年が明けてからは見たことがない。テレビのワイドショーなどは、韓国や中国のスキャンダルに時間をひたすら費やして放送 時間を埋めているとしか思えない。安倍がマスコミに対してフクシマや放射能汚染関連番組を減らせと言ったとの説が出てからは、番組内容は大きく変 わった。昨年10月の台風23号が日本列島を縦断した日も、福島には台風が行かなかったかのような報道であった。放射能の高濃度汚染水がどれほど 海に放出されたか分からないのに、台風と福島原発の画像はなかった。
 正月三ヶ日後はますますその傾向は酷くなり、この10日ほどは原発という単語すら聞こえてこない。政権与党が衆議院で絶対多数を占めるとは、こ のような事態を招来することだと見抜いてる市民はどれほどいるのであろうか。今年の課題はこのような社会の風潮をどのように打破していくのかだろ う。
 年 の初めに、被災地福島県浜通りからの年賀状に「あれからのフクシマはいろいろと『なかったこと』にされています。復興が進んでうれしい反面、残念 な事が多々あります」と書かれていた。彼は長年の知人で、心をゆるしてくれている人だから、こんなに率直に書いてくれたのであろう。経済さえよく なれば、放射能があろうとこの国は豊かな国だと安倍は言い張っているのである。マスコミを押さえ込むことによって『なかったこと』にするだけでな く、これから新たに分かってくる種々の障害も『ないこと』にし続けるだろう。
 私たちがこのような政治・社会状況に立ち向かう方策はいくつもあると思っている。この40年間、農薬・農業問題を活動課題の一つとして取り組ん できた過程で、その課題の社会化だけで解決できず、その課題を経済化し、政治化しなければならないと思うようになった。そして、新たな生活協同組 合を設立し、政治化・政策化するために地方議員選挙や国政選挙に積極的に関わってもきた。
 あれから20年以上が経過し、「究極の公害」と呼んでいるフクシマに直面する中で、ふたたび「社会化、経済化、政治化」をどのように展開するの かと問われ、この4年間、自問自答の日々を過ごしてきた。結論はふたたび政治化の火中に飛び込まなければと思っている。総選挙の結果とその後の状 況は、なんの力もない筆者のような小市民にも火中に飛び込むことを要求している。
 4月の統一地方選挙では、既成政党ではなく、『フクシマをなかったことにしない』と立候補してくれる人々を当選させるために働こうと思ってい る。各地でそのような志の方々が立ち上がりつつあると聞いている。『フクシマをなかったことにしない』というスローガンこそ新しい社会像を示す呼 びかけであると確信している。
 追記:「ホツパラの日々」という題名のブログをネットに掲載しているのでお読みいただければ幸いである。  



(市民環境研究所代表 石田紀郎)


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