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アソシ研リレーエッセイ:もう笑うしかない話

【その1】先日、知人の訃報が突然届き、葬儀に出席すべく飛行機に乗った時のこと。喪服を着たときにしかはかない黒革のクツを久しぶりにはいて座席に座り、離陸した少しあと、どうも足元に黒い物体がゴロゴロしているのに気付きました。いくら赤字が深刻だからといって、JALは機内清掃も手抜きかい、と内心怒りがわき起こり、よく見てみると、自分のはいている左足のクツのカカト部分がボロボロと崩壊しているではありませんか。床にコロがっていたのは、その破片でした。JALさん見当違いでゴメンナサイ。何故、クツのカカトが崩れ落ちるのか。腐るもんでもないのに。で、クツをぬいでよく見てみると、カカト部分全体がフカフカ、ボロボロ。まさに完全崩壊直前となっていることが判明したのです。床に落ちたピースをくっつけようにも、全体が風前の灯。

左クツを手に、あれこれさわって修復を試みていると、隣の席に坐っていた女性が「いじると、よけいに壊れるんじゃないですか。機内に接着剤がないか、スッチーにたづねてみてはどうでしょうか」と笑いをかみ殺しての御親切なアドバイス。「そうか!」と一瞬救われた気がしたけれど、冷静に考えると、あるはずがないことに気付いた。

結果。飛行機から降りて、空港に迎えに来てくれた若者に、葬儀場へむかう途中、クツ屋さんに寄り道をお願いすることになりました。僕の歩いた後に、黒いクツの破片が点々と残されていたのを、ゆっくり振り返る余裕はありませんでした。なんとかクツ屋さんにたどり着いた時、クツのカカトは完全消失。クツを新調し、葬儀にようやく、おくれずに参列することが出来ました。いつぞやも、我が身に起ったような既視感がつきまとう、笑うしかない事件でした。

【その2】いつから始まったのか、正確にはわからないけれど、能勢農場の前の狭い山道を、午前11時と午後11時の1日2回、大阪府警のパトカーが巡回をしてくれる。昔、昔、まだ若かった頃、パトカーの前に飛び出して、「どういう目的で、この道を毎日巡回しているのか」と警官を問いつめたことがありました。警官曰く。「この上にライフル射撃場があるので、そこを毎日巡回するためです」。けんど、ライフル射撃場はもう10年近く前、別の場所に移転してしまった。だけんど、パトカーの巡回は今も毎日続いている。

で、先日、バッタリ、私の車の前をパトカーが能勢農場へ登っていく道を走っていた。都合良く、シートベルトもしていたので、こりゃー、1回、「どんな目的でこの道、毎日上って、下りてんの」と久しぶりに問うてみてやろう。少し興奮気味に、しっかりパトカーのケツについて、ゆっくり山道を登っていきました。ところが、パトカーさん、突然、その先は民家が一軒あって、行き止まりの道へ左折するではありませんか。不審に思って、ゆっくり、トロトロ走りながら左を見ると、パトカーさんは停車して私の車をやりすごそうとしているようなのです。

車を止めて、「なんで、まっすぐ走らんのかい」と怒鳴ってみようかとも思いましたが、冷静に考えてみると、余計なお世話。こうして、パトカーさんに、巡回の理由をたづねる機会を逃してしまったというわけです。1日2回、来る日も来る日も、一体、何のためにパトカーはやってくるのでしょうか。もう笑うしかない、けれど現実に続いているお話しです。 (津田道夫:研究所代表)


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