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市民環境研究所から


被害地を侮辱し続ける環境大臣


関東は大雨であるが関西は空梅雨で、京都市内を流れる鴨川は乾涸び寸前である。気温の移り変わりも異常で、地球の異変を信じない訳にはいかないような今年である。
 日本の政治は大いに異常であるが、それに対抗しなければならない市民社会がそれ以上に異常である。フクシマを忘れ、サッカーのワールドカップだ けがニュースである。NHKに午前7時のニュース番組を放送せずにサッカー中継をしたので、「7時のニュースはNHKの重要な位置を占めているも のなのに」と抗議の電話を入れたが、苦情担当窓口は「どの番組も大切です」と宣った。まあ、こんな組織になんとか料金を払うことはない。
 そんな社会の風潮の中で、現政府のフクシマ認識を端的に表す事件が発生した。石原伸晃環境大臣が6月16日に、中間貯蔵施設の建設(大熊町と双 葉町)について、官邸で菅官房長官に報告した後、「説明会が終わったから今後の日程について話をした。最後は金目でしょ。(菅氏は)こちらが提示 した(住民への補償の)金額については特に何も言っていなかった」と記者団に語ったという。
  中間貯蔵施設建設では、地元への交付金額や地権者に対する補償額が焦点になるだろうが、石原氏の発言は、政府が地元との交渉を金で解決する事案 だと思っている証左である。筆者はフクシマを「究極の公害」と表現している。それは「家屋敷・田畠山林・墓まで奪い取った公害があっただろうか」 と思っているからである。さすがに、大熊町の渡辺町長は「中間貯蔵施設は住民が先祖代々の土地やお墓を手放すことになるもので、お金だけで解決で きるものではない。それでも必要だからと、協力しようという住民もいる中、その気持ちを踏みにじる軽はずみな発言だ」と述べた。福島に出向きもし ない環境大臣ならではの態度に憤怒である。
 これで思い出すのは、環境庁長官(今の環境大臣)であった彼の父・石原慎太郎が、1977年に、水俣病患者の直訴文に「IQの低い人が書いたよ うな字だ」と言い放ち、さらに、患者さんの中に「偽患者もいる」と発言した事件である。さすがに当時の社会は今よりも健全であったから、厳しく追 及され、4月22日に患者団体と水俣病患者に土下座をして謝罪した。
 環境省はもっとも被害者の立場に立って考えるべき組織であるが、被害地に出向かず、被害者と語らず、中央・東京目線で振る舞うだけの情けない親 子がトップに就き、そしてこの親子を環境行政のトップに置いた自民党政府がこの国を潰していく。被害者を侮蔑する姿勢に憤りを感じ、即刻辞任を要 求しよう。 



(市民環境研究所代表 石田紀郎)


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