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アソシ研リレーエッセイ:暗澹も通り越した今日の日本

「監視カメラ国家」を実感し、唖然とせざるを得ない事例が、北大阪合同労組でもこのところ立て続けに起こった。

@高槻市にある医療機器販売・リース業A社。女性スタッフYさんに対し、仕事を取り上げパワハラを繰り返して退職に追い込もうとしたが、Yさんの組合加入で渋々仕事に復帰させた。ところが今度は、Yさんの業務用車両にGPS付き装置を取り付け、発見されると、「何が悪い」…。

A箕面市にある金属製品製造業N社。事務兼会長秘書をしていたIさんが、経営陣のゴタゴタに巻き込まれ、これも仕事を取り上げられるハメに。自分で仕事を取り上げたくせに、会社はIさんの部屋に監視カメラを取り付け「居眠りをした」「インターネットを見ていた」などと懲戒処分。

B摂津市にある機械メーカーM社。設計の仕事をしていたMさんにある日突然、「事務部門に移るか退職が、どちらかを選べ」。Mさんは有休を取った上で、組合に相談、加入。現職復帰を要求すると、会社は「1ヵ月のブランクがあるので、技能テストをする」と称して、監視カメラ付きの部屋で設計のテストを強要。組合の追及に、「Mさんを監視したのではなく、コンピュータの画面に機密情報が出るので、それが漏洩しないようにするため」と、何とも白々しい言い逃れ。

この三つの事例、いくつか共通点がある。ひとつは「鬱病」。仕事を取り上げられたYさん、Iさんは精神的に追い詰められ、Yさんは「軽い鬱病」と診断され職場復帰するまでにしばらく休養を余儀なくされたし、Iさんは現在、休業して療養中。Mさんも1年ほど前に、過労から「鬱症状」との診断を受けている。監視カメラは、まさに殺伐とした職場環境の象徴なのだ。

もうひとつの共通点は、この三社がいずれも同族会社で、社長が二代目社長だということ。さらに彼らの共通点は、理由もなく自分は偉いから何をしてもいいのだと思い込んでらしいこと、そして従業員は生活を抱えている生身の人間なのだという当たり前のことが全く分からない、と言うかそういう感覚が欠如していること。

大学を卒業してすぐに親の会社(父親が社長、母親が経理というのもこれまた共通)に入り、ゴマすり連中にチヤホヤされてそのまま社長になって…つまり、これまでの人生の中で人のことを考えたり分かったりする必要も体験もなかったのだろうが、こんな連中と交渉していると、怒りを通り越して暗澹たる気分に陥ってしまう。

先日、M社との交渉中に今更ながらのことに思い当たった。そうか、麻生もこいつらと同じ人種なんだ…。中小零細企業はまだしも(無論、労働者にとってはたまったものではないが)、世界でも類稀なほど二世議員がうようよおり、そればかりか二世議員のバカ総理大臣が続いている日本の政治の惨状。これは、暗澹も通り越してもう笑うしかないか。(津林邦夫:北大阪合同労組)


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