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ネパール・タライ平原の村から(37)

もち米を出荷する

 
 世の中、西暦2013年が終わろうとしているらしいのですが、こちら今、グレゴリウス暦2070年プース月。9番目の月の中頃です。当然、僕の周囲 にお正月と言う雰囲気は、どこにもありません。ただし、首都カトマンドゥでは、日本人在住者や海外旅行者が滞在されているので、そこでは異国での格別 な思いでの新年が迎えられます。今年は、その新年に向けて、餅加工業者の方、日本食レストラン1軒、在住者数名に餅米を買っていただきました。これま で農畜産物は、地元消費や祭り出店程度だったので、在ネパール4年目にして初めて、“生産者”という立場を意識したというところです。
 11 月上旬から始まった鎌を使っての稲の刈り獲り。今年もネパール語で“パルマ”(手間換え・労働交換の意味)の関係にある4戸共同で稲刈りから脱穀作業 が続きました。今日は私のこの圃場、明日はあなたの圃場と数日に分け、稲刈りです。作業には各戸から、だいたい同じ時間の長さになるよう人手を出し合 います。僕の場合ですと、43ガッター=約1町4反分、毎回8人程で6回稲刈りに参加したことになります。刈入れやモミ乾燥・脱穀までは、これまで、 地域の人達が続けて来た営みです。そして11月下旬、ここからは「出荷」すること「品質」を特に意識して、これまでの自家消費や地元消費用とは、違う 作業が始まります。
 まず、脱穀後のもち米のモミから、通常の倍、時間をかけて実入りのないモミ・ワラくず・塵を巧みに蓑で煽って、飛ばします。次に乾燥機でモミの水分 率を25%から15%前後に落として水分調整。と言いたいところですがそんな機械はないので3日間、天日で乾燥させます。結果、元々乾田で稔ったもち 米のモミをさらに乾燥させてしまいました。精米所でモミすり・精米したところ、くず米が異常に多く混じってしまいました。精米所や地元の人の話しで は、収穫すぐの米を精米すると水分過多か水分不足でくず米の割合が多くなるとのこと。また、通常は前年の米の残りを消費して、数か月後にその年の新米 を精米するので、数か月貯蔵してある間に、いつのまにか適度な水分になっているという意見も聞かれました。精白後は、精米所にあるふるい機(選別機) にかけ、くず米や小石を取り除きます。ところがこの機械、あまりに利用する人が少ないため、事前に掃除をお願いし、正常に動くか普通の米で試して見ま した。すると予想外に選別がキレイにできたのですが、数日後、米の中から幼虫がウロウロと発生!どうも選別機の中に幼虫の卵が混じってあった様子。部 品を分解して掃除することが考えられますが、そこまですると今度は、正常に機械が動かなくなる可能性も高いので自分達で選別することにしました。
 網目1.8〜2mmの選別機と同じサイズのネットに木枠を取付け、ひたすら手動で米粒をふるって、くず米を下に落とすというプッと笑われそうな方法 を真剣に行ないました。極小粒は、これで除去できたのですがそれでもくず米は、混じった状態。ですがそれ以上の選別は、手間と予定収量に影響するので 行わないことにしました。
 次に変色粒の除去作業。色彩選別機はもちろんありません。虫喰い粒、モミすりが不十分なのが原因なのか?白濁の粒、精米所で混ざってしまう細長い形 状の透明粒(インディカ米)を手作業で取り除きます。
 近所の女性や眼の良い学生に何日も手伝いに来てもらいました。お礼は1時間60ルピー(約60円)もしくは希望により、手に入らないもち米のくず 米。ひたすら変色粒を取り除く作業だけで2週間が経ってしまいました。
 最後は、30kg袋に詰めて量るのですが、今年から精米所に導入された電子計量機がその日に限って外部に持ち出されており、仕方なく天秤量りで計量 し、十分量目を足したつもりが、後日先方から量目にはもう少し余裕を持ってとの連絡を受けました。運搬方法は、2回に分けて地元の自営マイクロバスに 家の前まで来てもらい、先方にはカトマンドゥの到着地にケイタイで連絡を取り合って来てもらいました。また個人で買っていただいた方には年末、カトマ ンドゥに直接持って行き、苦労話しと一緒にお届けさせていただきました。
 ・・・改善すべき点は、ほぼ全工程と認識しておりますが、来年は、他の農家さんにも協力してもらうことにも取り組んでみたい。よつ葉で見たこと、聞 いたこと、考えたことを少し生かしてみたいと思うのです。   
(藤井牧人)

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