タイトル
HOME過去号48号

市民環境研究所から:「農薬餃子」と公害視察の手口

「農薬餃子」と公害視察の手口

寒いわりには降雪がないと思っていたら、今日は本格的に雪が降り出した。雪国育ちにとっては、白い世界になると気分が落ち着く。しかし、灯油の狂乱的値上げはこたえる。カーテンやブラインドを閉め切っていたら、隣の主人が「入院でもしたのか」と心配してくれた。そういう彼も、よく中国に仕事で出かけるから、そんな時はこちらが心配して、帰国するとお互いに元気を確かめ合っている。

彼の仕事は繊維関係で、中国に工場があり、新幹線で東京に行くよりも気楽に関空と中国を往来している。なぜそんなに出かける必要があるのか、訊ねたことがある。通常は日本人社員が常駐しているが、時に不在の期間が生じると、中国人が劣悪な材料を使って別の製品を作り、国内向けか発展途上国向けの安物を生産してしまうという。万が一、そのような製品が日本向け商品に混入してしまったら、一気に信用を失ってしまうから、目が離せないらしい。

連日の「農薬餃子」関連ニュースを聞きながら、この話を思い出した。そこで、輸入元のJTが中国の製造会社に丸投げして、生産過程へ関与していなかったのではなかろうか、と疑った。問題発生後、中国と日本の政府関係者が当該の製造工場を視察したニュース映像を見て驚いた。問題発生後は製造を停止しており、係官は餃子やその原料もない製造工程を見回って、実によく管理された工場であり、製造工程で農薬が混入することはないとのコメントを発表した。実にばかばかしい。人が働き、ものが流れている行程を観なければ、なんの意味もない。公害問題の現場で、被害住民の訴えを却下するためによくやられた手法である。

視察団が帰ると、通常の製造工程が再開され、たとえば精錬工場なら溶鉱炉の蓋を開けて、ものを取り出し始める。そうなれば工場からは有害物質を含んだ排煙ガスが地域に流れ出していくが、数週間あとには「問題なし」とのレポートが発表される。そんな手口である。

今回はどんな手口の一環として、なにもない工場視察を位置づけるのだろうか。と思うと、もちろんこれは筆者の妄想でしかないが、けしからん狂信的反動分子による日中関係破壊テロで、ひょっとして、中国人の誰かをでっち上げ逮捕して終わるのでは、と心配になってきた。

猛毒のメタミドホスは日本では農薬として製造されていないから入手しがたい。確かにそうだが、だからと言って、日本での汚染を否定することにはならない。中国で入手して日本に持ち帰るなど、容易いことである。まして、第2の毒物は日本にもあるものだから、中国の工場が混入場所と言い切れないのでは、と思う。

たしかに、中国の農薬使用と管理の現状は1970年代までの日本の状態だから、中国での混入でないかと疑わざるを得ないだろうが、ことの真相を時間をかけてでも追求してほしいものである。(石田紀郎)


200×40バナー
©2002 地域・アソシエーション研究所 All rights reserved.