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市民環境研究所から:「アラルの森プロジェクト」にご協力を!

もうすぐ大型連休の始まりである。現在勤務している京都学園大学は連休の間の勤務日も特別休日となるから、海外調査を業としている身には実にありがたい。そこで、中央アジア・カザフスタン共和国のアラル海にまで出かけることにした。これで60回近くのカザフ行きだから、特別の緊張もなく、出張中不在の「お詫び」を各所に送るくらいである。カザフの季節は日本よりは少々気温が低い程度だが、夜間はずいぶんと低温になるから、ダウンジャケットは手放せない。

今回の調査行は、一昨年と昨年の秋に植林した苗木の活着成長具合を測定することと、今年の植林計画地域を決めることである。地球環境基金の助成を受けて始めたこの植林事業も、3年目(たぶん助成最終年度)に入った。1年目は人口500人ほどのカラテレン村に近接した沙漠の中で、2年目は村から40キロほど離れた、1990年代に干上がった旧湖底沙漠でサクサウールという潅木の苗木を植栽した。村の近くでは家畜の食害を防ぐ防御柵を作ったため、予想以上の経費を要した。翌年は人も家畜もまず来ることはない遠隔地を選定し、塩分含有量の多い旧湖底での挑戦である。

見渡す限り平らな旧湖底沙漠が広がり、数百メートルもの間隔で2〜3メートルほどの直径で植物が生えているが、それ以外にはなにも見えない。去年の11月初旬に2000本ほどの苗木を植えたが、半年後の春には新芽を出していてくれるだろうと期待しての出発である。5日目にこの地点に到着する。1年目の活着率が55.5%と予想以上に高かったから、2年目のものもせめて30%は越えて欲しいと願っている。これからも細々であっても植林を継続し、旧湖底沙漠への植物の侵入を手助けしたいと思っている。

ただし、課題は資金の獲得だ。今年も三井物産などの助成金の獲得に失敗した。どこかの助成金が得られるまで、どうして繋いで行くかが今後の問題である。そこで、個人や法人からの植林寄金の募集を開始した。助成団体からの資金が切れても植林が継続でき、実績を示しながら次の助成金を獲得する努力をしなければ、と考えてのことである。題して「アラルの森プロジェクト」。10本の苗木の植林費用として1口3000円をお願いするものだ。責任団体は当研究所。寄金募集のリーフレットの印刷を終え、知人友人に順次発送している。本コラムの読者でご協力いただける方があれば、下記の宛先に資料請求をお願いしたい。

もちろん、このような小規模の植林事業で広大な大アラル海旧湖底の全域を対象にできないが、手法の開発も含め、植林の実現性を呈示することによって、大組織や、多種多様な団体の参入を促せたらと願っている。荒れ地や砂漠地にまず最初に入ってくる植物をパイオニア・プラントと言うそうだから、当プロジェクトは20世紀最大の環境改変に立ち向かうパイオニア・プロジェクトであり続けたい。(石田紀郎)


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