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 ここでは、素人意見ではありますが、シンガーソングライターの沢田聖子さんについて述べたいと思います。

1981年12月発売のライブアルバムのジャケットです
1981年12月発売のライブアルバムのジャケットです

 私の中では沢田聖子さんと石川優子さんは少しイメージが重なる部分があります。
それは、ふたりとも活動を開始した時期が同じであること、デビュー当初はシンガーソングライターというよりややアイドル的な見方をされていたこと、残念ながらいま一つメジャーな人気を博するまでには至らなかったこと、仕事柄お二人はお互い面識があったらしく、石川優子さんのファイナルコンサートのパンフレットに(多くの石川優子ファンとともに)沢田聖子さんも応援メッセージを寄せてくれていること、などの共通点があるからです。
 そのような思い入れがあるため、本論の(比較対象としての)”その他の女性シンガーソングライター”の項目に追加せず、別に稿を立ててみました。

 沢田聖子さんは、石川優子さんと同じ年にデビューした女性シンガーソングライターです。
 私は当時、石川優子さんのファンになっていたので、名前は知っていましたが沢田聖子さんについては余り興味が湧かず、曲を聞いてみようと思うところまで行きませんでした。ただ、当時、私より広く音楽を聴いている友人がおり、その友人は沢田聖子さんの曲も結構聞いていたようです。
 ですので、私には、当時、妹的な魅力を前面に出して半分アイドル的な売り出し方をされていたアーティスト、という印象しか残っておりません。
 
 このたび、「石川優子さんはとうの昔に引退されてしまったが、そういえば当時活動されていた沢田聖子さんは今頃どうされているのだろう」と、ふと思い出し、ネットで検索してみました。
 すると、デビューから36年、53歳になった今でもCDを出し公演活動も精力的にこなされるなど、いまだに現役で活動されていることを知り、驚きました。
 なぜなら、もうお歳もお歳なので、さすがに石川優子さんのように引退されているか、他のアーティストに楽曲を提供するなどの裏方的な活動を細々とされているのではないか、と想像していたからです。
 一口で36年と言いますが、これだけ長期間にわたりシンガーソングライターとして息長く活動するのは、身体的にも精神的にも容易なことではありません。
 自分の予想がいい意味で大きく裏切られたわけで、大げさにいえば、軽いカルチャーショックを受けました。
 「継続は力なり」。かなり音楽を愛する方であり、粘り強い性格の方のようです。

 そこで、改めて沢田聖子さんの曲をベスト盤を中心に聞いてみました。また、地方営業が中心ではありますが、沢田さんは今も公演活動をされている現役なので、「実際に生歌を聞かねば」と思い、ライブにもいってきました。

 ① 現在の沢田さんについてですが、発声の衰えは余り感じられません。若い頃とそう変わりないような感じでした。御年53にしてはすごい、と思いました。(お顔のほうは、若い頃より少しお変わりになりましたが)
 客層としては私と同年代の方が8割を占めていました。お客さんの雰囲気から感じたことは、沢田さんも、石川優子さんと同じく、昔ながらの熱心なファンがいるということです。
 曲間のトークですが、今の心境や近況、曲の背景やいきさつなどをユーモアを交えながら語っておられました。
 ただ、沢田さんの場合は、どっちかというとブラックユーモア系であり、毒舌系です。イメージでいうと、綾小路きみまろ風でした。お年のせいというより、もともとこの方はこういう性格なのだと思いました。

② 音楽のことから少し離れますが、キャラクター的にも地味な感じを受けます。映像を見てもライブも見に行っても、ほとんど化粧はされていませんし、服装も華美で派手なものは着られません。
 石川優子さんも芸能人としては庶民的で素朴な雰囲気の方だと思っていましたが、沢田さんはさらに素朴で地味です。沢田さんに比べれば、石川優子さんの方が、はるかに色っぽく艶っぽく華やかに感じられるから不思議でした。

③ 歌唱力は、悪くはありませんが、今ひとつです。音域の広さ、表現力など石川優子さんの方がはるかに洗練されています。また、沢田さんの場合は、スタジオ録音よりライブでの歌唱の方が上手に聞こえます。なぜでしょう?
 
④ 沢田さんのアドバンテージの一つは、ピアノ、ギターの弾き語りができるということです。ライブ映像を見ても、素人目に見てですが、ピアノの腕は相当なものだと思います。
 ギターの方ですが、真剣に練習を始めたのは1999年以降だと、ライブで語っておられました。ライブ映像を見ても、実際にライブで見ても、ギターは飾りではなく、主としてリズムを刻む役割が多いようですが、きちんと弾いておられます。
 実際やってみるとわかりますが、楽器を演奏しながら歌うというのは中々難しいものです。楽器に集中すると歌がおろそかになり、歌唱に集中すると楽器演奏をついおろそかになったりするものです。ピアノは小さい頃からされていたようですが、ギターについてはかなり努力されたのではないか、と感じました。

⑤ 石川優子さんの場合は、曲のジャンルというか傾向に一定の方向性がなく統一感がありませんでしたが、沢田さんの場合は基本的にフォークあるいはフォーク調です。
 アレンジもあっさり目です。過剰な装飾はつけず、楽器の種類も弦楽器を中心に最小限に抑え、アコースティックな音を好んで使われることが多いように感じました。

⑥ 曲調としては、石川優子さんの場合は女性の情念を感じさせるドロドロ感がややありましたが、沢田さんの場合はそのような感じは見られません。感情をストレートに表に出してくる傾向はなく、その点についてはあっさりしています。
 ただ、曲調もとにかく沢田さんは地味で、石川優子さんの曲の方が艶っぽさ華やかさがあります。

⑦ 作詞能力は沢田さんの方が上ではないか、と思いました。
 詞のテーマとしては、石川優子さんの場合は基本的にラブソングですが、沢田さんの場合は、青春の悩み、友情、愛情、人生の悲しみや喜びなどであり、それらをストーリー性のある叙事詩的な詞で表現されます。大げさにいえば哲学的であり内省的であり、やや重い感じを受けます。
 また、それゆえに優等生的であり教科書的なきらいがあります。もう少し俗っぽさがあった方がいいかもしれない、と思いました。
 石川優子さんでも、エロティシズムを感じさせるような詞が散見されます。

 以上、素人目に見た、沢田さんの曲についての感想を述べてきました。とにかく沢田さんのように、息長く地道に活動してくれているアーティストは、70年代は若者だった私のような者にとっては大変貴重な存在であり、今後ともなるべく長く活動してもらいたいと思っています。
 最後にライブでの沢田さんのコメントを記して終わりたいと思います。

「1人でも私の歌を聞いてくれる人がいるのならば、私の歌をいつまでも届けてゆきたいと思う。それが私の果てなき夢である・・・」(文責 筆者)

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