一言妄想劇場


rinker





「ゲーヘン」

行くわよ。あんたもよ。


「キス」

目標は百万回。


「第二関節」

あんたがスカートの中に頭を突っ込んでいる間、あたしはずっと指を噛んでいた。


「恋」

してる暇なんてないはずなのに、はまり込んで抜け出せないのは誰の罪?


「世界」

きみはぼくの。


「プール」

泳げないと伝えた次の日きみは浮き袋を三つ買ってきた。


「日焼け跡」

抱きついててごめんね。


「お揃い」

もういっそ同じ日に死にましょ?


「またんき」

こぽんち、たちんぽ?


「サイズ」

愛情サイズ、二割増し。


「赤」

恥ずかしがらずにこっち見て。


「音楽」

音痴なところがたまらない、と思っていることは内緒だ。


「いやーんな感じ」

本望だッ!


「約束」

約束なんていらない。


「SDAT」

イヤホンのRを貸して?


「真剣勝負」

審判はお月さま。


「カレー」

今夜は二人でサバイバル。


「運命」

ただ好きなんだ。それだけなんだ。


「紫」

どっちつかずなんて許さない。


「肩甲骨」

何度でもあんたの翼に爪を立てる。


「おっぱい」

赤ちゃんが産まれるまでは貸してあげる。


「ベッド」

狭いほうがいい、と触れ合う足先が言った。


「SEX」

あたしは女、あんたは男。


「キス2」

だんだん巧くなるあんたが憎い。


「同居」

建前を隠れ蓑にしていることはお互いに承知の上でしょ?


「下着」

あたしだって恥じらいがないわけじゃないの。


「照準」

獲物はたった一人だけ、あたしは全人生を弾に込めて引き金を引いた。


「チェロ」

他の女を抱き締めているようで嫉妬していると知ったら、あんたはきっと笑うわね。


「お弁当」

いつだって感謝してるのよ。その証拠に残さないでしょ?


「母」

いつかはきみも母になれる、とあんたは言った。


「脚」

ぼくを釘づけにしていることを知りながら今日もきみは闊歩する。


「シャンプー」

時々あんたのを使っていることはあたしの秘密。


「神」

あなたが何者だろうとぼくたちを否定させやしない。


「指先」

長く繊細なあんたの指先はあたしの身体を楽器にする。


「青」

いいわけはしないわ。譲りもしない。


「星空」

あたしたちのきらめきもいつかきっとあの星々のもとに届くでしょう。


「歩く」

上を向いてばかりじゃこけちゃうから、たまには立ち止まって下も見よう。


「友情」

視線が絡み合うそのたび虚勢が剥がれ落ちていく。


「酒」

あなたと一緒に呑むのがぼくたちの夢でした。


「馬鹿」

ありったけの甘い声で。


「キス3」

唇が擦り切れてもやめないで。


「ドイツ」

ばーむくーへん。


「ハンバーグ」

好きだってきみが言うから、失敗作で胸焼け中。


「呼び捨て」

その意味をあんた分かってるの?


「お尻」

時々無性に触りたくなるの。


「ナイフ」

お互いに傷つけずにはいられないぼくらはそれでも。


「日本」

虹の橋を渡って。


「マニキュア」

乾くまでわがままいくつ言えるかな。


「視線」

痛いほど意識しながらあたしはわざと視線を逸らす。


「水着」

きみの好みはぼくを不機嫌にさせ、ぼくの好みはきみを不機嫌にさせる。


「日焼け跡2」

ぼくだけの白い特権。


「雨」

いつも傘を忘れてしまうあたしと、いつもあたしが入るスペースを空けて待っているあんた。


「膝枕」

太もも枕だよねこれ、と見上げるとなぜかきみは赤くなった。


「腕枕」

朝になって難しい顔で肩を回しているあんたの優しさを枕にする。


「ペンギン」

クワックワッ? クキュークルクル。


「好き」

目一杯に息を吸い込んで、足は肩幅、手は腰に。


「夕焼け」

赤い顔を隠してくれるから夕暮れ時はキスの時間。


「海水浴」

クラゲを見つけてはしゃぐきみの笑顔が好き。


「目覚まし時計」

どうして必ずぼくが起こすまでベッドを出ないの?


「コーヒー」

見栄を張って苦いのを我慢するところが好きよ。


「悲しみ」

それでも今は一人じゃないと知っているから。


「テレビ」

番組が楽しいんじゃないの。一緒に観るのが楽しいの。


「パンツ」

きみとぼくのパンツが仲良く風に揺れている。


「まつ毛」

あたしより長いだなんて許せない。


「エッチ」

エッチバカチカンヘンタイ!


「猫」

きみが猫みたいに鳴くのを知るのはぼくだけ。


「抱っこ」

軽々と抱え上げられるなんて、生意気。


「壁」

その背後で息を凝らして打ち壊されるのを待っていた。


「背丈」

いつ追い越されたのか、あたしはちゃんと知ってるわよ。


「走る」

もっと速く、届け、届け!


「結婚」

あなたたちの結婚はしあわせでしたか?


「涙」

雨粒に天を仰ぎ。


「おんぶ」

折れたヒールにちょっと感謝。


「瞳」

まるで湖のような。


「退屈」

構って欲しいなんて一言も言ってないわ。


「父」

たった一言のいいわけでもしてくれたなら、ぼくは騙されたふりをしたのに。


「背中」

いつの間にかこんなに広くなってるなんてずるい。


「笑顔」

きみの一番綺麗な顔。


「手」

もう二度と離さないで。


「星くず」

ぼくたちの身体は星くずでできている。


「愛」

あたしの目を見て。


「砂浜」

永遠に続く砂浜なんてない。


「人間」

手を繋いで歩いてゆこう。









あとがき

 最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございました。

 しょっぱなから一言じゃないという「一言妄想劇場」でしたが、最小限の言葉だけからでもお好きなシチュエーションや物語を妄想頂ければ幸いです。でも、 他人の見ている前でにやに やするのはやめましょう。
 こんなものだけでは物足りないと仰る方には申し訳ありません。
 せめて絵でも付いていればイメージしやすくて少しは楽しめるかもしれません。どなたか描いて下さい。
 そんな冗談はともかくとして、結局いくつ書いたのか数えてないので自分でも分かりませんが、発想の貧困さに我ながら失望しています。
 だから、おまけとして「プロポーズ」というお話も一緒に書きました。
 そもそも「一言妄想劇場」のおまけですので、ほとんど書き殴りでお話の体をなしていないことはお恥ずかしい限りですが、よろしければそちらも軽く読み流 して頂け たらと思います。

 それでは改めまして、怪作様、お読み下さった皆様にお礼申し上げます。
 ありがとうございました。

 rinker/リンカ




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