一万二千年後の覚書

by リンカ

   5.遭遇

ホバートレーラーが東へ向けて走っている。
向かう先はクジェールと言う都市だ。
運転席にタルクが、そして助手席にシンジが座り、シンジの膝の上にシリンが乗っていた。
今日はタルクとシンジが再会してから2日目だ。
再会の後、タルクの誘いによってシンジとシリンはトレーラーに乗り込み、
そして、その日の宿泊先の町に着くまでの数時間ずっと眠り込んでいた。
宿を見つけ部屋を取った後、食事や入浴を済ませて、タルクに背の傷の治療をしてもらい、
また早々にベッドに入って寝入った。
タルクはその様子を見て、余程疲労が溜まっていたのかと思い、
あの惨劇の後、森を徒歩で抜けてくればそれも無理は無いかと考え直した。
タルクが不思議に思ったのはシンジが武器を持っていたことだ。
村ではそんなものを持つことは当然無いので、どこで手に入れたのか、
背の傷や服の血痕からして森の獣と何かあったようだが、といぶかしんだ。
明日にでも話してくれるだろうかとその日は彼も眠りについた。
2日目はシンジも助手席で眠ることは無く、ただ口数は少なく何かに悩んでいる様子だった。
タルクは道中で生き残った村人達の話をした。
彼らはシンジが立ち去った後、駆け付けた院の世話になることになった。
といっても院で生活する訳ではなく、院が何処か新天地で生活する為の面倒をみてくれると言うことで、
タルクは1人、シンジの動かした機動兵器と共に、シンジを追い掛けることにしたのだ。
シンジは村人達の今後を聞いて、幾分安堵した様子だった。
しかしやはりシンジは沈んだ様子で車窓に流れる景色を何となしに眺めている。
シリンが尾で膝に置かれたシンジの手を擽ると、シンジはぼんやりとそれに指を絡めて応えていた。
その様子を横目で見て、タルクは彼に声を掛けた。
「シンジ君、大丈夫ですか?気分が悪かったりしたら言って下さいよ」
それにシンジはタルクの方を振り向き、首を緩く振って答えた。
「大丈夫だよ、先生。ちょっと考え事をしていただけだから」
「・・・村の人達は心配要りませんよ」
「うん・・・ごめん、先生。僕は・・・」
「謝ることなどありませんよ。あれは君の所為では無い。君が立ち去ったのにも理由があったのでしょう。
気に病みすぎると体に毒ですよ」
「うん・・・」
シンジは頷いて再び外の景色を眺める。
「それと・・・言いにくいのですが・・・マリエル様が酷くお嘆きでした」
「ああ・・・あの人にもお別れを言えなかったな。怒ってるかなぁ」
「・・・それだけですか?」
「?・・・勿論マリエル様にも感謝してるよ。あの人にも随分親切にしてもらった。
僕みたいな記憶の無い余所者の相手を良くしてくれて。ねえ、シリン。良い方だったね。
・・・随分と不義理をしてしまったんだね、僕は」
シリンの背を撫でシンジがそう言うと、彼女はにゃーん、と鳴き、彼の顔を見上げた。
それを見てシンジは彼女を持ち上げて鼻で彼女の顔を擦り、
気にするな、とでも言うようにシリンは右前足をシンジの額にトンと置いた。
「(・・・あの方の想いはまるで通じてなかったようですね。あの方もお可哀想に)」
別人の様に憔悴したマリエルを見たタルクとしては複雑な思いだったが、
こればかりは当人同士の気持ちなので、責める訳にもいかない。
軽く咳払いをして、タルクは気になっていたことを問い掛けた。
「ところで、そのソードはどうしたんですか。森で獣に襲われたようですが」
「ああ、これは・・・貰ったんだ。森で会った人に」
「森で会った?・・・その人がそれを持っていたんですか?」
「うん、まあ・・・」
何となく言いにくそうなシンジにタルクは疑問に思う。
シンジが余り話したくないのは当然のことだ。アスカは村を戦場にした軍に所属する人間なのだ。
「・・・まあ、無事で良かったですよ。普段はそんなに襲って来るようなことはないんですがね。
でも何に襲われたんですか?」
「・・・ガルドーク」
「!良くあの背の傷だけで済みましたね。並の相手では無い」
「ん・・・まあ、ね」
ガルドークが襲ってきたのは、恐らくアスカの所為だ。
彼女の機体が森に墜落したことで気が立っていたのだろう。
彼らには惨い真似をしてしまった、とシンジは思った。
「その方はどうしたんですか?私が来た時はいませんでしたが」
「森を出た所で別れたよ。反対方向に行った」
「そうですか・・・」


そして暫くの間、ポツポツと会話をしながら、クジェールへと旅は続く。
「後3時間と言った所ですね。そこらに停めて休憩しましょうか。お腹も空きましたし」
「そうだね、先生。じゃ、あの辺りが良いんじゃないかな」
そうしてトレーラーは道から外れて停車し、彼らは町で買った昼食を持って車を降りた。
「ああ、体が強張りましたねぇ。こんなに長時間のドライブは久し振りですよ」
タルクが伸びをしながら笑って言う。
「先生、この後運転変わろうか?」
シンジも体を解しながらタルクに言うと、彼はそうしてもらおうかなぁと言いながら地面に座り込んだ。
シンジも隣に座り、昼食を始めた。


昼食も終わろうかと言う頃、道路を何台もの軍用の輸送車が通り過ぎていく。
「・・・ヒュルデ」
「物騒ですね。しかもこんな堂々と。何とも物々しい」
シンジとタルクが眉を顰めてそれを見詰める。
にゃあ、とシリンがシンジに向かって鳴いた。
「タルク先生・・・僕達大丈夫かな」
それにタルクはハッとしてシンジに振り向く。
「いや・・・あの戦闘では彼らは全滅でした。あの機体のことも貴方のことも分かりませんよ」
「そうかな・・・」
「しかし・・・検問が敷かれることは十分有り得る。迂闊でしたね」
彼らが不安を滲ませながら話していると、シリンが毛を逆立て道の彼方を睨んだ。
その様子にシンジがそちらを見ると、軍輸送車の列が止まっている。
「奴等停まりましたね・・・。これはひょっとして・・・」
「拙いかも・・・」
タルクとシンジが顔を見合わせた。
そしてトレーラーに飛び込むように乗り込んだ。
「来た道を戻ります!怪しまれない様に普通に!」
「もう遅いかもよ、タルク先生!」
タルクがエンジンを始動させ、トレーラーを普通の速度で道に戻す。通ってきたのとは反対車線だ。
シンジがミラーで後方を見ながら叫んだが、だからと言ってどうしようもない。
そのまま道を走らせる。
「・・・連中コンテナを開いてる!・・・!!先生、あれ!」
シンジの悲鳴にタルクもミラーで確認した。
「・・・機動兵器!2、3、・・・5、何てことだ!飛ばしますよ!!」
一杯にアクセルを踏み込んでトレーラーを飛ばす。
グングンと速度が上がっていくが、機動兵器部隊も追って来る。
村での戦闘がどうであれ、所属不明の機体など見つかれば見逃してくれる訳が無い。
「駄目だ!奴等の方が速い!」
「もうこれ以上は出ませんよ!!」
2人の叫びにシリンが高く鳴いた。
「・・・僕がアレで出る。先生、コンテナ開いて!」
シンジがコンテナに繋がっている座席の後ろの扉を開いて、コンテナの中に入っていく。
シリンがスルリと彼の肩に乗った。
「シンジ君!・・・仕方ない!」
コンテナが開かれ、シンジの機体が飛び出した。トレーラーはそのまま走り去る。
ヒュルデ部隊が迫ってくるのをシンジとシリンは睨んでいた。


対峙するシンジの機体とヒュルデ部隊。
「人型が3機。スカイタンクが2機・・・」
シンジが呟く。
ヒュルデ部隊がオープンバンドで通信してきた。
「貴様何者だ。その機体は何だ。何処の登録にも無いぞ。・・・何故起動させた」
シンジの頬に汗が伝う。
「・・・5秒以内に機関を停止させろ。さもなければ破壊する」
「・・・どうせ見逃してはくれないんでしょう」
シンジが皮肉げに答えた。
恐らく完全に破壊する気は無い。この機体を調べたい筈だ。シンジはそう判断した。
「・・・5秒だ。覚悟しろ」
「勿論」
シンジは通信を切った。
シリンがシンジの肩で気遣わしげに声を出す。
「大丈夫、シンジ?」
「ふふ、ありがとう、シリン。・・・殺したくはない。何とか戦力を奪うだけに・・・」
「言った筈よ。貴方の心のままに」
シンジが彼女の言葉に微かに微笑む。
そしてスカイタンクのキャノンが火を吹いた。


30分後。
シンジの機体が悠然と立ち、周りには機関が停止した兵器が佇んでいた。
「何とか・・・なったね」
シンジが周りを見廻して溜息と共に呟いた。
「そうね。でもこれで私達のことがバレたわね。勿論顔は割れてないけど」
シンジと彼らとの通信は音声だけでやり取りされた。
「うん・・・。どの道この国は出るつもりだったんだ。ちょっと国境の壁が厚くなったけど」
シンジがシリンを撫でながらそう言う。
クジェールは国境付近の街だ。そこから東隣の国へ抜けるつもりだったのだが、それが難しくなってきた。
クジェールへ向かっていたのは知られている。当然国境付近はヒュルデ軍の配備がなされるだろう。
しかもシンジ達と関わり無く、それ自体がこの国の問題を引き起こす可能性がある。
ここから国境までに再び襲われる可能性もある。
「困ったな」
「・・・取り敢えず、タルクを探しましょう。このままこれに乗って突っ走っても良いけど、ね」
「そうだね。先生大丈夫かなぁ」
「大丈夫でしょ。脱兎の如く逃げて行ったから」
シリンがツンと背筋を伸ばし、尻尾の先をヒラヒラさせた。


シンジ達が現在居る国は多くの州からなる連邦国家で、その内の幾つかの州が現在衝突しており、
国は半分裂状態にある。元々州の強い、緩い連邦だったのだが。
もうかなり長い期間に渡っており、数度の大規模な衝突と、停戦と、数多くの小競り合いを繰り返してきた。
その衝突している州のひとつがヒュルデであり、そしてアスカの居る州もそうだ。
シンジの居た村や院のあった州は中立を保っており、前の戦闘はその中立州に割り込んで発生した。
クジェールはこの中立州の東端の都市で、そして国境地帯でもある。
そこから国を出ようとしていたのだが、まさか堂々この州で軍を動かすとは思っていなかった。
アスカはこの中立州の西隣に位置する自分の州に帰って行った。
アスカの州はここまで強引ではないが、北に面したヒュルデは近年過激さを増しており、
国内で孤立と批判が高まっていた。
連邦政府としては小競り合いの段階で何とか国全体を巻き込まず事態を収めようとしていたが、
それももはや無駄となりつつある。
このままでは大規模な内戦がこの国を蹂躙するのも時間の問題だった。


シンジはそれまで通って来た道を引き返し、道の脇の森の陰に停まったタルクのトレーラーを発見した。
シンジが外部スピーカーを通して話し掛ける。
「タルク先生、無事だった?」
その声にタルクは手を振って、コンテナを開いた。
再び座席に入ったシンジはタルクに状況を説明する。
「・・・このままこの州の東の国境を抜けるのは無理ですね」
「うん・・・ねぇ、タルク先生。先生はもう戻った方が良いよ」
シンジが心配げに彼に言ったが、彼は苦笑して頭を振る。
「ここで君を放っては行けませんよ。・・・スルタフに入って、そのまま西に抜けるのはどうです?」
スルタフとはこの州の北西に隣接し、ヒュルデとアスカの州に挟まれている。
確かに現在地からは最も近い州境だが、場所が悪すぎる。
タルクは知らないが、村でヒュルデと戦闘した州はそのアスカの州なのだ。
「・・・南に行こう。ウィッシュから海を廻って東に行って国境を越える」
「遠いですね・・・」
タルクが顎に片手をやって考え込むが、すぐに首を振ってシンジに言った。
「それが一番ですかね。・・・でもどうして東に拘るんですか?」
シンジはその言葉に、シリンの背を撫でて東の彼方の空を見詰めた。
「いつか帰る日の為、かな・・・」
タルクは目を丸くしてシンジを見た。
「貴方まさか・・・」
シリンがにゃ〜ん、と鳴いてシンジの肩に飛び乗り、顔を押し付けた。
「・・・とにかく行きましょう。奴等に出くわさないことを祈りながらね」
再びトレーラーは走り出した。今度は南を目指して。



次の日の早朝。
幸運にもヒュルデ軍と出くわすこと無く、そして揉め事に巻き込まれることも無く、
シンジ達は2つ南の州のウィッシュへと入った。
交代で運転を続け、漸くここまで辿りついたシンジ達は安堵する。
まだ気を抜くことは出来ないが、少なくともヒュルデの脅威からは遠ざかった。
タルクが運転しながらシンジに話し掛ける。
「運が良かったですね。ここも中立州ですし、国境のゴタゴタも今の所クジェール周辺に留まってます。
街に入ったら休みましょうか」
「そうだね。急ぎたいけど、少しは休憩しないとね」
「後1時間くらいで大きな街に着きます。大都市なら隠れやすいですしね」
そのままトレーラーは走る。
ふとシンジが声を上げた。
「あれ、先生。あれは・・・」
「えっ?」
シンジは森の中にチラリと何かが見えた気がした。
「ううん、何でも・・・先生!」
シンジが大声を上げる。
突如トレーラーの目の前に機動兵器が飛び出してきて、立ち塞がった。
タルクはトレーラーを急停止させる。
「何処の軍だ?まさかこの州の・・・」
「いえ・・・あれ軍属じゃないですよ・・・」
シンジは念の為コンテナの方に向かって何時でも起動できるようにする。
声が響いた。
「ちょいと待ちぃ。お前等何モンや。その中身見させてもらおか」
タルクが運転席の通信機を入れて、呼び掛けた。
「待って下さい。私達は只の民間人です。ここを通り抜けようとしていただけです」
「ほほぉん。只の民間人が大型機運搬用のトレーラー乗り回すんかい。
偉い豪勢なドライブやないか。ほんならこれもドライブの余興や。さっさと開きぃ。
早よせんと無理に抉じ開けるで?」
立ち塞がった機動兵器のパイロットが無茶を言う。
「そんな無茶な・・・大体貴方は軍ではないでしょう。貴方こそ何者です」
「やかましわ、こんドアホ!お前等どうせ州軍の回しモンやろ。お前等放っとく訳にはいかんのや!」
興奮してきたのか大声で喚く男に、シンジは堪らず機体を起動させた。
「先生、開けて」
「しかし・・・」
「このままだと潰されちゃうよ」
「仕方ないですね」
タルクがコンテナを開け、シンジの機体が降り立った。
謎の男はそれを見て、通信を掛けてくる。
「カッ!開き直りおったかいな。・・・見たこと無い機体やな。益々放っとけん。おい、お前、何モンや」
「僕達は本当に只の民間人だよ。これは僕の私物だ。別に君に危害を加えるつもりは無いし、
州の者なんかじゃない。だから、もう通してくれないかな」
「ほおほお、私物、やと。そらまた大したモンやな。ってそんなん信じられるかい!
大方新型機を軍に搬送する途中ってとこか。わざわざ偽装して・・・秘密機か?」
「だから違うって言ってるじゃないか」
「どや。それ置いてったら見逃したるで。さもなけりゃ、わいがぶちのめして頂いていくがのぉ」
「本当に違うんだ!僕は戦う気も無い!」
「ケッ、さよか。ほなら後で後悔するなや!」
シンジの言い分を全く聞かず、そう言い捨てて謎の男の通信は切れた。
男の機体は戦闘態勢に入っている。
シンジの肩に乗ったシリンが苛立たしげに口を開いた。
「品性の欠片も無いわね。勝手に言い掛かりつけて、只の盗賊かしら。
この無礼者に比べたら前の小娘が天使に思えてくるわ。
でも・・・こんな所で戦闘するつもりなのかしら、あの男?」
「確かに・・・山の中だけど、すぐ麓は街だ。ちょっとやり難いな。州軍が駆け付けかねない」
「・・・長引くと厄介だわ。一発で破壊しちゃいなさいな」
「そんな簡単に・・・うわっ!」
シンジが慌てて男の攻撃をかわした。
手刀で機体の間接部を狙ってきたのだが、シンジは巧みにかわして距離を取る。
男の機体は重装備はしていないようだ。
人型の兵器は格闘と言う戦闘方法を取ることが出来るので割に身軽なことが多い。
シンジは肩に内蔵されたブラスターを放ったが、男の機体はそれをかわし、
体当たりを掛けて来た。しかし、シンジもそれを避ける。
そのまま機体を翻らせて男に蹴りを放つが、男の機体は手にしたロッドでそれを受け止めた。
シンジは飛び退ってガトリングを撃ち出す。
幾らか命中したようだが大してダメージも与えていない様子で、
男はロッドからエネルギー弾を飛ばしてきた。
「わっ!?・・・とと、危ないなぁ。あれ飛び道具だったのか。てっきり殴る為のものかと思ったよ」
「もうシンジッたら!暢気に言ってる場合じゃないわよ!」
シリンが叫ぶ。
男の機体が猛然とシンジの機体に突進してきた。
「・・・ああもうっ!こんなことしてる場合じゃ・・」
シンジが男の機体を返り撃とうと構えた所で、不意に通信が入った。
「反乱軍機、所属不明機。両機とも直ちに戦闘を止めて機関を停止させなさい」
ウィッシュ州軍だ。
「くそ!やっぱり来た!」
「うわやば!もう来よったんかいな!こんな時だけ仕事しよってからに!」
シンジと男の機体は動きを停止する。
州軍機は銃を構えて再度警告した。
「戦闘を中止して機関を停止しなさい。さもなければ公務執行妨害と見なして拘束します。
10秒以内に機関停止しなさい。特に反乱軍機」
「カッ!偉そうに・・・何でわい等がこんなことしとんのか、良う考えてみい」
その男の言葉を聞いて、州軍機はシンジに対する通信を切り、謎の男にだけ呼び掛けた。
「ドルシェ大尉。お願いします。貴方を拘束したくはありません。貴方と闘り合いたくはないのです。
ここは引いて下さい」
「何や、わいのこと知っとんかいな。お前何処の隊や」
「以前74機動大隊におりました」
「ほうか。せやけど、引くことは出来んのぉ。・・・わい等の戦いからはの。ま、今回は・・」
そう男が言いかけた所で閃光が炸裂した。
咄嗟にシンジは機体を飛び退かせて防御する。
衝撃が収まったときには、今までいなかった機体が州軍機と男の機体の間に立っていた。
「引け。それとも俺と闘り合うか?」
新たな機体の男がそう言うと、州軍機は去って行った。
「大将・・・」
「この馬鹿が・・・。そこの機体。俺の部下が失礼した。単機で州軍に目を付けられると厄介だろう。
俺達のアジトに案内する。向こうのトレーラーもな」
シンジは訳の分からない展開に頭が痛くなってきた。
どうやら初めの男のボスらしい。
「・・・・・」
「心配するな。危害は加えない。俺達は盗賊でもテロリストでも無い」
「・・・分かった」
「よし、じゃ、ついてきな」
そう言って彼等は移動を始めた。


機体の中でシンジが溜息を吐くと、シリンがシンジの頬を尾でペシペシと叩きながら噛み付いてきた。
「何で言うなりになるの、シンジ!」
「だって、2対1じゃ分が悪いよ。初めの人よりは話が分かりそうだし」
「甘いわよ!そんなの甘々よ!そんなお人好しで良いと思ってるの!」
「大丈夫だよ。州の人とも知り合いみたいだし、悪人って訳じゃなさそうだよ」
「貴方あの無礼男の言葉を忘れたの!悪人丸出しじゃないの!
ああもう、これは余程しっかり者の嫁様を見つけないと・・・。なんてこと・・・」
シリンがシンジの頬を叩くのを止めて、その尾で顔を押さえて嘆いた。
シンジが呆れてその様子を見る。
「またその話?もうシリンってば・・・」
「大事なことよ!あんな品性無し男を悪人じゃないなんて言う困った子にはちゃんとした伴侶が必要よ!」
「それとこれとは関係が・・・」
「駄目よ!ああ、しっかり操縦してくれる出来た女じゃないと、いざって時不安だわ!」


「・・・・・操縦?」

「あら、良い女の条件よ?」




6へつづく


リンカさんから4話と5話を頂きました。
アスカの過去とか出てきましたね。
あやしい関西弁の男が出てきましたがどうやらトウジと見て良いでしょうか?
とりあえず、シンジを操縦する女はアスカで決まりでしょうね。まだあまり親しくなってないですが(笑

読み終えた後はリンカさんに感想メールをよろしくお願いします。

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