おとぎの帝国 後編 ピーターとウェンディ
少年にとって、冒険が全てだった。
怪物や海賊との戦いも、正義のため、世のためなどではない。
そもそも、正義などという言葉の意味すら彼は知らなかったのだから。
誰にも束縛されず、ただ心が求めるままに冒険を愉しむのが、少年の生き様。
彼にとって、友人の死も別れも一時の感傷に過ぎず、それらはすぐに記憶から消え去っていく。
全くの偶然から出会った少女、ウェンディもそんな一人であったはずだ。
だが、彼女は違っていた。
『胸が苦しいよ、ティンク。
僕は、変な病気にかかっちゃったみたいだ』
愛しい少年に何が起こっているか何を求めているのかを、彼を愛するがゆえに理解した妖精は、
身を切る想いを押し殺して言った。
『それは恋という病気よ、ピーター。
ウェンディじゃなきゃ、治せないわ』
少年を独占するより少年の幸せを望んだ妖精の決断は、世界を変えた。
突然の騒動で公的な謁見の儀式は取りやめとはなったが、皇妃のウェンディが私的に招くという
形で謁見は実現。アスカは緊張の面もちで、ピーターとウェンディのいる部屋へレイチェルと共に
入った。
とにかくシンジが気がかりだが、行き先は大体掴めていて軍の部隊も差し向けているとのレイチェ
ルの言葉を信じ、謁見の場に臨んでいる。
シンジの身の危険を知った自分が、これほどまで動揺するとは意外だった。
冴えなくて、気の利いた台詞一つ言えないつまらない男に、自分が惹かれているはずはない。自
分は、加持のように女を退屈させない大人の男が好みだったはず。あんな、自分の意志もはっき
り主張できない軟弱な男など・・・
「緊張しているのかしら?ミス、ラングレー」
「え?は、はい、申し訳ありません」
ウェンディに言葉をかけられたアスカは、慌てて返事を返す。対面に座るウェンディは、そんなアス
カを咎めるでもなく、女神のような微笑みを浮かべるだけ。彼女の隣に座るピーターも、同じく頬を
緩ませている。
天井も含めた部屋の半分ほどが展望用の窓となっているここは、皇帝の休憩所のようなところら
しく、夫妻の服装は皇帝夫妻とは思えぬ地味なもの。レイチェルも普段着なので、謁見用の礼装
から着替えていないアスカの方が浮いてしまっているくらい。
それにしても、落ち着かない。
シンジのことがあるし、何より、小ぶりなテーブルの対面に座っているのは、お伽噺の主人公達。
共に金髪碧眼で、二〇代半ばくらいで若々しく美しく、レイチェルのような子供のいる親には見えな
いが、ここはネヴァーランドだ。こんなこともあると、アスカは自分を納得させていた。島で目覚めて
から見続けてきた様々な非現実的な出来事が、アスカの感覚を麻痺させているのかもしれない。
「ママ、アスカは、シンジのことが心配でならないのよ。
分かるでしょ?」
「ちょ、ちょっとレイチェル」
隣に座るレイチェルの言葉が、アスカには恥ずかしくてならない。心配は心配だが、はっきり言わ
れると恥ずかしいものだ。
「ほほほほほほほほ・・
互いを想い合う気持ちは、少しも恥ずかしいものではないわ。ミス、ラングレー」
「ですが、皇妃様」
「今は、あなた自身気付いていないかもしれない。
でも、あなたとシンジ・イカリは、確実に惹き合っています。これから先、それが原因で苦しむこと
もあるでしょうけど」
「ウェンディ」
ピーターがウェンディを制し、彼女の言葉を止めた。
アスカには、どうも状況が読めない。ウェンディは、自分の未来を知っているかのような口振りだった。
当惑の色を隠せないアスカに向かい、ピーターが口を開いた。
「単刀直入に言おう。我々は、君達の行く末を知ってる。
君達の世界で何が起きているのか、これからどんな結末を迎えるかまでもね。
勿論、一〇〇パーセントの確立で起こりえる結末ではないが、今のところかなり高い確率である
ことは確かだ」
「・・・あまり、いい話ではないみたいですね」
慎重に言葉を選んだピーターの口調、真剣な様子から、自分の未来はろくなものではないと言わ
れているようなもの。何を根拠にという反発よりもまず、なぜ異世界の住民である彼らが自分の
未来を知っているのか、なぜ関心があるのか気にかかる。
大体、こんなスムースに言葉が通じること自体不思議だ。あまりの自然さにこれまで疑問に感じ
なかったが、急に何もかもが疑わしくなってきた。本当に、ただの夢なのかもしれない。
が、ピーターは、アスカに構わず続ける。
「言葉で説明するより、直接視てもらった方が分かり易いだろう。
レイチェル、準備だ」
「はい、パパ」
レイチェルは、テーブルの隅に置いてあったテレビのリモコンらしき装置を何やら操作。すると、部
屋の半分ほどを覆っていたガラスが透明度を失い、部屋は闇に包まれる。すぐに部屋のあちこち
にある間接照明が点き、薄明るくなるも、明るいと思う水準まで光が強くなることはなかった。ガラ
スはただのガラスではなく、透過する光量をゼロにまでコントロール出来る装置になっているよう
だ。ガラスですらないのかもしれないが。
次に何がとアスカが思った瞬間、外部方向の空間、アスカから見て真横に当たる五メートルほど
先に二メートル四方くらいの映像が立ち上がった。どこから投射されているか分からないが、立体
映像だ。
「この世界には、未来を透視できる魔法術師が何人かいてね。
その内の一人が、君達の未来を視たのだ。それをデジタルに記録したのが、これだ。君にはショッ
クかもしれない。我慢できないようだったら、すぐに止めるから言ってくれ」
言葉の後、ピーターの合図で映像が浮かび上がってきた。そこに映る風景は、紛れもない第三新
東京市。零号機、初号機、弐号機のエヴァ三機。そして使徒・・・だと思う。白と黒のモノトーン模
様で彩られた巨大な球体が低空で漂っているだけだが、状況から考えて使徒以外にない。
悪い未来だというなら、自分はこの戦闘で死ぬのかも。
使徒戦で戦死するなら、それはそれで仕方ないし、納得もいく。自分はそのために訓練され、戦闘
に参加しているのだから。
しかし、その使徒は血をまき散らして破壊される。初号機によって。経緯は分からない。使徒が破
壊されるシーンにいきなり切り替わったからだ。その映像には、弐号機は零号機と共に無傷で映っ
ていた。
一瞬ホッとするアスカだが、続いて映し出されていく映像の数々にアスカは息を呑み、怒りと憤り
に身を震わせるのだった。
「これが、僕の未来・・・」
赤髪の女に未来を見せてやると言われ、顔までもがすっぽりと収まる大きなヘルメットを被せられ
たのが、一時間ほど前。どこに繋がっているか分からない無数の配線が生えたプラスチック製と
思われるヘルメットは見た目より軽く、息苦しさもなかった。
だがシンジは、頭に直接入り込んできたイメージの連続が信じられない。
齢三〇〇を超えるという魔女が、自分に偽のイメージを植え付けようとしていると思いたい。それ
ほどまでに信じがたい情景だった。
自分とアスカは思惑のすれ違いによって苦しみ、アスカは更に使徒に心を浸食されて廃人同様
の状態に堕ちてしまう。
浸食型の使徒に侵された零号機が自爆してレイは死亡。だが、肉体のスペアを持つレイは復活。
肉体は復活しても心が付いていかないレイにシンジは本能的な恐怖を感じ、彼女との距離を取
るようになっていた。
頼りになるべき大人達に余裕はなく、加持は粛正されリツコは自分を見失い、なにもかもが暗転し
ていく。
そして現れる最後の使徒。
続いて訪れる、絶望と破滅の時。
ネルフ施設内に転がる死体の山と、辺り一面に飛び散る大量の血、人間の形を喪失した肉塊。
復活したアスカの歓喜と、再び訪れる絶望。
アスカを助けられなかった自分の、破滅的な感情の励起。
アダムとリリスを取り込んだレイが、九機の白いエヴァを巫女として自分を超常の領域に誘う。
最後に残ったのは、赤一面で覆われた世界。そこで自分は、アスカの首を絞めていた。
全てが、現実離れした悪夢だ。
「信じられないかい?」
ヘルメットを取り、顔から血の気を失ったシンジに女が無表情で言葉をかけてくる。映像の中身を
知っているはずなのに、シンジに対して同情の欠片も見せない。その態度に、シンジは本能的に
反発した。
「当たり前です。
自分の破滅を見せられて、信じろと言う方が無理です」
「なら、その通りにならないように努力するんだね。
頑張れば、いくらかマシになるかもしれないよ」
「これは、決まった未来じゃないんですか?」
こんな未来が先に待っているとしたら、中途で使徒に蹂躙されてサードインパクトでも起きた方が
ましなくらいだ。少なくとも、余計な苦しみはない。
「あくまでも一つの可能性だ、少年よ。
ただ、そうなる可能性はかなり高い。今の段階ではな」
「あんたも優しくなったね、フック。
はっきり言っておやりよ。ほぼ一〇〇パーセント、こうなるってね。予知がこれだけ具体的な形にな
るなんて、滅多にないんだ。あんたも知ってるはずだよ」
口を挟んできたフックに、女は忌々しげに返した。
その言葉が、シンジを更に追いつめる。
「嘘だ」
「そうならないよう、我々も出来うる限りの支援をするつもりだ。
とはいえ、君自身の努力が必須条件なのは変わりがない。他人を恐れず、前向きに、何事から
も逃げない。そんな男になるのだ」
「言われなくてもやるつもりです。こんなものを見せられたら、やるしかないでしょう。
それより、なぜあなたは、僕達の世界に関心を持つんです?余所の世界が破滅しようと、あなた
方には関係のないことなんじゃ?」
「それこそが本題なのだ、少年よ。
心して聞いて欲しい」
それからフックの語った言葉は、一四歳の少年にとって、とてつもなく酷な物であると言えた。
「こんなの嘘よ!」
現実感溢れる映像ながら、とても受け容れることのできない内容に、アスカは場も忘れて激昂した。
プライドの崩壊と愛憎の果てに堕ちていく自分。
シンジの努力と成長を認めることができずプライドに固執し、彼にあたることで心の平衡を保とう
とした。
が、シンジは、加持に代わる存在としての位置を心の中で占めつつある。
それに何となく気付きながらも、自分を追い落とす存在として絶対に認めまいとするもう一人の自
分がいる。
シンクロ率を抜いたシンジが憎い。
自分以上にスコアを上げるシンジが憎い。
誰からも大切にされるシンジが憎い
レイと愉しそうに会話を交わすシンジが憎い。
自分に振り向いてくれない、抱きしめてくれないシンジが憎い。
単なる同僚から気になる存在、恋を自覚する存在へとステップアップするはずだった少年が、憎悪
の対象となっていった。
母の死を間近で見たトラウマがなければ、そこまで歪まなかったのかもしれない。
けれども自分は歪み、心を閉ざし、人間として終わってしまう。
全てが終わりに近づいた時、自分は母の助力で一時的に自分を取り戻すも、それは蝋燭の灯火が
最後に燃え上がるが如く一瞬で、結局は誰の助けもなくサードインパクトの生け贄にされた。
「アタシが、ここまで堕ちるっていうの?」
僅かに冷静さを取り戻したアスカは、誰に言うでもなく前を凝視したまま言葉を吐く。
焦点の定まらない目で病院のベッドで惚ける自分が、脳裏から離れない。あんな自分など、許せる
ものではない。
そのアスカの前に、レイチェルが。
窓が元の状態に戻りつつあり、陽の光が室内を明るくしていく。
「アスカには、なるべく見せたくなかった。
でも、未来を変えるためには仕方なかったわ」
「未来を、変える?
レイチェル、そんなことが」
「できるわ。アスカなら。
わたしは信じてる」
自分を見据えるレイチェルの瞳は、気高く、純粋で、何者にも負けない強い意志を感じる。
その瞳を見たアスカは、自分にもそれだけの強さが求められているのだと突然理解した。今の自分
は、外面を鎧で覆った偽りの強さに頼る情けない女。自分の気持ちに気付かず、過去の幻影におび
え、狭量なプライドに縋る愚かな女でもある。これでは、破滅に突き進むのも当然と言える。
「そこまで言われたら、しょうがないわ。
なんとかやってみる。少しずつね」
「そう言ってくれただけで、あなたをこっちへ呼んだ価値があるってものよ。
パパ達も」
「ちょっと待って、レイチェル。
アタシ達をこっちに呼んだって・・・」
「それは私から説明しよう。命令を下したのは、私だからな」
この世界に紛れ込んだのは、偶然ではなく意図的。
それを知ったとき、アスカの心に言いようのない複雑な感情が僅かに芽生えた。
それは本当に小さなもので、レイチェルへの信頼や好意を覆すものではない。
だが、何かが引っかかる。ピーターの説明を思慮深く聞く外面を取り繕うアスカは、この人間達を全面
的に信用するのは危険だと思い始めた。
シンジは、呆気なく戻ってきた。
それは、ピーター麾下にある軍の威信をかけた大規模捜索の結果ではなく、フックが自主的に解放した
のだった。
解放の折りフックは、レジスタンスの旗艦であり自らの愛船でもあるジョリー・ロージャIII世からピーター
にメッセージを送っている。”未来は、誰のものでもない”と。
その言葉がどんな意味を持ち、それに対する返答があったのか等は、誰も知らない。ただピーターは、
頬を緩ませだけと伝えられている。
アスカは、シンジと再会した際、まず怪我がないかどうか彼の頭から足まで両手でパンパンと何度か
叩いた後、軽くハグして無事を祝った。ドイツ育ちのアスカとしてはハグに特別な意味はなく、挨拶程
度の認識だったのだが、そんな習慣のない日本育ちのシンジには、少々刺激が強かったようだ。
本当に挨拶程度とアスカが思っていたかどうかは、のちの彼らの関係発展から考えると疑問が残るの
だが。
何にせよ、シンジは無事に戻った。
そして、アスカ、シンジ両名の帰還も決まった。元の世界に戻れるのだ。
「いいの?ピーター」
「ああ」
ウェンディは、帰還の準備が進められる様子を宙に浮かぶ立体画面で観つつ、机上で書類の決裁に従
事するピーターに問い、ピーターは気のない返事を返した。
この皇帝用の執務室は今、ウェンディとピーターの二人きり。よって、口調も公式の堅苦しいものではな
く、フランクなもの。
映像では、特殊な文字と記号で構成された魔法円を六人の魔法術師が取り囲み、最終的な調整を終え
るところ。円の中心では、レイチェルが元のプラグスーツに着替えたアスカとシンジに何やら話しかけ、
別れを惜しんでいる。
現在では、こういった魔法円を用いた次元移動は少ない。魔法科学を駆使した機械的な手段で移動す
るのが普通。妖精がいれば、機械の助力さえ必要ない。次元移動が簡単にできると彼らが知ったら、警
戒心を当然抱く。無用な警戒を抱かせないための措置だ。
「シンジ・イカリの取り調べも尋問もなしに返すなんて、貴方らしくないわ。
フックには、モイラがついているのよ。あの魔女が、捕らえた捕虜に何もしないと思うの?何度も煮え
湯を呑まされた相手よ」
「フックのやることは、想像が付く。奴も、僕の意図など見通しているよ。付き合いは長いからね。
だから、敢えて聞く必要もない。
モイラは、ああ見えて優しい女だ。子供に細工はしないよ。まあ、口は悪いけど」
ピーターは手を一時休め、ウェンディの背後から言った。彼女はソファに座り、画面から目を離すことはな
い。それでも、彼女の不満とか不機嫌さは分かるつもりだ。
気心が知れた仲などという言葉では軽すぎるほど付き合いは長いし、想いも褪せていない。彼女を仲間
にした時、いや、異性として意識した時から一〇〇年以上を経ても、その時の情熱を維持している。
異性への愛という感情を知ったのは、ピーターにとって転機だった。
冒険しか頭になく、人の生死すら冒険の前には意味を無くしたあの時代。ウェンディが、もう自分とは遊
ばないと告げたときも、ピーターはすぐにウェンディのことなど忘れるはずだった。それまでは、ずっとそう
だったのだから。だから、もう彼女を迎えに行かないと決めた。
だが、いつまで経ってもピーターはウェンディを忘れなかった。それどころか、また会いたいと思う気持ち
は日毎に強くなり、ピーターを慕う妖精ティンカー・ベルは、それが恋だとピーターに告げた。
ピーターがそれですぐに愛とか恋を理解したわけではない。わけではないが、ウェンディとずっと一緒に
いたいという気持ちが彼を駆り立てた。
高名な魔法術師を半ば脅してまで体を人工的に成長させウェンディを迎えに行ったピーターは、目的を
達して帰還。本当の意味で愛を理解するまで少々の時間はかかったものの、今では愛がどんなもので
どのように利用できるかも知っている。
「こちらの情報が、向こう側に筒抜けになる危険もあるのじゃなくて?」
「誰も信じないさ。
向こうの人間にとって、ネヴァーランドは、実在しないお伽の国。それ以上でも以下でもない。
仮に彼らの話を真に受けても、調査に乗り出す余裕はないよ。向こうは今、綱渡りで世を維持している状
態だからね。我々が介入しなければ、数ヶ月以内で彼らは生を終える運命にあるんだ」
「本当に、向こうへ攻め入るの?私達の故郷でもあるのよ」
ウェンディとしては、戦争より平和的に向こう側の世界と交流したい。
拡大を続ける帝国に対して抵抗の姿勢を示す勢力は常に一定以上存在し、それらを束ねるフックの手腕
もあって戦争は散発的、小規模ではあるが確実に続いている。長く続いた戦いで、仲間はほとんど死んで
しまった。レイチェルが懐いていたスライトリー、人一倍優しかったトゥートルズ、明朗快活で信望を集めて
いたニブズ等々・・・
あの頃からの仲間は、今や帝国第一の将軍と謂われるタイガー・リリーただ一人。恋敵が残ったのは、皮
肉としかいいようがないが。
ともかく、もう人の死はあまり見たくない。あちらの世界のキーマンとなりつつある少年少女をこちら側に引
き込んでまで危機を伝えようとしたのは、破滅を回避させて世界を存続させるため。故郷が滅び行く様を
傍観するわけにはいかないとの使命感でもある。
ピーターの真意は、正直よく分からない。破滅を回避した世界を相手に戦うつもりであるのか、平和的に
交流を進めようとしているのか。
自分には、無駄な戦いはしないといつも言っているのだが、軍備増強の方針が後退する気配はない。全
長がダーリング号の数倍に達する超巨大飛行艦”影法師”の完成も間近だ。対レジスタンスの装備にして
は大袈裟すぎる。
「どうかな。
まずはフックを何とかしなきゃならないし、帰還した彼らが巧く事態を収束できるかどうかによっても変わっ
てくる。魂だけの世界など、興味はないしね」
「フックと決着が付いたら、しばらく戦争はいいわ。
レイチェルも、そう思ってるはずよ」
「そうだね。努力しよう」
それで会話は途切れ、ピーターは執務に戻った。
ウェンディは、映像を見続ける。アスカとシンジが目映い光に包まれ姿を消してからも、暫く見続けた。
ピーターの言った努力が、良い方に向くよう願いながら。
良くできた未来へ