「こんな地獄に生きていかなければならないのか。この子は・・・」
「生きていればどこも天国になるわ」
「そうか、そうだな・・・」

2000年サードインパクトによって地球の地軸は歪み季節は狂った。それにより世界中で食糧不足が問題となり2001年、世界各地で食料戦争が勃発。世界は不足した食べ物を分け合う平和より奪い合う戦争を選んだ。2006年大規模な戦闘はなくなったものの、小競り合いは未だに続いている。
そして2015年

EVA 2015


第一話 使徒襲来

あぐおさん:作

「それじゃ、行ってきます」
少年は目の前に立つ夫婦に笑みを浮かべた。
「シンジ、血はつながっていなくても、あなたは私達の息子だからね。いつでも帰ってきなさい」
「はい、シノさん」
「シンジ、俺はお前に出来る限りのことを教えてきたつもりだ。大事なものはすべてお前の中にある。しっかりな」
「キョウシロウさん、ありがとうございました」
少年は深々と頭を下げた。
「心配するな。俺がついている」
「ああ、任せたぞバビンスキー。シンジを支えてやってくれ」
少年は一匹の犬を連れて目的地へと向かった。天才科学者の脳を移植され人の言葉を使う犬と共に・・・

「行っちゃったね」
独り立ちする息子を見送るかのようにシノは涙を流す。キョウシロウはその肩を優しく抱いた。
「大丈夫だ。あいつは俺達の自慢の息子だからな。ただ・・・」
「ただ・・・なに?」
「送られてきた巨乳の姉ちゃんの写真は俺もほしかった」
「そっちかよ!」


第三新東京市
『只今、非常事態宣言が発令されております。住民の皆様は直ちにシェルターの中に避難をしてください。繰り返します。只今・・・』
シンジは駅前で途方にくれていた。電車が止まり予定していた場所へと向かうことができなかったからだ。周りには人一人いない。
「どうしろっていうのさ・・・」
「仕方ない。歩いて向かうとしよう」
シンジとバビンスキーが駅を出ると爆音が聞こえた。そして彼らの上を巡航ミサイルが飛ぶ。
「巡航ミサイル!?なんなんだよ!なんでこんな街中でドンパチやっているのさ!?」
「俺が知るか!とにかくここから離れよう!巻き添え食うぞ!」
急いでその場から離れるシンジとバビンスキー、しかし、彼らが向かうその方向へもう1発の巡航ミサイルが頭上を通り抜け近くのビルへ当たった。ビルは倒壊し道が塞がれる。別のルートを探そうと辺りを見回したとき、彼らの前に一台の車が止まりドアが開いた。
「シンジ君!乗って!早く!」
「は、はい!」
考えるより先に車に飛び乗る。バビンスキーも後に続いた。
「飛ばすわよ。しっかり捕まってて!」
運転手の女性は急発進させて車を走らせた。


ネルフ発令所
『正体不明の生物は未だ進行中!』
『目標を映像で確認。モニター回します』
メインモニターに映し出された緑の巨人はグロテスクで実に禍々しいものだった。
「15年ぶりだな」
「ああ・・・間違いない。使徒だ」
緑の巨人を見て白髪の老人と、両手を顔の前で組む中年の男は呟いた。
使徒と呼ばれた巨人を前に戦略自衛隊のVTOLはお構いなしにありったけのミサイルをぶち込んでいる。その付近に彼らがいることなど気にする様子もない。それもそのはず、使徒に何十発のミサイルを命中させているのに傷ひとつつけることができない。寧ろ手から伸びるパイルのような武器でVTOLは次々と撃ち落とされてく。その地獄絵図を目の当たりにして、軍の将校は手にもった鉛筆をへし折った。
「ATフィールドか?」
「ああ、通常の兵器など役にはたたんよ」
慌てふためく彼らを余所に二人は冷静に会話をしている。そのとき、赤い電話がけたたましく鳴った。
「わかりました。では予定通りに」


離れたところまでなんとか逃げることができたシンジは運転している女性に目をむけ、送られてきた写真と女性を見比べてみた。彼女は確かに写真の女性だ。
「えっと、葛城さんですよね?」
「ええ、そうよ。碇シンジ君。おしゃべりはもう少し後でね。舌噛むわよ」
聞きたいことは山ほどあるがもう少し後らしい。シンジは何気なく外を眺めると、さっきまで戦闘していたVTOLが次々と離れていく姿を見た。
「葛城さん、おかしいです」
「なにが!?」
「戦闘機が離れていきます」
「えっ?ちょっと・・・まさか!N2地雷!?シンジ君伏せて!」
直後、地面が割るような轟音と共に爆風が彼らを襲った。竜巻か何かで吹き飛ばされたかのように車は二転三転した。ひっくり返った車内からシンジは這い出でると、ミサトを外に引きずり出した。
「大丈夫ですか?」
「ローンまだあるのに・・・もう嫌・・・」


ネルフ発令所では戦自の将校達が高笑いをしながらモニターの砂嵐を見ている。
「碇くん、これが虎の子のN2地雷だよ」
「どうやら君達の出番はなかったようだ」
嫌味を含むその言葉に碇ゲンドウは軽く顔を上げた。
「その後の目標は?」
「あの爆発だ。ケリはついている」
「センサー回復します。爆心地から高エネルギー反応!」
「なんだと!」
「映像、回復します」
モニターに映し出されたのは、グランドゼロで体育座りのように座っている使徒の姿だった。将校たちは力尽きたように座り込む。そこへ電話が鳴り、一言会話すると悔しさを滲ませながら言った。
「通常兵器が通用しないことはよくわかった。本作戦の指揮権は君に移った。それで、君達ならあの化け物に勝てるのかね?碇ゲンドウ君」
ゲンドウはサングラスをかけなおして言った。
「そのためのネルフです」


「碇、どうするつもりだ?」
ゲンドウの側近冬月コウゾウが問い掛ける。指揮権が移ったからと言って失敗してしまえば元の木阿弥だからだ。
「初号機を起動させる」
「初号機を?パイロットがいないぞ」
「今予備が届いた」
ゲンドウが見るモニターにはミサトの後に付いていくシンジの姿が映し出されていた。

シンジは黙ってミサトの後ろを歩いている。
「あの~葛城さん?」
「ん~?ミサトでいいわよ」
「迷ったんですね」
「ぐっ・・・」
地図を見ながらも同じようなところをぐるぐる回っているミサトを見てシンジは思わずため息をついた。大丈夫かこの人?という思いが頭を過ぎるが口にはせず、代わりに隣を歩くバビンスキーに視線で訴える。バビンスキーは軽く頭を振った。
「遅いわよ!ミサト」
不意に後ろから声をかけられる。振り向くとそこには水着に白衣を纏った女性が立っていた。
「ごっめ~ん。来ばっかで不慣れで」
舌をペロッと出しながらミサトはバツが悪そうに答えた。女性の視線がシンジに移る。
「彼がサードチルドレンね」
「・・・そうよ」
サードチルドレン?なんのことかさっぱりわからないが、自分のことを言っていることは理解できた。
「碇シンジです」
「赤木リツコよ。シンジ君ついてきて。時間がないの」
もう少しじっくり眺めたかった。シンジは心の中でそう思った。
シンジ達はそのままエレベーターで下に降りると真っ暗な部屋へと入った。暗闇の中を歩いていくとリツコが立ち止まる。すると急に電気がついてその部屋の全体像が明らかとなる。
「うわ!」
シンジが思わず声を上げる。リツコは彼が“それ”を見たのだと判断し説明をする。
「シンジ君、これが人類決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオンよ・・・って見てねえし!」
「目、目が~~~目が~~~~」
「今はムスカ大佐の真似はやめて!」
シンジがゆっくりと目を開けると、そこには紫色の巨人の頭があった。
「これは・・・」
「もう一度言うわ。これがエヴァンゲリオンよ」
「これ・・・見たことある・・」
「ええ!?」
リツコは戦慄する。
「見たことあります!富○急ハイランドで!」
「お願いだからそういうメタ発言はやめて」

リツコは胸をなで下ろし、ミサトは資料とは違うシンジの様子に戸惑いを隠せない。シンジとバビンスキーは興味深そうにエヴァを見ている。
『久しぶりだな。シンジ』
スピーカーから声が聞こえる。見上げると頭上のガラス張りの部屋からゲンドウがシンジを見下ろしていた。
「・・・誰?」
「誰って・・・あなたのお父さんよ?」
「それはないですよ~僕女の子と勘違いされるこの顔ですよ?どう見てもチンピラの顔したおっさんの血が入ってるとは思えないでしょ?」
「言っちゃった!正直似てないと思ってること本人の目の前で言っちゃった!」
ゲンドウは淡々と話す。
『エヴァに乗れ。嫌なら帰れ』
「帰ります。それじゃ」
「ちょっ!シンジさあん!?帰っちゃだめえええ!」
スタスタと帰るシンジをミサトは慌てて止めた。
「いきなり呼び出して、乗れだなんて・・・できるわけないよ!何考えてんだよ!」
「シンジ君、これはあなたにしかできないことなの。逃げちゃダメよ。なによりお父さんから」
「なんだよ・・・なんなんだよ!巫山戯るなよ!おっさん!」
「お、おっさん!?」
「呼び出されて来たと思えばババァにのれだってぇ!?いくら思春期真っただ中の僕でも無茶だよ!」
「「バ、ババァって・・・」
リツコとミサトは反射的に顔を背ける。シンジは続けた。
「それにババァなんていないじゃないか!いたらいたですごく困るけど!?ここにはババァなんていないよ!ここには!若くて!セクシーな!綺麗なお姉さんしかいないよ!」
リツコ(わ、若くて!)
ミサト(セクシーな!)
リツコ、ミサト(綺麗なお姉さん!)
リツコとミサトは顔を赤くしながら咳払いをした。
「そ、そうよね~いくらなんでも急に呼び出してこういうのは・・・ねえ?リツコ?」
「そうね、私達の配慮が足りなかったわ。ごめんねシンジ君」
「いえ、お二人のような若くてセクシーで綺麗なお姉さんに会えただけでもラッキーですから」
「ふふふっ上手なのね、シンジ君は」
『シンジ、エヴァに「「少し黙れやグラサン」」
ミサトとリツコが殺気を込めた視線でゲンドウを牽制した。
「シンジ君、エヴァに乗って戦って欲しいの。無茶だってことは重々承知しているわ。でもお願い」
「仕方ないですね。ミサトさんのような綺麗なお姉さんの頼みは断れませんよ」
「ありがとうシンジ君。それじゃ付いてきて、説明するから」
「はい、ところでお姉さんのことはなんと呼べば?」
「リツコでいいわよ」

シンジがエントリープラグに乗り込むとバビンスキーも後に続く。
「ちょっと!犬は入れないで!」
「えっ・・・ひとりじゃ心細いんですけど・・・ダメですか?」
シンジのウルウル攻撃にリツコは陥落した。
「仕方ないわね。今回だけよ」
「ありがとうございます。リツコさん優しいや」
女性的な顔立ちをするシンジは正に美少年だ。そんな美少年に褒められて柄にもなくリツコは照れてしまった。

「シンジ、なかなかやるじゃないか」
「バビンスキーだって興味あるでしょ」
「まあな」
ゲージでは慌ただしく発進準備に追われている。
『エントリープラグ挿入』
『プラグ固定しました』
『第一時接続開始』
『LCL注入』
シンジの足元から赤い液体が流れ込んできた。
「なんですかこれ!」
『LCLよ。肺に満たされれば直接酸素を送ってくれるわ』
「そういうのはもっと早く言ってくださいよ!シンちゃん泳げな・・・ぐぼあ!」
『泳がないで・・・』
発令所は初号機の起動を固唾を飲んで見守った。動かなければ意味がないからだ。しかもいきなりの実戦。何が起きてもおかしくはない。
「初号機起動!シンクロ率50%を突破!」
「初めてで50%オーバー!?いけるわ!」
「シンジ君!行くわよ!エヴァンゲリオン初号機発進!」

リフトに載せられると勢いよくカタパルトが一気に上昇し、強烈なGがシンジ達を襲った。街の交差点の真ん中がシャッターのように開くとそこから初号機が姿を表した。
「最終安全装置解除」
初号機を支えていた最後の拘束具が外れると初号機はだらりと体を前のめりにした。その初号機の目の前には戦自の戦闘機をものともしなかった使徒が様子を伺うようにじっと見つめている。
人類と使徒との決戦は静かにそのゴングを鳴らした。



第二話へ続く


あとがき
初めましてあぐおです。この話は某漫画とのクロス作品でシリアス下ネタ路線のLASを目指しています。もちろん大っぴらに表現するのは極力控えます。何故下ネタをいれるのかというと“一番くだらないから”です。正直エヴァ関係はとにかくシリアスになりがちです。ましてやこのクロスはヤバいくらいシリアスになりますので、設定をちょくちょく変えて登場させていきます。もちろん基本はエヴァですので、そこはアニメ、原作を織り交ぜながらやっていきます。末永く読んでいただければ幸いです。


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