第三新東京市郊外−若者に人気のある、某有名デパート前

 

 そこには円錐型の控えめな噴水と芝生が植えられており、ちょっとした
公園広場のようになっていた。ショッピングを楽しんだ後、ここで一時の涼
をとっている人も多いようである。今日が休日と言うこともあってか、長閑
ながらもそれなりの賑わいを見せている。

 しかし。一人だけその長閑さとは縁遠い、見るからに怪しげなオーラ
発している奴がいた。その少年は『立入禁止』の立て看板を無視して芝生
に進入し、更に苗木の影へ隠れるよう”体育座り”をして佇んでいる。
 その手に有線のリモコンボタンを手にしており、先程から何やらブツブツ
と呟きながら一定間隔でボタンを押し続けているようである。
 リモコンから延びている線は約2〜3メートル先にある『三脚上の望遠カメラ』
に迄続いていた。しかしその上には黒のサマージャケットが被せられており、
そこにカメラが設置してある事は、外から解らないようになっている。

 「目標をセンターに入れてスイッチ…

 …カシャッ…

 「目標をセンターに入れてスイッチ…

 …カシャッ……カシャッ…

 「目標をセンターに入れてスイッチ…

 …カシャッ……カシャッ……カシャッ…

 …因みに彼がシャッターをきるタイミングは、すべてレンズの前を
薄着の年若い女性が横切っていく瞬間に限られており、彼が呟く
ところの目標とは何であるのかは、言うまでもないであろう。

 「目標をセンターに…って、僕は一体何をしていたんだっ!?」

 …何を思ったか、突如大声をあげる少年。周囲にいた人間達は
その声を聞いて初めて彼がそこにいたのを察知し、皆一様に別の
意味で
驚きの様相を見せた。

 『えっ…あんな所にヒトいたっけ!?

 『ぜんっぜんきづかなかったわ…完全に背景と同化してたみたい…』

 『恐ろしいまでに薄っぺらな存在感ね…』

 通行人の方々にまでその存在感の軽さを同情されてしまう少年、
相田ケンスケ(exシンジ)。しかし彼はそんなことにも気づかず
呆然としたままブツブツと何事か呟いている。

 『ハマるのはイヤ…ハマるのはイヤ…ハマるのはイヤ…

 どうやら昨日『碇シンジ』(exケンスケ)に言われたことがトラウマ
となっているようである。しかし何故彼がこんな事をしているのか、
元を正せば全てその『碇シンジ』が原因なのであった。

 昨日の濡れ衣のせいで、彼はクラスの女子全員を脅迫するどころか
にユスられて
しまい、彼女等からその実在しない盗撮ビデオの出演料
として、一人壱万円(計15万)をふんだくられてしまったのである。
 生活費に困った彼は、現在の同居人と相談した結果かつての彼にならい、
盗撮写真を男子生徒に販売するアルバイトを仕方なしに始めたのであった。

 シンジ自身にはカメラを扱った経験など皆無に等しく、当初はかつての
ケンスケみたく売り物になるような写真が撮れるかどうか半信半疑であった。
 しかし、いざやってみると自然に身体が順応し、その心配は杞憂に終わ
る結果となった。…だが暫く続けていくと彼は知らず知らずの内その行為に
のめり込み始め、気がついた時は既にハマりかけている状態となっていた
のである。

 『ハマるのはイヤ…ハマるのはイヤ…ハマるのはイヤ…

 しかしその思惑とは裏腹に、彼の魂は確実に蝕まれつつあるようだ…。


 NEON GENESIS EVANGELION "K≠S"・・・第3話「ナツミ」_A
 ※このお話は"K"君を奈落の底に突き落とすためのものではありませんが、かといって
"S"君にイタい思いさせるための話でもありません。。ご了承ください。


 
 「ただいま…」

 相田宅にシンジが帰ってきたのを察知し、現在の同居人…自称三人目の
綾波レイが、玄関まで彼を出迎えに来た。白のポロシャツにショートパンツ。
 そして片手にはポテチと、すっかり庶民の生活に馴染んだ感のある彼女
であるが、その顔はやはり心配げにシンジを見据えている。

 「お帰りなさい…。写真、どうだった?」

 「うん。…このシャシンを完成に導いてくれた、5人の女性に感謝します……」

 「…いっ、碇君!?…あ、あなた何を言ってるの!??」

 何やらぼーっとした顔つきで、訳の分からないことを呟くシンジ。まるで
何者かにとり憑かれているかのようである。レイは慌てて彼の元に
駆け寄り、思いっきりその身体を揺さぶった。

 「…しっかりして!…碇君、しっかりしてっ!?」

 「……。…ハッ!?…ぼ、僕は一体今まで何を…」

 そのかいあってか、暫くし意識を取り戻したシンジ。彼はどうやらここまでどう
やって帰ってきたのかさえ覚えていないようだった。

 ポカンとした顔でレイを見ているシンジ。そんな彼に彼女は優しく
微笑んでみせながらも、その脳裏では深刻な危惧を抱いていた。

   『まずいわね…やはり日に日に怪電波の受信率が高くなっているよう
だわ…。一刻も早くエヴァとシンクロさせて、魂の浄化を行わなければ…』

 

 …仲良く夕食を終えた後。二人は例によって明日の作戦会議を始めた。

 「…碇君。…明後日がどういう日だったか、覚えてる?」

 「明後日…?」

 彼女に言われシンジはカレンダーの日付を確認した。しかし、さすがに
日付だけでは記憶を呼び起こすきっかけにはならなかった。

 「さぁ…何だったっけ?」

 「…。明後日は第四使徒が襲来する日よ。碇君…」

 「…。そうだったんだ…」

 …レイに言われてかつての記憶が過ぎったのか、神妙な趣になるシンジ。
 そんな彼を、レイもやはり神妙な顔つきをして見据えている。

 「…そうよ。そして相田君が全て知っていることが解った以上、もはや
様子見の必要はなくなった。…一刻も早く、実力行使してでもエヴァに
乗り込むのよ」

 「…。解ってるよ、綾波…」

 …力強く頷くシンジ。さすがにもう、迷いはないようである。

 「一度乗り込んでシンクロしてしまえば、ネルフも僕のことを無視
出来なくなるはずだからね。ダミープラグの量産が具体化されて
いない今ならば、パイロットの予備は幾らでも欲しい…。父さんなら、
きっとそう考えるよ…」

 「…。碇君、前世の時のことを思い出してみて。…第四使徒との
闘いの前に、エヴァを強奪するスキが見つかるかもしれない」

 …目を閉じ、瞼の裏に力を込めて当時の映像を呼び覚まそうとするシンジ。
 だが彼は数秒もしない内に目を開いた。当時の事は比較的強くイメージ
が残っていたのであろう。…そう。とにかく、いろいろとあった日だったのだ…

 「…。あの日…エヴァのパイロットだって事がばれた僕は、そのせいで
トウジに殴られたんだっけ…。…その後、綾波が僕のこと呼びにきて…」

 「…それよっ!

 「…起きあがれないフリして、綾波のスカートの中を…って、な、何?」

 突如湧き起こった彼女の大声に、彼はその感慨に浸る間もなく、ビクリ
と反応した。何か疚しいことでもあるのか、些か顔が引きつり気味である。
 そんな彼を見て、彼女は高揚感を納め思わず『はふぅ…』溜息をもらす
も、辛うじて話を続けた。

 「………。今回は、鈴原君に働いて貰いましょ…』

 「…え?…ト、トウジに??」

 「…そう。彼に、ちょっとばかり危険なパチキをカマして貰うのよ…」

 その綺麗な顔立ちを歪め、ニヤリと含み笑いを浮かべるレイ。
 …それを見たシンジの顔色は、何かいけないモノを見てしまった
かのように血の気を失った。

 『うぅっ…綾波が時々妙に悪役っぽく見えるのは、僕の思い過ごしだよね…

 「…、どうしたの?」

 「…い、いや…。と、ところで『危険なパチキ』って、どういう意味?」

 「…。少し待ってくれる」

 いつものポーカーフェイスに戻り、席を立つレイ。彼女はリビングにある
ウォードローブから何やら怪しげな液体の入った暗色の小瓶を取り出し、
テーブル上に置いて見せた。…因みに、リビングのウォードローブは彼女が
居着いて以来彼女専用の物置に使われており、厳重に施錠までされている。
 あまりの物々しさに辟易したシンジが、以前、中に何が入っているのかを
聞きだそうとしたことがあった。しかし。それに対した彼女がゲンドウ風味
えげつない嘲笑を浮かべ『知らない方が幸せでいられる事もあるのよ…』
囁いて以来、彼はすっかり怯えてしまい結局解らずじまいになっていたりする。

 「…? 何それ??」

 「…。平たく言えば、即効性の筋肉増強剤と言ったところかしら…」

 「き、筋肉増強剤!?…ま、まさかそれを……」

 「……。そう。これを鈴原君に一服盛るのよ」

 「…えぇっ!?…だ、大丈夫なの??」

 「…。大丈夫よ…。直接身体に害はないと思うし、増強といっても
せいぜい通常の2,3割程度だから。…何も、問題ないわたぶん…」

 「………。つ、つまり…ドーピングしたトウジにケンスケを殴らせて、
怪我をさせるって事だよね…。でも、ケンスケは全て知っているはず
だし…わざわざ殴られたりするかな…」

 「いえ、寧ろ逆ね。…彼の性格上、自ら進んで態と殴られるような演出
をするはずだわ」

 「どうして…??」

 「周囲に対し悲劇の主人公をアピールする為よ。…みんなの前で
彼に殴られれば周囲からよりいっそうの同情を得られるし、黙って
その試練に耐えて見せれば、男らしいというステイタスをも得られる。
 そして何より、彼が狙ってる二人目のわたしや洞木さんの前でその
姿を見せれば、彼女たちの中で自分の株を上げることが出来るわ。
特に、鈴原君に気のある洞木さんには、より効果的でしょうね…」

 「なるほど…。確かにあいつなら、それくらいの事計算してるかも…。
でも、綾波がそこまであいつの性格を読んでたなんて、ちょっと意外だね。
前世じゃ殆ど、口も聞いてなかったのに」

 「…。そうね。でも、身近によく似たヒトがいたから。その人のこと
ずっと見てたから…何となく解るのよ」

 …意味ありげな視線を向けて言うレイ。それに対しシンジはのほほん
とした顔でその視線を持て余していた。彼自身、それが自分であるという
自覚は全くないようである。

 「ふ〜ん(ったく、しょうがないなぁ父さんは…。」

 「(ハァ…。)…まぁとにかく、そこで相田君にはエヴァに乗れない身体になって
貰うわ。そうすれば、恐らく二人目のわたしが初号機に乗って出撃する事になる。
 だけど今の彼女の経験値と怪我の具合からして、苦戦は必死のはずよ。
そこで碇君は前回同様、たまたま戦闘現場に居合わせたふりをして、初号機
のエントリープラグに乗り込むのよ」

 「そこで僕がエヴァにシンクロしてみせればいいんだよね。…でも、
この顔で本当にシンクロできるかな…」

 「エヴァのシンクロ率は外的要因に左右されるモノではないわ。恐らく
大丈夫の筈…と、言いたい所だけど、それだと相田君が何故エヴァに
シンクロ出来たのかが説明つかないわね。…元々相田君も第4次選抜
候補の一人だったわけだし、他の量産型エヴァならまだ話は解る。
 でも、初号機だけは別格だったはずなのに…。何故彼が”その初号機”
にシンクロしうるのか。…その理由が解らない以上、この作戦は危険な
『賭け』にならざるを得ないわ。…碇君、どうする?…それでも敢えて、
この作戦をやってみる?」

 「………。やるよ」

 意外にも、シンジはきっぱりとした口調で答えた。

 「僕にはもう時間がないんだ。それに………」

 「…、なに??」

 「…い、いや…なんでもないよ」

 不思議そうに問い返すレイに対し、シンジはその後の台詞を
少し慌てた感じで誤魔化した。…実際の所その脳裏では

 『とりあえずケンスケに仕返しできるなら、どんな作戦でもいいや』

 などと考えていたりするのだが、それを言うと自らのキャラクター像
を損なう可能性があるため、敢えて無言に伏したのである。

 「…そう。ならいいけど」

 「…そ、それより…そんなクスリ、一体何処から手に入れてきたの?」

 …とりあえず話を逸らそうと、適当に話題を振るシンジ。しかしその
ネタが彼女の胸裏にある何らかのツボを突いてしまったようである。

 「…………………。聞きたい?

 何やら神妙な顔つきになって逆に問い返すレイ。彼女の
様相にドキリとしながらも、とりあえず頷いてみせるシンジ。

 「うん…」

 「…。本当に? 聞いても良いの…??

 更に重々しい様相を醸し出し問い返すレイ。その迫力に思わず挫け
そうになるも、やはりどうしても気になるシンジは再度頷いて見せた。
 しかし。それを確認した次の瞬間、彼女が見せた表情は、かつて彼が
見たこともない凄絶な迫力を絡ませたものであった。

 「…………。聞いても、絶対に後悔しないわねっ!?

 「(ひぃぃぃっ!)…なっ、なんか急に聞きたくなっちゃったよ!…アハ、アハハハ…」

 突如劇画調の顔つきになって、あからさまに脅しかかるレイ。…彼女が何を
隠しているのかは全くの謎だが、それが余程触れられなくない話題であった
らしいことは確かなようだ。…一方、その手の顔つきにトラウマのあるシンジは
敢え無く降参に至った。反射的に出たのであろう、乾ききった笑い声が空しく
響き、やがて尻窄みに消えていった。

 「………。碇君がそう言うなら、敢えて言う必要もないわね♪」

 …先程の表情から180度反転し、少女漫画調の実にさわやかな
笑みを浮かべるレイ。相変わらず凄絶な彼女の2重人格ぶりに、
シンジは脱力するより他なかった。

 「………(あうぅぅ)。」

 「…。とにかく、作戦の概要は決まったわね。使徒襲来は明後日
だし…。…碇君、あなたは明日の放課後にでも、鈴原君の所に顔
を出してみたら? …そこで適当に煽っておけば、当日彼の
パチキパワーが更に増幅されてより確実に相田君を葬り去る
事ができると思うわ」

 「……………。」

 全く表情を変えないまま、相当にえげつない事をサラリと言うレイ。
 図らずも再度浮かび上がる『彼女に対する疑惑』に対し、彼はそれ
をうち消す為、躍起になって自分に言い聞かせようとしていた。

 『…こんな悪役っぽい女、綾波じゃないなんて思っちゃダメだ…そう、
こないだ彼女も言ってたじゃないか…全ては僕を守るためだって…彼女
は僕のために敢えて汚れ役に甘んじてるだけなんだ…僕が信じてあげ
なきゃだめなんだ…あのLCLの海の中で誓ったように、今度こそ全て
受け止めるんだ…』

 「…………。」

 「……。どうしたの? 碇君」

 「…。なんでもないよ…」

 「…。そう?」

 …そんな彼の様相を、不思議そうに見据えるレイ。しかし、幾ら
かの間を置いて、何か思いついたようである。
 …いつもの表情に戻り、席を立つ。…そしてそれ迄とは違う穏や
かな笑みを讃えると、彼を見据えて優しく諭すように言った。

 「碇君…今日はいろいろあって、疲れたでしょう?…もう休んだほうがいいわ」

 「…。ありがとう綾波…。そうさせて貰うよ」

 「うん…それがいいわ」

 …彼女の微笑みに絆されたのであろう。それまでと違い、、ほっとした
ように頷くシンジ。そしてそれを迎えるように、レイは更に優しげな目を
して笑んで見せた。

 「………。」

 「…あ、でも綾波はどうするの?」

 「わたしも、シャワーを浴び終えたらそうするわ…」

 「…そ、そう。それじゃ…」

 気を利かせた彼が、そう言って席を立とうとした次の瞬間であった。
 …それよりも一瞬早く、彼女はそれ迄と違う潤いを帯びた声色で呟いた。

 「碇君………一緒に入る?

 「うんありがとうあやなみ……って、えぇっ!?」

 「…。イヤなの?

 …思わず仰け反って驚愕するシンジに対し、その反応を見たレイは
悲しげな表情になって、しっとりと彼を見据えていた。そんな、かつて
見たことのない艶やかな彼女の様相に、シンジの思考回路は一瞬に
してメルトダウンを発症してしまったようである。

 『…こんなHっぽい女、綾波じゃないなんて思っちゃダメだ…そう、
これも一つの綾波の形…いろんな性格をした綾波がいていいんだ…。

 綾波には色気がない…そう思い込むだけで、彼女のことを敬遠し
てしまう…本当は綾波にも、可愛い所がいっぱいあるはずなのに…。

 受け取り方一つで大きく変わってしまう脆弱なものなんだ…人の中
性癖なんて…その程度の、安直な思い込みに過ぎなかったんだ…。

 でも、だからこそ人はより深く、相手の事を知ろうと努力する…。
ただ僕は、今までこういう状況に慣れていないだけなんだ…。だから
いつも、女の子の顔色ばかり窺っている必要なんてないんだ…。

 僕は貧乳は嫌いだ…でも、そうやって選り好みしてる限り、女の子
ゲットしてイチャつくことなんて、一生出来ないのかもしれない…。

 エッチチカンバカヘンタイにはなりたくない…でもそんなこと言って
たら、彼女いない歴を無期延長し続けるだけなのかもしれない…。

 僕は卑怯で臆病でずるくて弱虫でその上むっつり系だ…でも……

 それが、僕のキャラクターなのかもしれない…! 僕は、スケベでも
いいのかもしれない…!
 

 そうだ!…僕は僕だ!…スケベでいたい!

 僕は綾波と一緒にシャワーを浴びたい!!

 僕は綾波と一緒に身体を洗いっこしてもいいんだ!!

 …ガシャーン!… …わあぁああっ… …パチパチバチ…

 …おめでとう!… …おめでとう!…(×7) …ありがとう…!

 …スカした僕にさようなら!… …スケベな僕にこんにちは!…

 

 …不意にメルトダウンを起こした影響か、彼の妄想は些か暴走気味な
ようである。…しかも彼は自分の妄想の中で勝手に補完されてしまった
らしく、体育会系の爽やかな微笑みを讃え席を立って宣言した。

 「イヤじゃないよ綾波!…さぁ、早く入ろう今すぐ入ろう一緒に入ろう…」

 明らかにイッちゃった様相のシンジ。たった一言によってここ迄キレて
しまうとは、さすがに彼女も想像だにしなかったのであろう。
 困惑気味に暫くおろおろとしていたが、ふんふんと鼻息を荒げる体育会
系(?)モードのシンジを見ていると、やがて自分の身に切羽詰まったモノ
が迫り来る感覚を禁じ得なくなってきたようである。
 自ら言い出したことがきっかけとはいえ、もはやその程度のお遊びでは
済まされぬであろう事を察知した彼女は、恐る恐るながらも、彼にそろり
と語りかけた。

 「…。あ、あの…碇君…

 「…な、なんだいっ!?(ふんふんっ)

 「…。すごく…言いにくいことなんだけど…

 「うんっ!?…(ふんふんふんふんっ)

 「さっき言ったこと…。な、無かったことにしてくれる…

 「………………………。え?

 …その一言によって、ピシッと硬直するシンジ。あまりのショック故に
その瞬間の記憶がトんでしまったらしく、キョトンとした顔になって再度
彼女に耳を傾けてみせる。…それに対し、彼女は更におどおどしながら
も、なんとか精神を再構築して、言った。

 「だって……今の碇君、相田君鈴原君イヤな所足して2で割った感じ
なんだもの…なんか、コワイっていうか…生理的に受けつけないって言うか…

 「…あうっ!?」

 「と、とにかくそう言うことだから…く、くれぐれも入ってこないでね?

 「あうぅ…(T_T)」

 なよやかに崩れゆくシンジを後目に、レイは後ろめたさを纏わせながらも
そそくさと退出していった。

 『…。やはり、かなり浸食されてきてるわね…。次の作戦、
何としても成功させなくては…。しかし、それにしても…』

 一旦退出したものの、再度チラリと背後を振り変えるレイ。そして
未だに石化しているシンジの姿を確認すると、少し困ったような顔
つきになって溜息をもらした。

 『男の子って、みんなあーなのかしら…。昔はそんなこと気にならなかっ
たのに…今は、あの娘の言ってたことが少しだけ解る気がするわね…』


 <Bパート(鈴原姉妹登場編)に続く>


 淡乃祐騎さんからまたまた続きをいただきました。
 シンジの苦境は続く‥‥ですね。

 さて‥‥散々な目にあっているシンジははたして、汚染が進行する前にエヴァに乗れるのでしょうか‥‥?
 でもなんだか不吉な雰囲気が‥‥しません?しますよね(笑)

 はたしてどうなることやら、続きが気になるとこですなぁ。

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