Meditations on Middle-earth

最終更新日: 2005.2/28

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書名 Meditations on Middle-earth
著者Karen Haber(編集)/ John Howe(イラスト)
章と執筆者
Preface: The Beat Goes On
Karen Haber
Introduction
George R.R.Martin
Our Grandfather: Meditations on J.R.R.Tolkien
Raymond Feist
Awakening the Elves
Poul Anderson
A Changeling Returns
Michael Swanwick
If You Give a Girl a Hobbit
Esther M.Friesner
The Ring and I
Harry Turtledove
Cult Classic
Terry Pratchett
A Bar and a Quest
Robin Hobb
Rhythmic Pattern in The Lord of the Rings
Ursula K.Le Guin
The Longest Sunday
Diane Duane
Tolkien After All These Years
Douglas A.Anderson
How Tolkien Means
Orson Scott Card
The Tale Goes Ever On
Charles De Lint
The Mythmaker
Lisa Goldstein
"The Radical Distinction..." A Conversation with Tim and Greg Hildebrandt
Glenn Hurdling
On Tolkien and Fairy-Stories
Terri Windling
出版ST. MARTIN'S Press
ISBN0-312-30290-8
価格(US)$13.95
エディションペーパーバック
書影 Meditations on Middle-earth
関連リンク

(本書の入手日: 2002.12/25)

SF・ファンタジー作家らが、トールキン体験を書いた評論・エッセイ集。 各々の、トールキンとの出会いのエピソードや、自作に与えた影響、トールキン作品の考察など、 興味深く面白い内容で読ませます。 本書は、2002年のヒューゴ賞にノミネートされていたのですが、それもうなずけます。

本書は、 邦訳が原書房から『『指輪物語世界』を読む』という邦題で、 出ています。 僕はこの邦訳で最初読んだのですが、 邦訳独自の奇妙な「編集方針」(*1)とやらの為に、 The Annotated Hobbit など優れたトールキン研究書を手掛けている、 ダグラス・アンダーソン(Douglas A.Anderson)氏の章と、 画家ヒルデブランド兄弟(Tim and Greg Hildebrandt )の章が、 訳されずにカットされていました。 どうしてもこれらのカット部分を読みたくなり(特にアンダーソンさんの章)、 この原書を購入しました。

購入したのはペーパーバック版ですが、結構大ぶりのサイズで紙質も悪くはなかったので、 これも邦訳でカットされてしまっていた、 渋い鉛筆画のジョン・ハウ(John Howe)の挿絵を充分に楽しめました。 カバーアートのガンダルフのイラストもかっこいいし挿絵もたくさんあるので、 本書(原書のみ)はジョン・ハウが好きな人にも美味しい本だと思います。

邦訳には無かったアンダーソンさんの章とヒルデブランド兄弟の章ですが、 どちらも面白く、邦訳でカットされていることを非常に勿体無く思います。 読みたかったアンダーソンさんの章は期待通りの良文で、トールキン教授の作品・仕事 (そしてクリストファー教授らの仕事も)や、トールキン批評の変遷を、 非常に上手くまとめておられて (流石アンダーソンさん)、記述はコンパクトですが情報に不足も無く、 これからトールキンを深く読み込もううとしている人によき道しるべになるだろうと思いました (他にはトールキンへの個人的思い出は勿論、 執筆当時未公開のPJの映画への不安と期待の入り混じった心中も語っています)。 編集方針でカットしたと言いますが、様々なトールキン体験が語られたこの本に、 読者のトールキン体験を助けるこの文章が入ることの価値をどうして、 邦訳スタッフは分からなかったんでしょう? また、トールキン作品を描いたビジュアル面での体験が軸になっている、 ヒルデブランド兄弟の章も、他の章とは趣が違うところがいい感じです。

(*1) 邦訳でカットされた章は、訳者あとがきによると、現役作家たちの想いに、 より焦点を当てたいという編集方針だから割愛したとのことで、 ジョン・ハウのイラストは紙幅の関係から省略したそうです。 カットした二章があっても、 現役作家たちの想いがぼやけるとは思えないので、 よく分からない奇妙な編集方針だと言わざる得ません。 Karen Haberの編集方針のまま訳して欲しかった。 紙幅云々はもっと分りません。 編集方針といえば、邦訳のカバー折り返しに、 並み居る海外作家達のトールキンへの想いを語っている文章を差し置いて、 邦訳独自掲載の巻末対談での井辻朱美さんの「ファンタジーと若者についての、 トールキンとは直接は関係無い発言」を使ってるのは、原書房の意向なんでしょうか。 これじゃ何に焦点を当てたいのか判らないですし、焦点をぼやけさせるんじゃなかろうか?


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