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青い卵
裏庭には、大きな月桂樹の木があった。
いっぱいに茂った緑の葉や枝はたえず小
さく揺れていた。その訳は月桂樹の生え
ている場所が、風の通り道だったことも
あるが、もっと別の理由があるのではな
いかと考えている人もいた。
ある時、その木に鳥が巣を作ったが、
親鳥はその後、姿を見せなくなった。季
節が春から秋へと移ったある夜、一人の
男の子がその木に登った。その夜は月が
照っていたので、月桂樹の木は枝も葉も、
銀色に輝いていた。巣のある所までたど
り着くと、そこには三つの小さな卵があ
った。そのうち二つは白い卵だつたが、
もう一つは青い色をしていた。男の子は、
卵を巣ごとハンカチに包んで部屋に持っ
て帰り、窓辺に枯れ葉を敷いてその巣を
のせた。
こうして卵は今まで通り昼は太陽の光
を浴び、夜は月の光を浴びることになっ
た。