プロローグ | PROLOGUE・ | ||||||||||||
俺の名はクリント。全宇宙をまたにかける、その筋じゃ少しは知られた賞金稼ぎだ。俺はどんなヤバい仕事でも報酬次第でひきうける。そんな俺に仕事を頼むくらいだから客には変わった奴が多いが、3ヵ月前、俺の所へやってきた娘は、その中でもとびきり変わった客だった。 その娘の名はアニーといった。見たところ20〜25才ぐらい、品のある顔だちだが、どこか影があるように感じた。そいつは俺と会うなりこう言った。 「キッドを倒すの協力してくれたら、欲しいだけお金をあげるわ」 こういう風に話を切り出すやつは多いが、若い娘のいうセリフじゃない。それにキッドという名前にも引っかかった。 海賊キッド。宇宙のあらゆるところに出没し、悪事を働いてきた悪名高き男。かつて軍人だったという彼は、連邦政府の必死の追跡を悠々とかわし、あざわらうかのように略奪を繰り返してるって話だ。 「何でキッドをねらうんだ?それに協力っていうのはどういうことだ。俺には相棒は必要ないぜ」 「あなたはどんな仕事でも引き受けるんでしょう?」 「そうだ。だがあんたみたいな客は初めてなんでね。小娘がわざわざ殺されにいくのをだまって見ているわけにはいかねえからな」 俺にはこの娘の頭がいかれているのか、それともよほどの理由があるのか、とにかくワケが知りたく、しつこく娘に問いつめた。始めは固く口を閉ざしていた娘も、根負けしたのか少しずつ語り始めた。 「私の父はキッドの銃弾に倒れたわ。それに母も、兄弟も、父の星で働いていた人達もすべて」 なんてこった、復讐とはな。父の星ってことは大地主の娘か。それにしても海賊を相手とは、まさに世間知らずのお嬢さんだ。 「馬鹿な考えは捨てるんだな。1人や2人でかなうヤツらじゃない」 俺がそう言い終えた瞬間、娘の手には銃がおさまっていた。そしてその銃口は正確に俺の眉間を狙っていた。 「このために3年間、軍の特殊部隊にいたのよ。あなたがこわいっていうなら他の人を探すわ」 臆病者だと?、ふざけるな。 「いいだろう、力を貸してやる。だが自分の身は自分で守れ」 娘が笑みを浮かべているのを見て、俺はうまく乗せられたことに気づいた。やれやれ、面倒なことに巻き込まれちまったもんだ。 あれから3ヵ月。俺とアニーは計画通り、惑星アレクスへと降りたった。キッド一味のねぐらであり銀河系の中でで最も危険なところだ。 「報酬の件、わすれるなよ」 「私の全財産はキッドの所よ。彼を倒さない限り払えないわ」 大きくため息をつきながら、俺は遠くに霞む街に目をやった。もうすぐ夜が明ける。日の出とともに殴り込み、ヤツらを銃弾で叩き起こす。体がふるえた。仕事前はいつもこうだ。えもいわれぬ緊張感。 「何ふるえているの、まさか怖くなったんじゃないでしょうね」 しかし今回は疲れそうだ。 |
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