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スーパーリアリズムアクション・カゲ
機種 ファミリーコンピュータ
発売元 ナツメ
開発元 ナツメ
発売日 1990年8月10日
定価 5,900円(別)
プレイ人数 2人同時プレイ可能
ステージ数 5面
ライフ制 あり
残機制 なし
コンティニュー 5回
パスワード なし
難易度選択 なし
リンク ボス攻略
『KAGE』と『忍者龍剣伝GB』




ストーリー

 ある星のある国、アメリカは、独裁政治の皇帝ガルダに支配されていた。打倒ガルダを目指してアメリカに乗り込んだ者もいたが、強大なガルダ軍の前にはなすすべもなかった。そんなある日、ガルダは厳重な警備網をくぐり抜けて国境を越えたふたりの存在を知る。そのふたりとは……。

ナツメ発・超正統派忍者アクション

 『スーパーリアリズムアクション・カゲ』こと『KAGE』は、硬派メーカー・ナツメによる忍者アクションだ。やたら調子に乗ったサブタイトルには衝撃を受けるが、最初に言ってしまうと、本作には超斬新なアイデアも、超美麗なグラフィックも、超重厚なサウンドも、超ドラマチックなストーリーもない。ましてや、突っ込みどころ満載のバカゲーでもない。誰が見てもわかるような、一言で表現できるような「売り」は特にないのである。
 だが本作は、ファミコンでプレイできる横スクロールアクション、そして忍者アクションの「超正統派」として、ほぼパーフェクト、と言っていい完成度を持った良作だ。際立った特徴こそないものの、全ての要素が高い水準でまとめられている。

基本システム

 プレイヤーは男忍者のHAYATE(ハヤテ)と、女忍者のKAEDE(カエデ)から選択することができる。両者の性能差はないが、素晴らしいことに2人同時プレイ可能である。これは本作の大きな魅力のひとつと言えるだろう。
 操作はAボタンでジャンプ、Bボタンで攻撃とオーソドックスなものだが、マップ上のパイプに向かってジャンプすると、パイプにぶら下がることができるのが特徴。ぶら下がったまま移動や攻撃も可能で、クルッと回転してパイプを上り下りするのがかっこいい。いかにも忍者らしい、滑らかな動き、キビキビとした操作性が快感だ。
 また、必殺の忍術も使える。Bボタンをしばらく押しっぱなしにするとライフゲージが光りだし、さらにそのまま押し続けるとプレイヤーが刀を構え、落雷!で画面上の敵を一掃することができる。だが、これを使うとライフゲージが一気に全体の半分も減ってしまうので、あまり頻繁に使う技とは言えない。
 プレイヤーは武器アイテムを取ることで、刀、くさりがま、手裏剣、手榴弾の4種類の武器をチェンジすることができる。同じ武器アイテムを連続して取ると3段階までパワーアップし、射程が伸びる、連射可能になるなど、武器によってそれぞれ違うパワーアップが楽しめる。ただしダメージを受けると、武器はどんどんパワーダウンしてしまう。
 刀は横しか攻撃できないが、パワーアップすると弾が出るようになり、3段階では射程はくさりがまより長くなる。くさりがまは横だけでなく真上&斜め上にも投げることができるが、パワーアップしても射程は変わらない。手裏剣と手榴弾は強力な飛び道具だが、弾数制限がある。これら4種類の武器の使い分けが面白い。
 ステージは全部で5つで、港、地下水道、街、空中要塞、大要塞と変化に富んでいる。さらに各ステージは2〜3つのエリアに分かれており、次々と場面が切り替わっていくのでテンポが良い。
 新しい場面に進めば、必ず新しい仕掛けと敵が用意されており、プレイヤーを飽きさせない。ボスも個性的だが、ステージ間でザコの使い回しがほとんどない点にも感心させられる。こうしたギミックの豊富さこそが、本作の最も優れた点のひとつと言えるだろう。

『KAGE』の魅力

●忍者アクションいいとこ取り
 『KAGE』には、「忍者アクション」という言葉から期待される、全てがあると言っていい。近未来の都市で忍者が戦車やロボットとまで戦ってしまう……という突拍子もなくクールな世界観は、海外でのショー・コスギの大ブーム以来、様々な忍者アクションで見られた「ニンジャ・イン・USA」「スーパーニンジャ」の世界観だ。本作も、近未来と忍者とのミスマッチぶりで大いに楽しませてくれる。
 システム面でも、ニンジャとクノイチの2人同時プレイは『ザ・ニンジャウォリアーズ』、刀、くさりがま、手裏剣、手榴弾の4種類の武器は『最後の忍道』、雷の術は『忍』、パイプぶら下がりは『ストライダー飛竜』……といった、数々の忍者アクションの名作を彷彿とさせる。当時のナツメ開発陣にはアーケードゲーム好きが多かったようだが、他の忍者アクションを良く研究し、それらのエッセンスをバランス良く詰め込んだ、言わば「いいとこ取り」のような作品になっていると言えよう。

●とっつきやすい、されど硬派なゲームバランス
 『KAGE』は非常にとっつきやすいゲームである。シンプルなシステムはもちろん、敵の数が少なめ、即死が存在しない(穴に落ちても、ダメージを受けるだけでその場復活)など、初心者でもストレスを感じずに、ある程度は必ず進めるようになっている。
 とは言え、決して簡単なゲームではない。ライフ制だが、残機はただ1機のみ。しかもダメージを受けると武器はどんどんパワーダウンしてしまうので、力押しの突破は許されない。
 また敵の数が少ないぶん、1匹1匹が硬く、手ごわい。ザコですら軒並み耐久力があり、配置やアルゴリズムも良く練られている。もちろんボスはさらに硬くて強い。場面ごとにしっかりとした攻略をしていかなければ、クリアは不可能だ。
 プレイヤーに露骨なストレスは感じさせない、かと言って大味でヌルいゲームでもない。このあたりのバランスの絶妙さは、さすがナツメと言ったところだ。

●王道、そしてコナミックなBGM
 『KAGE』のBGMは最高だ。思わず体を揺すって口ずさんでしまい、さらには感極まって「これぞアクションゲーム・ミュージックだッ!」と叫んじまうほど熱い。スピーディーなゲーム展開にマッチして、全編ノリノリである。ヒロイックである。王道である。
 そしてなぜか、ゲームミュージック界の雄、当時のコナミサウンドに激似である。とにかく、メロディもそうだが、音色からして当時のコナミFCゲーのBGMにそっくりなのである。
 それもそのはず、実は作曲者が同じなのだ。本作のサウンド担当は、ファミコン版『火の鳥』(こちらも名曲揃い)等をはじめ、多くのコナミ作品で作曲を担当した水谷郁(みずたに・いく)氏。つまり、元コナミスタッフがナツメに移ってきて作っていたわけである。というわけで、あの頃のコナミサウンドが大好きな人間なら(つーかみんな好きでしょ?)、本作のBGMは間違いなくツボに入るだろう。

アクションゲームの真髄

 目に見える「売り」などなくてもいい。抜群の操作性、滑らかなグラフィック、ノリノリのBGM、スピーディーなゲーム展開、そして誰もが楽しめるゲームバランス……すなわち、アクションゲームとして最も基本的な部分の作り込み、それさえしっかりしていれば十分に面白いゲームは作れるんじゃあ!(そして、それだけの完成度を持ったゲームが果たして他にいくつあるだろうか?)『KAGE』は、地味な内容の影からそんな熱き叫びが聞こえてくるようなゲームである。
 本作に価値、そして楽しみを見出せるかどうかで、あなたがアクションゲーム、ひいてはゲームという娯楽の、本質的な部分を愛しているかどうかがわかるかもしれない。つーか、今時ファミコンやるってこた、そーゆーことでしょ?



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