『KAGE』と『忍者龍剣伝GB』

 『忍者龍剣伝GB〜摩天楼決戦〜』は、言わずと知れたファミコン忍者アクションの傑作シリーズ『忍者龍剣伝』のゲームボーイ版として、1991年にテクモから発売された作品である。
 この『忍者龍剣伝GB』、ゲームとしては非常に良く出来ているのだが、なぜかあまり『忍者龍剣伝』らしくない。一応FC版1作目の3年前、主人公リュウハヤブサの修行時代の物語、ということになっているのだが、『忍者龍剣伝』らしいところと言ったら、プレイヤーのリュウと龍剣、炎波の術、一部BGMくらいのもの。ライフゲージはわずか6メモリと少ないし、忍術は1種類だけだし、壁は登れないし、『忍者龍剣伝』シリーズ最大の「売り」である「シネマディスプレイ」もない。
 むしろこのゲームは、どちらかと言えばナツメの『KAGE』に良く似ている……と言うより、激似だ。クリソツだ。と言うか前述したわずかな『忍者龍剣伝』らしさを除けば、まるっきり『KAGE』そのものと言ってもいい。
 とりあえず、オープニングデモからしてヤバイくらいソックリだったりする。


 ストーリーも『KAGE』と同じニューヨークが舞台だったり、ラスボスの名前が「ガルフ皇帝」だったり(『KAGE』のラスボスの名前は「皇帝ガルダ」。ちなみに『忍者龍剣伝GB』の海外版『Ninja Gaiden Shadow』では、そのまんまの「GARUDA」になっており、国内版でもサウンドテストを見ると何気に「GARUDA」のままになっている)。
 ゲーム面でも、内容は一新されているものの、ステージや敵の性質を始め、ボタンを押す長さによってジャンプの高さが調節できる、パイプにぶら下がれる(これはFC版『忍者龍剣伝3』にもあったが)といった操作系まで、プレイ感覚やゲーム性は『KAGE』にそっくりである。
 そして何と言っても、サウンド関係の類似点が特に顕著だ。とりあえず、ラスボス戦BGM(例の曲名「GARUDA」)が『KAGE』のラスボス戦BGMと全く同じ!なのである。また、タイトルロゴ表示音、ゲームスタート音、ポーズ音、着地音など、各種効果音にも『KAGE』と全く同じものが数多く使われている。
 というわけでどうやら、『KAGE』のゲームボーイ版新作としてナツメが開発したゲームを、グラフィックやサウンドに『忍者龍剣伝』風味を加え、『忍者龍剣伝GB』として発売した、というのが真相のように見える(ちなみに『忍者龍剣伝GB』の海外版タイトル『Ninja Gaiden Shadow』は、『KAGE』の海外版タイトル『Shadow of the Ninja』あるいは『Blue Shadow』の名残だと思われる)。
 さしづめ「ファミコン忍者アクションの雄、『忍者龍剣伝』と『KAGE』が、ゲームボーイで夢の競演!」と言ったところだろうか?ともあれ、2つの素晴らしき忍者アクションの魅力を合わせた好移植作として楽しむも良し、はたまた「オッ、このへんが『KAGE』っぽい!」などと類似点に注目しつつマニアックに楽しんでみるのも、面白いかもしれない。



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