ストーリー





 忍者――。それは、情報を密かに入手し、守るために必要不可欠な影の存在である。
 そして、その忍者の世界は、いつの時代もふたつに分かれてきた。ひとつは、正義の忍者たちを悪の世界へと誘い、暗黒を支配しようとする勢力。いまひとつは、悪を牽制し、平和の均衡を保つ正義の力・朧流忍者である。
 その朧流忍者の中でも、特に秀でた忍者が、ジョー・ムサシである。彼は、若くして朧流の体術や忍術を完全に身につけていた。
 そして、暗黒を支配しようとする犯罪シンジケートの“ZEED”を破滅させ、平和をもたらしたことで、その名を知らしめたのである。
 あれから三年……。今、ムサシは、自分が生まれ育った“忍の里”から遠く離れていた。将来を誓った許婚・ナオコを師匠のもとに残し、旅に出ていたのである。自己を見つめなおし、忍の道を極める修行を、ムサシはひとり、異国の地で重ねていた。
 しかし、平安のときは、ムサシが想像したほどには長くなかった。邪悪な影が、世界の片隅でうごめき出す。“ZEED”の残党が、さらなる野望と復讐心を抱いてさらに強力な組織を結成しようとしていた……。
 “NEO ZEED”――それは、よみがえった悪。かつての“ZEED”をはるかに凌ぐほどに巨大化した、悪の組織の名である。
 わずか三年。短く、しかし確実に存在した空白のときが、悪の復活を許してしまったのだ。正義の力にくらべ、悪は、なんと貪欲に成長してしまうのだろうか。
 “NEO ZEED”は、自分たちの力を試すべく、手始めに、ムサシを育て、今も多くの仲間が修行に励む“忍の里”を血祭りにあげた。明日のムサシを目指して修行していた若い忍たちは、“NEO ZEED”の急襲を受け、ひとたまりもなかった。
 急な知らせで駆けつけたムサシを待っていたのは、殺戮のあとの静けさと、仲間たちの累累たる屍の山だった。彼は、自分の到着が遅すぎたことを悔やんだ。そして、屍をひとつひとつ抱き起こし、その名を呼び、涙した。
 しかし、ナオコと師匠の姿は、どこにもなかった。ムサシは一縷の望みをかけて、二人の姿を探した。そのとき、背後の焼け崩れた土塀の向こうに、人の気配がした。
 「ム…ムサシ……」
 「師匠っ!」
 駆け寄るムサシの腕に倒れ込んできたのは、師匠その人であった。孤児だったムサシをひきとり、一人前の忍に育て上げてくれた師匠。その師匠が、変わりはてた姿となって、ムサシの目の前にいる。
 「師匠、しっかりしてください!」
 「ム、ムサシ…。もはやこれまでじゃ。屈強の忍たちが次々とやられ、ナオコまでもが連れ去られてしまった……。」
 「ナ、ナオコが!?」
 ムサシの耳に、許婚・ナオコの悲鳴がよぎった。
 「うろたえるでない、ムサシ。ナオコは最後まで、自分のことよりおぬしを案じておった……。ムサシ、あとは、おぬしに任せるほかない。“NEO ZEED”を倒し、ナオコを救い出すのじゃ。頼ん…だ…ぞ……」
 そこまで言うと、師匠の命脈は尽きた。
 ムサシはその亡骸を丁重に弔うと、意を決した。
 虐殺された、仲間の忍たちの仇を討つため。親代わりとして、己を育て上げてくれた師匠の仇を討つため。悪の組織“NEO ZEED”の魔手から、世界を救うため。そして何よりも、最愛の許婚・ナオコを救い出すために。
 ムサシはいつしか降り出した霧雨の中を、一陣の疾風のように駆け出した。まさに死を賭して……。





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