ロッキー・レジェンド
Rocky: Legends




 『ロッキー伝説』である。2002年に発売された、『ロッキー』の続編である。前作が予想以上に売れたのだろう、わずか2年弱で、アップグレード版とも言える本作が発売されることになった。
 本作では、ロッキー以外のアポロ、クラバー、ドラゴにも独自のストーリーモードがあるとか、トレーニングにニワトリ・チェイスがあるとか、色々と追加要素はあるのだが、やはり注目は演出面のパワーアップだろう。
 何と言っても嬉しいのが、試合中にどちらかの体力が残り少なくなると、「Going The Distance(1作目のクライマックスで鳴る名曲。と言うか川口浩のエンディング)」が鳴り出すという、ニクイ演出! とにかく盛り上がり方が違う。
 その他にも、メニュー画面で「Training Montage(4作目のトレーニングで鳴る名曲。と言うか最強高田延彦の入場曲)」や「War(4作目のドラゴ戦で鳴る名曲)」など、実際の映画のサウンドトラックが使用されている。
 ただし、依然ボーカル曲の権利はとっていないので、「Eye of the Tiger」、「Burning Heart」、「Hearts on Fire」、「No Easy Way Out」、「The Measure of a Man」……といった名曲は鳴らない。やはりこのへんは限界だろうか。
 また相変わらず、物足りないと言うか、中途半端に感じる部分もある。例えば、試合終了時の淡白な演出。前作同様、格ゲー仕様の定型勝ち名乗りのみである。「エイト……ナイン……テン! ノックアウト!!」ジャーン! チャーチャーチャーチャー、チャーラチャーラチャラチャー……と、一気に歓喜が爆発するのが、ロッキー最大のカタルシスではないか。
 最後の敵、トミー・ガンをKOした後だけ、シームレスに映画の実写ムービー(デュークをブン殴るシーン)に移行する、という演出がある。ならば、アポロ、クラバー、ドラゴに勝った後にも同様の演出が欲しかった。

 ゲーム部分にも、ロッキーらしい試合を再現する、新システムが追加されている。まず「Triple Super Combo Punch」。ワンツーなどのコンボを決めると、観客の声援ゲージがたまっていき、満タンの時にスーパーパンチを打つと、怒涛のスーパー3連打になるのだ。全弾ヒットすれば、相手の体力が満タンでもダウン確実。
 それともうひとつ、「Fury(怒り)」モード。「あと1回ダウンしたら死ぬ!」というピンチまで追い込まれると、このFuryモードが発動できるようになる。20秒間、全てのパンチ(スーパーパンチも!)の速度が2倍になるが、その代わりガードが一切できなくなるという諸刃の剣。
 威力が大きい代わりに、メチャクチャ大振りなスーパーパンチだが、このゲームではタイミング良く出せば、意外と当たってしまう。回数制限もないので、お互いにノーガードでブンブン振り回していると、本当に映画のロッキーのようである。そしてダウンを奪えば、キリモミ回転しながら豪快にマットに沈む。流れるスローモーション・リプレイ。実に痛快だ。
 また、前作はジャブ連打だけで勝ててしまうという致命的な欠陥があったが、本作のCPUはかなり手ごわい。AIがこちらのコンボを記憶し、同じ攻めを繰り返していると、簡単にガード→反撃されてしまうのだ。様々なバリエーションで攻める必要があるし、守る時はしっかり守る必要がある。

 本作が前作を凌ぐ素晴らしい作品であることは間違いない。だが前作に比べ、海外での評価が今ひとつ芳しくないのは、前作と目に見える違いがないこと、そして前作の発売後に、EAから『ファイトナイト2004』が発売されたことが大きいだろう。批評家は『ファイトナイト2004』と比較して、「ボタンでパンチを繰り出すシステムは古い(『ファイトナイト2004』は右スティックでパンチを繰り出す)」、「試合が大味でリアリティに欠ける」、「オンライン対戦がない」などと批判した。
 確かに『ファイトナイト2004』はボクシングゲームの常識を覆した、画期的な傑作である。だがそもそも「ロッキーのゲーム」を、「リアルなボクシングゲーム」と比較すること自体が大きな間違いだ。それはロッキーの映画を観て、「動きが大げさすぎる」、「全然ガードしないのはおかしい」などと突っ込みを入れるのと同じくらい下世話なことである(フィクションの世界で渋い試合を見せて、何が面白いというのだ?)。
 本作は、1ラウンドの間に2回ダウンさせられても、3回ダウンを奪い返せるゲームである。自分の体力が1、相手の体力が10でも、一発で逆転できるゲームである。これこそロッキーだ。



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