ロッキー
Rocky




 『ロッキー』は、シルベスタ・スタローン主演の映画『ロッキー』1〜5を元にしたボクシングゲームだ。本作が海外で発売された時、GAMESPOTのレビューでは、「良い出来だが、右ストレート連打だけでオールクリアできてしまう」と酷評されていた。だが、プレイヤーの投稿レビューでは全体に評価が高く、「GAMESPOTの評価は信じるな。あのレビュアーはイージーしかやっていないに違いない」などといった発言も見られた。
 結論から言うと、残念ながらGAMESPOTが正解である。難易度がイージーだろうとノーマルだろうとハードだろうと、相手がアポロだろうとクラバーだろうとドラゴだろうと、右ストレート連打だけで簡単に勝てる。試みに、近距離での右ストレートを封印してプレイしてみると、とても熱いバランスになるので、この唯一の欠陥が非常に惜しまれる。
 昔から、得てしてボクシングゲームというものは現実離れした「ノーガードの打ち合い」になりがちだが、これは『ロッキー』のゲームなのでむしろそれで「映画通り」である(と言っても、それなりに防御もしないと、簡単にKOされてしまうが)。
 試合中の画面もまさに映画だ。ラウンドが進むにつれボコボコになっていく顔面。超大振りの必殺「スーパーパンチ」。最高に似すぎなドルフ・ラングレン。素晴らしい出来である。
 ただ、試合以外の演出は正直今ひとつだ。特にサウンドが物足りない。有名な「ロッキーのテーマ(Gonna Fly Now)」しか権利をとっていないため、どの場面でもこの曲ばかり鳴ってウンザリする。
 やはり、「Eye of the Tiger」を始めとするボーカル曲も欲しかった。そして何より、ロッキーが勝った時は「最終ラウンド(The Final Bell)」が高らかに鳴り響き、群衆がドッと雪崩れこんできて欲しかった。ロッキーのテーマと定型の勝ち名乗りだけでは、全く盛り上がらない。普通の格闘ゲームならそれでも良いが、これは『ロッキー』のゲームなのだから。
 ゲーム面でも演出面でも、あと一歩で真の傑作になる可能性があっただけに、惜しい作品ではある。だが、ロッキーファンなら買って損はないだろう。1987年のセガ・マーク3版『ロッキー』から考えると、技術の進歩をひしひしと感じる。
 事前にDVDを観て気分を昂揚させ、サントラCDを流しながら(アポロ戦なら「Going The Distance」、ドラゴ戦なら「War」、トレーニングなら「Training Montage」、とった具合に)、せこい「ハメパンチ」なんて使わず、「イタリアの種馬」らしい豪快なファイトでライバル達をノックアウトしよう。



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