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1989年4月21日、任天堂は本格的携帯用ゲーム機・ゲームボーイを発売した。同年9月の『モトクロスマニアックス』でゲームボーイ市場に参入したコナミは、その後『ドラキュラ伝説』(1989年)、『ネメシス(グラディウス)』、『ツインビーだ!!』(1990年)等々、同社の看板シリーズのゲームボーイ版を次々とリリースしていく。 そして1991年1月8日、魂斗羅シリーズ初の携帯用作品、ゲームボーイ版『コントラ』(カタカナ表記)が発売された。開発は、新たにコナミのゲームボーイチームが担当し、名作『ドラキュラ伝説II』(1991年)や、『タイニー・トゥーン アドベンチャーズ』(1992年)等とほぼ同じスタッフが手がけている。デザイナーの木村幸一(かふ壱)氏は、後にトレジャーへ移籍し、『ダイナマイトヘッディー』や『シルエットミラージュ』を制作した。プログラマの萩原徹氏は、後に『悪魔城ドラキュラX〜血の輪廻〜』(1993年、PCエンジン)や、『悪魔城ドラキュラX〜月下の夜想曲〜』(1997年、プレイステーション)でもプログラム&ディレクションを務めるなど多くの名作を世に送り出し、最終的にはコナミの取締役にも就任している。 『魂斗羅』×『スーパー魂斗羅』=『コントラ』 『コントラ』はファミコン版『スーパー魂斗羅』の約1年後に発売されたこともあり、一見すると『スーパー魂斗羅』の移植版に見える。だが実際には、同社の他のゲームボーイ作品同様、旧作の要素を引用しつつも大幅なアレンジが加えられた、ゲームボーイ・オリジナル版となっている。 『魂斗羅』と『スーパー魂斗羅』を掛け合わせたような構成で、サイドビューとトップビューが交互に来る展開を始め、ギミックには『スーパー魂斗羅』に似たものが多い。一方BGMについては、ほとんどが『魂斗羅』と同じ曲を使用している。ただし各ステージのマップ、敵キャラ、一部のBGM等は、完全な本作オリジナル。つまり、これまでの魂斗羅作品のエッセンスを凝縮したような新作になっているわけだ。 ストーリー的にも、『スーパー魂斗羅』から1年後の西暦2635年に設定された新しい物語、正統な続編である。某超大国が、エイリアンを最終兵器とする恐るべき計画を秘かに進行。エイリアン復活を阻止するため、“コントラ”のビル上等兵は、秘密軍事基地に単身乗り込んでいく……。ちなみに本作は1人プレイ専用なので、ビルの相棒ランスは登場しない。 このストーリーの面白い点は、それまでの2作品や次作『魂斗羅スピリッツ』と違い、コントラの敵が地球侵略をたくらむエイリアンではなく、そのエイリアンを軍事利用しようとする「人間」である点だ。コントラの活躍でエイリアンの侵略から救われたにもかかわらず、愚かな人間は自らの手でエイリアンを復活させてしまうのである。スケールの小さめな携帯用ゲーム版ということもあってか、魂斗羅の歴史の中でも「番外編」的な、やや異色のストーリー構成になっていると言えよう。 フルオート連射とホーミングが初登場 『コントラ』の基本的なシステムは、ファミコン版の2作品とほぼ同じである。もちろんゲームボーイの仕様上、画面が小さい、モノクロ、残像といった難点はあるが、キビキビとした動き、撃ちまくる快感など、魂斗羅らしいプレイ感覚はほとんど変わらないと言っていい。ただし、注目すべき変更点もいくつかある。 『コントラ』はシリーズで初めて、これまではマシンガンのアイテムを取らなければできなかったフルオート連射が、標準装備された作品だ。ゲーム開始直後でも、ミスした直後でも、ボタン押しっぱなしにするだけで途切れなく弾が連射されるのである。当初の意図としては、ゲームボーイが携帯用ゲーム機であり、激しい連射に向いていないことを考慮しての仕様変更だったと思われる。だがこのフルオート連射は、翌年のスーパーファミコン版『魂斗羅スピリッツ』でも引き続き採用され、以後プラットフォームを問わず、全ての魂斗羅作品で採用されることになる。携帯用から生まれたアイデアが、結果的にシリーズの新しいスタンダードとなったのだ。 また『コントラ』はシリーズで初めて、ホーミングガンという武器が登場した作品でもある。ホーミングは敵を追尾するうえ連射力もあり、スプレッドに匹敵する強さを持っていた。ゲームボーイの小さい画面でも、細かい狙いをつける必要がなく、撃ちっぱなしのままバリバリ進んでいける。結局このホーミングもフルオート連射同様、『魂斗羅スピリッツ』以降の作品にも継承され、新たなシリーズ定番武器のひとつとなった。 『コントラ』のアイテムは新兵器・ホーミングガンと、スプレッドガン、ファイアガンの3種類で、これまでの作品で必ず登場していたレーザーガンは、本作ではカットされている。スプレッドガンはアーケード版『スーパー魂斗羅』のように、2回取ると2段階にパワーアップするのが特徴。ファイアガンはファミコン版『スーパー魂斗羅』のものとほぼ同じだが、溜め撃ちによるビッグファイヤーは廃止された。 細かい点だが、本作では下+ジャンプボタンで下のフロアに飛び降りる操作は削除されている。このあたりも簡略化されている印象だ。 独創的なステージ ステージ構成も、旧作の雰囲気を残しつつ、それぞれに本作独自の特色がある。エリア1の軍港は『スーパー魂斗羅』1面に似ているが、ボートや潜水艦といった、それまでの作品にはなかった船舶タイプの敵も登場するのが目新しい。エリア2の敵基地外部は『スーパー魂斗羅』2面に似ているが、所々でスクロールが止まり、複数の中ボスが出現するようになっている。エリア3の山林地帯は『スーパー魂斗羅』のジャングルステージと、『魂斗羅』の滝ステージをミックスしたような構成。またこの面では、途中で逃げていった中ボスが、ラストでパワーアップしてリターンマッチ、という展開も面白い。 そして、魂斗羅の最終面と言えばグロテスクなエイリアンの巣、というのがお約束だが、本作の場合はストーリーに沿って、エリア4がエイリアン、最終エリア5が基地ステージ、という構成になっている。エリア5はほぼ完全なオリジナルステージで、メカニカルな研究所内に、エイリアンの培養カプセルがズラリと並んだ光景が印象深い。 また、一応最終ボスはエイリアンなのだが、本作では一切攻撃をしてこないため、事実上のボスはその前に出現するロボット「護衛用2足歩行型兵器ハヤノス614」になっている。本作のプログラマ、早野由香里氏の名前を冠したこのハヤノスは、非常にカリスマ性のあるボスだ。ロボットアニメに出てくるようなスマートで格好良いデザインも新鮮だが、それだけでなく、高度なアルゴリズムと、高い耐久力を備えた強敵である。ただ強い武器で撃ちまくるだけではまず倒せず、「この攻撃が来たらこう避ける」といった具合に、きちんとした攻略パターンを作る必要があった。 ユーザーフレンドリーな意欲作 『コントラ』のグラフィックはゲームボーイなので当然モノクロだが、丁寧に描きこまれており非常に美しい。ファミコン版に負けず、揺れる木々、波打つ水面、蠢くエイリアンといった、動く背景もしっかり実現している。処理速度、キャラや弾の見やすさなど、プレイの快適性にかかわる部分も申し分ない。 船内秀浩氏がクレジットされているサウンドも良好。銃声や爆発音はド派手で、ファミコン版でおなじみ「チュイン、チュイン」という爽快な撃ちこみ音も健在だ。BGMの多くは『魂斗羅』と同じ曲が使用されているが、独特のゲームボーイ音源で奏でられるメロディは、一味違った味わいがある。また敵基地BGM「炎の要塞」は、ファミコン版、MSX2版ではアーケード版のサビ部分がカットされてしまっていたが、本作ではアーケード版に忠実なフルサイズバージョンを聴くことができる。数少ない本作オリジナル曲も、他の曲とはちょっと雰囲気が違って面白い。哀愁漂う感じのエンディングBGMは名曲だ。 『コントラ』の難易度はあまり高くない。決して簡単ではないが、全5ステージと短めなこと、フルオート連射やホーミングでプレイヤーの攻撃力が強化されたことなどが大きい。最後の2面ではホーミングのカプセルが出現しなかったり、1か所ジャンプがシビアな場面があったりもするが、どちらも隠れ救済措置が用意されている。初心者でも頑張ればエンディングまで到達することができるだろう。2周目以降も特別難しくなるわけではない。 また『コントラ』はシリーズで初めて、ステージセレクト機能を標準装備しており、最終面以外の好きなステージから開始することができる。パスワードも隠しコマンドも不要という思い切った仕様だが、おかげで携帯用ゲームにふさわしく、遊びたい時にすぐ好きなシーンを遊べるお手軽さがある。 このように『コントラ』は、従来の作品をベースにしつつも、携帯用ゲームという特性を十分に研究したユーザーフレンドリーなアレンジ、そして自由な発想によるアイデアが随所に盛り込まれており、そのうちのいくつかは、後の作品にも少なからず影響を与えている。携帯用ながら、単なるダウンサイズ移植ではなく、シリーズの中で確かな存在感を持つ意欲作に仕上がっていると言えるだろう。 また、数あるコナミゲームボーイ作品の中でも完成度の高い『コントラ』は、1997年9月25日に発売された同社の名作シリーズ『コナミGBコレクションVOL.1』(スーパーゲームボーイ対応)で、『グラディウス(ネメシス)』、『ドラキュラ伝説』、『コナミレーシング(F1スピリット)』と共に収録されている。 |
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